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追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!  作者: 奈津みかん
【3章】元聖女は冒険者として仕事をします。

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第59話

 ソーニャさんが連れて行ってくれた魔法使い向けのお店は、広場沿いの大通りから何本か横道に入ったところにあった。


「お邪魔します」


 そう言って中に入ると、「いらっしゃい」と綺麗な女の店員さんが挨拶してくれる。


 ――リルさんも、ソーニャさんもそうだけど、魔法使いの女の人って綺麗な人が多いなぁ。


 大人っぽくて羨ましい。私がぽーっと見ていると、ソーニャさんが囁いた。


「……あの人、おばあちゃんよ、本当は」


「……うそ」


「指先見てみて。右手の人差し指」


 私はその綺麗な店員さんの右手の指をじーっと見た。あれっ、一本だけ指が皺皺な気がする……。 


「そこだけ変化させられてないのね」


 くすり、と笑ったソーニャさんがまた小声で呟いた。


「……変化?」


「変身魔法よ」


 私たちの視線に気づいた店員さんが鋭い声で言う。


「ソーニャ? 今日は、何か探しに来たの?」


 ソーニャさんは何事もなかったかのように、にっこりと笑った。


「――この子にローブを選んであげようと思って。神官なの」


 ソーニャさんは私の手を引いて、壁際のローブがたくさんかかっているところに連れて行った。


 黒っぽい色が多いけど、布だったり皮だったりいろんな種類のローブがかかっている。


「この黒い皮のが一番無難なものかしら。魔法学校でも使っていて、今、私が仕事中に着てるのもこれね。――高いものだと竜皮のローブなんかだと、防火の効果だったり、いろいろと便利な効果があったりするけど――、魔法草の収集とか、そういう依頼程度だったら、この黒いので十分だとは思うわ。予算はどのくらい?」


「これだと、どれが買えますか?」


 私は自分の財布を出した。

 ソーニャさんはしばらく黙ってから、私を見つめた。


「――残り、私が出しましょうか。この前、とっても助けてもらったし」


 足りないんでしょうか。――足りないんでしょうね。

 報酬を増やしてもらったとはいえ、生活費もかかっていますからね。

 あんまり貯金がありません。


「……これを、足したら、買えますか?」


 ステファンから渡されたお金がたくさん入った革袋を取り出した。

 じゃらりと中で硬貨がぶつかる音がする。

 ソーニャさんは目を見広げた。


「こんなに? 足すって、どういうこと?」


「ステファンが、これで、できるだけ良いものを買ってきなよって……」


「――私のおじい様みたいね」


 ソーニャさんは呆れたような表情になった。


「私のおじい様も、私が何か欲しいって言うと、よく『これで買ってきなさい』ってお小遣いくれたわ。……たいていお母様に見つかって取り上げられてしまったけれど。そんな感じね」


 ソーニャさんはお嬢様なんですかね。


 おじいちゃん。

 親もいないからよくわかんないけど、おじいちゃんってそんな感じなんだ。

 ステファンは、おじいちゃんみたい、なんでしょうか……。


「足りない分は、足して、残りはソーニャさんと美味しい物でも食べてきてって言われたんですけど……」

 

 どれだけ使っていいんでしょうか。ソーニャさんは笑って言った。


「遠慮せず、良いのを買ってしまえばいいんじゃない? それだけあれば、竜皮のものも買えるでしょうし」


 ソーニャさんがいくつか色の違ったローブを棚から取り出した。


火竜(ファイアドラゴン)のものなら耐火耐熱効果が強いし……、雷竜(サンダードラゴン)のものなら避雷効果があるわね。翼竜(ワイバーン)のだと……」


 店員さんが近くに来たけど、代わりにソーニャさんが商品の説明してくれる。


「だんだんよく分からなくなりました……」


 私は頭を抱えた。


 「大事なことだからよく考え……」言いかけたソーニャさんを、店員さんが杖でちょんと触った。


「ソーニャ、あんたはもう、出しゃばりなんだから、黙ってなさい」


「*******!」


 あ、また沈黙(サイレント)の魔法かけられてますね……。

 店員さんは私に向き直った。


「初めて竜皮のものを買うなら、特殊効果以外の性能は同じだし……色や質感の好みで良いんじゃないかしら?」


 店員さんは諦めたのか黙ったソーニャさんの手からローブをとると、私に握らせた。

 サラサラ、粒粒、ザラザラ、つるつる


 結構触り心地が違う。

 目を閉じて、何度か触ってみて、しっとりした質感のものが一番触り心地が良いなと思った。

 目を開けてみると、色は深い緑色をしている。


 けっこう良いんじゃない……?


「これにします」


「水龍のローブね。お買い上げありがとう」


 店員さんがにっこり笑うと、ソーニャさんにまた杖で触れた。

 話せるようになったソーニャさんが「効果は耐火と耐水よ」と付け加えた。


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