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追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!  作者: 奈津みかん
【3章】元聖女は冒険者として仕事をします。

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第63話(ライガ視点)

 俺は大きく息を吐くと、ノアに小声で囁いた。


「わかった。当たったは当たったで認める。でも……お前、不意打ちはカッコ悪いと思わないか……」


「……う」


 ノアは言葉を詰まらせた。


「やっぱり、正面からぶつかる方がカッコ良いと思うんだ……。さっきのお前の不意打ちに、俺、ぜんっぜん反応できなかったからなぁ……正面から来られても、避けれるかわかんねぇな……。お前が正面から行ってやるって宣言して、俺に一撃当ててみろ。カッコ良いと思うなぁ」


 俺はちらりとレイラを見る。

 いっつも生意気なこいつにしては、さっきレイラに見せた素直な態度が気になった。

 たぶん、レイラの前でカッコつけたいんじゃないのか?


「……」


 ノアは考え込むように視線を下ろすと、視線をぐるっとレイラやソーニャの方に泳がせてから、俺を見た。


「……わかったよ。そんなに言うなら、正面からやってやる! レイラたちにも見ててもらうからな!」


 ノアはそう外野に宣言した。


「私たち、ジャンのお見舞いに、治療院に行こうと思ってるんだけど……。面会時間、終わっちゃうわ」


 ソーニャが面倒そうに俺に言った。


「すぐ終わるって」


 俺はノアに道沿いの空き地に移るように指で指示した。


 空き地で正面から向かい合う。


「じゃあ、レイラ、せーのって言ってくれるか」


「わかりました……。せーのっ」


 の、という音が耳に入ると同時に目の前のノアの姿が消えた。

 

 ……前よりかなり動きが速くなってるな!――だけど――。


 俺は目を閉じ、瞬時に身体を反らす。空気の流れでノアの動きは読めた。脇をあいつの爪がかすめた。


 目を閉じたまま手をのばし、下にあるノアの服の襟を掴んで持ち上げる。


「ちょ……っと、離せよ!」


 ノアは手足をバタバタして暴れた。俺はそのままノアを見つめる。


「正面からじゃまだまだだな。……でも、動きは早いし――お前はたぶん、強くなるよ。確かに、さっき一撃当てたのは認める」


 ノアがジタバタを止めた。

 

「俺は、別にお前の相手になるのはいいんだ。だけどさ、お前の母さんには止めてくれって言われてる。そのへん、親子で話し合ってから来てくれよ」


「……母さん、ライガにそんなこと言ってんの?」


「ああ。――でもナターシャはお前のこと心配してるんだよ」


 俺はノアを地面におろすと、髪をくしゃっとした。


「母さんと話したら、また来てくれ」


 ノアは「わかった」と言って、走って去って行った。


「……結局相手になってあげるなら、やり直す必要、あったのかしら?」


 ソーニャが元も子もないことを言ってくる。


「いや、正面からやってみて、ノアのやる気がわかったというか……」


 俺はもごもごとしてから、ため息を吐いた。


「いや、俺がカッコつけたかっただけだな……」


 それから二人に向き直る。


「な! すぐ終わったろ。見舞いに行ってこいよ」


 そのままソーニャとレイラと別れて、宿屋に手ぶらで戻って、「酒樽は?」と女将さんに聞かれて慌ててもう一度酒屋に向かった。


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