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追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!  作者: 奈津 蜜柑
【3章】元聖女は冒険者として仕事をします。

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第57話

 私たちはソーニャさんたちのところに駆けつけるときに置いてきた、収穫した魔法草を回収して山を下った。


 ライガの背中に担がれたジャンさんが、残念そうに呟く。


「俺たちの採った魔法草は、全部燃えちゃったな……」


「そんなことより、『無事で良かった』でしょ。あなたが治ったらまた採りに行きましょう。魔法草収集の依頼なんていつでもあるんだから」


 ソーニャさんはジャンさんの頬を引っ張った。

 それから、ステファンを見た。


「でも……前に、ステファンに大きい音で攻撃すると、魔物が興奮して音の方に向かってくるって聞いてたの、覚えてて良かったわ。ジャンが穴に引きずり込まれたとき、とっさに思い出して、爆発魔法で兎の気を引いたの」


「ソーニャじゃなかったら、二人とも危なかったと思うよ。こんなところで、あんなことになっているなんて、ギルドの方でも把握できてなくてごめんね。とりあえず、見回りするように所長と話しておくよ」


「お前、それ、ギルド職員の仕事……」


「いや、だって、人手不足だから、何かあったら、僕たちが行かないとじゃないか」


「お前がいいなら、いいけどよ」


「とにかく、ジャンの怪我も入院すればすぐ治りそうだし、よかった」

 

 ジャンさんは布でぐるぐる巻かれた腕や足を見てぶるっと震えた。


「……本当に、ありがとう、ソーニャ。あのまま、穴に引きずり込まれて、食われてたらって思うと……。俺、頼りなくて、ごめん……」


「まぁ、初めから私一人……」


 ステファンがとんとんっとソーニャさんの肩を叩いてにっこり笑った。ソーニャさんは、「う」と言葉を詰まらせて、「……どういたしまして!」とぷいっと横を向いた。

 

 黙ってそんな皆の様子を眺めていた私の顔を、ライガがのぞきこむ。


「……レイラ、どうした? 疲れたか? なんか、言葉、少なくないか」


「……え? あ、ううん、大丈夫……」


 私は首を振った。


 私は、最初――興奮した兎を鎮めようとしたときに、できなかった理由を考えてた。

 傷だらけのジャンさんを見たときから、何だか心が落ち着かなくなったんだ。

 あの時も、あのままソーニャさんが兎の群れに飲み込まれたらどうなるだろうって、しちゃいけない想像して、集中できなくなってしまった。


「こんな重装備じゃ疲れちゃうわよ……」


 不意にソーニャさんが私の被っていた兜をひょいって持ち上げたので、びくっとして彼女の顔を凝視してしまった。


「ステファン、ライガ、何で神官の子に、こんな重装備着させてるの?」


 ソーニャさんがステファンとライガに呆れたように問いかける。

 珍しくステファンも困ったようにライガと目を合わせて、二人は声を合わせた。


「「……怪我したら、嫌だと思って」」


 ソーニャさんは「はぁぁぁ」と大きなため息をついた。


「……魔法使いが何でローブを着てるかわかる? 魔法はね、すっごく精神力を使うの。だから、身体にちょっと余計な重さがあるだけで、集中の邪魔になるから、ゆったりしたローブを着てるの。神官の祈りだって同じでしょう」


 彼女はさらに語気を強めた。


「防具つけてないぶんは、剣士とかが守るのよ。守る自信がなくて重装備させるならパーティー組まない方がいいんじゃない? 全く、みんな魔法使いのことわかってないんだから」


 ジャンさんが涙声で言った。


「ソーニャ、ごめんんんん」


「ジャン、違っ、あなたのことじゃ……」 


 ぐっと言葉を飲み込むライガの横でステファンは「ははは」と困ったように笑ってから私をのぞきこんだ。


「ごめん、全然そういうの、気が回ってなかった」


「いえ、心配してくれて、嬉しいです。……でも、確かに重いかな……」


 次はソーニャさんは私を覗き込んで、「私が今度、ローブを見てあげるわ」と言った。


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