第24話(ステファン視点)
「……そうか、国を出てきて良かったね、歓迎するよ、レイラ」
所長は腰を落とすと、レイラを抱きしめて、彼女の栗色の髪の毛を撫でた。
彼女には人間の旦那さんと、レイラの見た目と同じくらいの年齢の一人息子がいる。
もしかしたらお子さんとレイラを重ねてるのかもしれない。
レイラはレイラで、また泣きそうな顔になってずびずび鼻をすすっている。
所長は彼女の髪を撫でながら、優しい口調で聞いた。
「アンタは、キアーラ王国の生まれなの? ――どうして、聖女になったんだ?」
「両親が、私を育てられないからと神殿に捨てて行ったそうです。それを大司教様が拾って育ててくださいました。私の祈りの力は強いからと、10歳のときに大司教様が私を聖女にしてくださって、孤児で聖女になった者は今までいない、頑張りなさいと言ってくれたんです。でも、1日中祈るの疲れますし、いつもお腹減ってるし――せっかく聖女にしてもらったんですけど、辛くて……」
その大司教とやらの言い方はひどいんじゃないか、と聞いていて僕はイライラしてきた。
恩着せがましいというか……、善意を装った強要じゃないかと思う。
お腹を空かせた子どもに祈らせる聖職者がいるなんて信じられない。
「そうか。大変だったな。いろいろ聞いてごめんね」
所長はよしよしとレイラの鼻をすする音が収まるまで頭をずっと撫でていた。
「さて、魔力判定結果も踏まえて、アンタの冒険者ランクはまた後日査定するよ」
レイラが落ち着くと、その背中をぽんぽんと叩いて立ち上がった所長は僕たちにそう言った。
「テムズ捕獲の報酬として、彼の売り物をアンタたちにやるから、それでも売り払って美味しいものでも食べてきな」
「やった」
ライガがガッツポーズをする。
テムズさんの売り物の布地は焼け残ったものがそれなりにあった。
あれを売ったら、けっこうな金額になるだろう。
こちらとしても有難い。
「リル、手続きをしてやってくれ」
「了解。あなたたち、ちょっと受付前で待っててね」
連れ立って部屋を出ようとすると、所長が僕を呼び止めた。
「ステファン、ちょっと残ってくれ」
「……はい。ライガ、レイラと外で待っててくれ」
所長がまだ話があるだろうとは、さっきの魔力測定の時から思っていた。
案の定だ。
「――レイラのことですよね」
二人になったので、そう切り出すと、彼女はぴくっと耳を揺らした。
当たり。
「そう――、あの子、小人ハーフじゃないよ」
僕は頷いた。
小人族は――手先が器用なのが特徴だが、魔力はそんなにない種族だ。
人間とのハーフで、人間の親がどれだけ魔力が強かったとしても、あんなことにはならない。
S級の魔力量というのは、魔術ギルドのトップ層が持っているような魔力量だ。
「――レイラは、何ですかね」
「あの魔力量を出せるのは――、エルフか魔族――どちらかだ……」
所長は重々しく言った。




