第22話
翌日、私はステファンとライガと一緒に宿屋の一階の食堂でパンとスープの朝ごはんを食べた。朝からこんなにたくさん食べられるなんて……本当に神殿を出てきて良かったあ。
ステファンは食後のコーヒーを飲みながら「そうだ」と手を止めた。
「レイラ、ギルドの所長が会いたいって言ってたから、このあとギルドに行ってもいいかな」
冒険者登録をしたけれど、右も左もわからない私は、親切にいろいろしてくれる2人についていくだけだから「はい」と頷いた。
***
「レイラだね。初めまして、アタシがここのギルド所長をしてる、ナターシャだ」
ギルドに入ると、頭の上に黄色地に黒い斑点模様の獣の耳が生えた綺麗な女の人がカウンターから出てきて挨拶した。耳以外は人間だけど、半袖の腕から先の皮膚も同じ模様でふわっとした短い毛が生えてて、触ったら気持ちよさそうだった。
「うわぁ、耳が生えてる」
「獣人を見るのは初めてか」
私の呟きに所長さんは苦笑してから、「さて」と話題を変えた。
「アンタが襲ってきた火竜を鎮めたって聞いて、冒険者レベル査定のために――アンタの魔力がどれくらいか調べておきたくてね」
そういうものなんですね。
「わかりました」
「じゃあ、こちらにどうぞぉ」
リルさんが受付の奥の扉を開けて、手で私たちを招いた。
その小部屋の中央には水晶が置いてある机があった。リルさんはその水晶に向かって手をかざして、何か呪文を唱える。そしたら水晶がぴかーっと明るく光った。
「この水晶はね、魔法を使うとその魔力に反応して光るの。光の加減で魔力量がわかるわ。レイラちゃん、この水晶に向かって祈ってみてくれる?」
「わかりました!」
私は胸の前で手を組むと、瞳を閉じて祈りの言葉を呟いた。
いつも大聖堂の祈りの場で唱えていた、民の平穏を祈る言葉。
「母なる女神様、我は望みます、この地にいる全ての人が魔に怯えず、平和に平穏に日々の営みを続けられますようそして彼らが家族と共に」
「ちょ、レイラ、止めろ、ストップっ!!!」
「彼らが家族と共に笑顔で食卓を囲み」という私の好きな祈りの言葉の部分で、私の肩をライガががしがし揺らした。
「ライガ、いいとこで止めないで」と後ろを振り返って彼を睨もうと目を開けると、所長さん・リルさん・ステファン・ライガが目を掌で抑えて立ち尽くしていた。
「……どうしたんですか?」
私が首を傾げると、リルさんは目を擦りながら所長さんに告げた。
「ナターシャ、この子……凄いわ……魔力で言ったら、S級つけてもいいくらい……」
リルさんはしぱしぱと瞬きを繰り返した。
「私、眩しくて……まだよく見えないもの……」




