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追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!  作者: 奈津みかん
【4章】元聖女を追い出した元王子が謝罪に来ました。

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第89話(ステファン視点)

 森の中を進んで行くと、ごうごうと水音がしてきた。木々の間から、雨のせいでいつもより水かさの増した川が勢いよく流れてるのが見える。


「すっげー……、だいぶ増水してんなぁ……」


 ライガが面白そうに呟いた。

 ――こいつは僕らがまだ実家にいたころ、嵐の日に荒れた川を見に行って溺れかけたことがある。僕はこの前釣りに行ったときにレイラが流されかけたのを思い出してはっとした。水龍のローブ着てるから溺れることはないだろうけど……。


「レイラ、勢いがあって面白そうだからってあんまり近づくなよ。足とられて溺れるから危ないんだ。俺も昔、溺れて死ぬかと思った」


 ――僕が言おうとしてたことを、ライガが言った。

 経験者の言葉だけに、言い方に重みがある。


「うん。気をつける」


「僕がロープ投げなきゃ、そのまま流されてたよな、お前……」


 呟くと、ライガは「そうだな」と笑った。


 そのとき顎に手をおきながら考えるポーズをしていたエイダンが口を開いた。


「――スライムの発生は、川が荒れているのと関係があるのか?」


 ……エイダン、結構鋭いな。


「そう。雨が続いたり嵐が来た後は水の精霊の魔力が濃くなって、水辺に魔物がよく出るんだ。特にスライムがよく出る」


 僕らは沢の横の開けたところ――、木が茂っていなくて日当たりの良いところに降りた。


「日差しが当たるところをスライムは嫌うから、ここで火を起こそう」


 近くで乾いてる枝を拾ってきて集めてきて火をつけた。

 

「スライムは基本的には焼いて倒すよ。魔法使いがいれば楽だけど……、今回はエイダンに倒し方を教えるってことだから……。キアーラには魔法使いはいないもんね」


 エイダンは頷いた。

 ……まぁ、スライムは日常的によく発生する魔物だから、毎回魔法使いを呼ぶわけにもいかないし、普通の対処法を知っていて損はない。


「私のお祈りもお休みですね」


 レイラが残念そうに呟いた。レイラの祈りはちょっとイレギュラーだから……、使ってもらえれば楽だけど、今回はちょっと控えてもらう。


 リュックから松明を出して火をつけて、口元に布を巻く。


「スライムは口から身体の中に入ってこようとするから気をつけて。身体にへばりついて来たら、騒がず落ち着いて火を当てよう。そしたら離れるから」


「俺、スライム嫌いなんだよなぁ。あいつら匂いしないし、気持ち悪いじゃん」


「――で、スライムはどこに」


 エイダンは川辺に近づくと周囲を見回した。レイラが彼の足元を指差した。


「――エイダン様、足元――」


 水辺から透明な両掌に乗るくらいの大きさのぶよぶよした塊――スライム――がにゅるっと出てきて、エイダンの足にまとわりついた。


「――な、何だ!?」


 エイダンはそれを剥がそうと手を伸ばす。

 あーあ、落ち着けって言ったのに。

 スライムはエイダンの手から腕に移り、そのまま頭の方目掛けて移動しはじめた。

 僕は松明の火をエイダンの首元にへばりつくスライムに当てた。

 じゅっと音がして、スライムはエイダンから剥がれて地面に落ちる。


 僕は腰から短剣を抜くとスライムの中心――少し白っぽい核を貫いて地面に串刺しにした。


「ちょっと色があるのが核だ。そこは剣が効くけど、それ以外の透明なところは切っても無駄だよ」


 そのまま松明の火を落ちたスライムに10秒ほど当てると、スライムはどろりと溶けて周囲に広がって水たまりを作った。中央には親指ほどの大きさの丸い塊――スライムの中心核が転がっている。


 それを拾い上げると、焚き木の傍へ放って目を大きく広げているエイダンに向かって頬った。


「これで一匹、退治だね。この核が何匹退治したかの証拠になるから、流さないようにね」


 エイダンは僕が投げた核を器用にキャッチすると、


「無論だ」


 と頷いた。


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