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【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!  作者: 夏灯みかん
【1章】元聖女は冒険者になりました。

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第25話(ステファン視点)

 魔法を使うためには、体内にある魔力の量が重要だ。

 魔力量が多いほど効果の強い魔法を使うことができる。

 体内の魔力量は種族によって大体決まっていて、小人族や獣人、ドワーフ族なんかは量が少ない。

 まぁ、彼らは魔力量が少ない代わりに、手先が器用だったり、身体が頑丈だったりとそれぞれ種族として他の種族より優れたところがあるんだけど。


 一方、人間は個体差が激しくて、突然変異みたいに巨大な魔力を持っている人もいれば、まったく魔力のない人もいる。

 

――そして、総じて魔力量が非常に多いのが、エルフ――そして魔族だ。


 でも……


「エルフはまだしも、魔族――? 魔族は大昔に滅びてるはずじゃ――?」


 魔族は人型でありながら魔物のように、他種族の魔力を喰らって生きる種族で――特にエルフ・人間を好んで襲って食べていた。また破壊を好む性格で、他種族の国々を荒らした。


 そのため記録にもほとんど残っていない大昔、彼ら魔族とその他の種族の間で戦争が起き、結果として魔族は滅びたとされている。


「数十年前にも旅人喰らいの魔族を討伐したという記録もあるし、まだどこかにいることはいるだろう」


「それにしたって――、レイラは光神教の神官で、聖女に任命されていたくらい強い聖魔法を使うんですよ」


 聖魔法は他の魔法とは違った種類の魔法だ。


 他の魔法は自然界の火水風土などの精霊の力を借りて様々な奇跡を起こす力だが、聖魔法は祈りの力――、人々の平穏無事を願う聖職者が祈ることで、自身の中の魔力を使い様々な『荒ぶるもの』を鎮める奇跡だ。


 ――例えば、レイラが火竜を鎮めたように。


 魔物はたいてい荒ぶっている。魔物というのは、一般的には人里を襲う凶暴な害獣を指すが――正確には魔法動物の略で、精霊の力を大量に取り込んでしまった動物のことを言う。


 魔物の身体の中では絶えず精霊の魔力が暴走しているようなものなので、やつらは普通の食事だけでは満足できず、魔力量の多い人間を求めて積極的に襲ってくる。


 祈りによる聖魔法は、そんな魔物の中で暴れまわる精霊の力を鎮静化させるので、魔物を無力化させることができる――と言われている。


 魔法使いが使う魔法も、言ってみれば精霊の力を荒ぶらせて特殊な現象――例えば爆発を起こしたり――を起こす力なので、聖魔法は魔法効果を打ち消すこともできる。


 そんな『鎮静化』の力である聖魔法は、破壊と殺戮を原動力とする魔族とは相容れない。


「それに、レイラの瞳は緑ですし――」


 魔族の生物的な特徴はエルフとほぼ一緒だと言われている。


 長い耳、男女ともに人間に比べ華奢な体型、顔立ちは人間基準で整っていることが多く、寿命が長い。

 

 違いは瞳の色――、魔族は魔法を使うときに瞳が赤くなる。


「祈るとき、あの子は目を閉じているだろう」


「そういえば……そうですね、でも」


 僕はエルフと魔族の違いを頭の奥から絞り出した。


 そして、食事の種類――エルフは肉を食べず、菜食主義だ。一方魔族は肉食で特にエルフや人間を好み、時に同族も喰らう。


 そして使う魔法の種類――エルフは水・風・土の精霊魔法を好んで使い、魔族は破壊を象徴する火の精霊魔法を中心に使う。


「キアーラの光神教の神官たちは、他の者の命をできる限り奪わないように菜食主義で、また飢えた人々の気持ちを理解するために貧しい食事しかしないだろう――アタシには理解できないが」


 所長は考え込むように俯いた。


「幼い時から神殿でそんな生活をしてたら、魔族だって聖魔法が使えることは――ないか……」


 ぶんぶん首を振ってから、彼女は僕を見た。


「とにかくアタシが言いたかったのは、あの魔力量はエルフか魔族かどっちかじゃないかってことだ」


「……でも、レイラの耳はどっちにしろ短いですよ」


 僕は彼女の少し尖ったような形の耳を思い出した。

 耳の形で、僕は最初小人の血が入ってるんじゃないかと思ったんだ。

 小人の耳は少し人より尖っているから。

 でも……


 はっとした。それはそうであって欲しくない思いつきだったけど……。


「切られた……?」


 あの不自然な耳の形は、元は長かったものを切ったのではないだろうか。

 人間に見せかけるためか、理由はわからないけど……何かの理由で?


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