第215話
それから、私たちはリンドールさんたちに別れを告げて、エルフの里を出て、ステファンの実家の領地へ向かって辺境地の来た道を戻っていきました。
道中、木のようになっていたお父さんの身体はだんだんと元の姿に戻っていってよかったです。——数年は木のままかと思っていたので。
馬車の中でお父さんは私が生まれるまでお母さんとどんな場所で生活していただとか、いろいろな話をしてくれました。
――けれど、お父さんと離れ離れになった14年前の時点で私が何歳だったかは、お父さんもわからないみたいです。「魔族の里を出てから、ずっと追っ手を避けて隠れて暮らしていたから、人間の暦でどれくらいだったかはわからない」そうで、でも「季節は何度も巡ったと思う」ということでした。……だから、私が何歳なのかは、結局わからないままです。
ライガに言ったら「気にするところ、そこかよ!」って言われましたけど。私にとっては、結構重大事項なんですけどね。
「ステファン! アイザック! フィオナ! お帰りなさい!!」
マーゼンス辺境伯領に戻ると、ステファンのお母さんのイザベラさんが、ぶんぶん手を振って出迎えてくれました。
「——あなたも、戻ってきたのね、エドラヒル」
イザベラさんはエドラさんを見て、微笑みました。
「ああ。私はもう少し研究所にいるよ。オリヴァーもまだ生きてるしな」
エドラさん、言い方……。
私の横で、イザベラさんは「ふふふ」と笑いました。
「変わらないわね、あなたは……。オリヴァー先生にも、よろしく伝えてね」
「アイザック! 無事でよかったわ。フィオナも、ステファンも、皆さんも元気そうで安心したわ」
ヴィクトリアさんも、アイザックさんに駆け寄ってから、私たちを見てほっとしたような表情でした。
お屋敷の中に入ると、使用人の方もたくさん。鬼の脅威が去ったお屋敷の中は、とても賑やかです。
「そうだわ、あなたたちに宛てて、お手紙が届いていたの」
エルフの里であったことなんかを話しながら夕食後のお茶を飲んでいると、イザベラさんが一通の手紙を使用人の人に持ってこさせました。
「キアーラの……エイダンから?」
ステファンが眉間に皺を寄せて手紙を開封します。
エイダン様から……何でしょう。
それから苦笑して、私とライガに言いました。
「結婚式の招待状だってさ。ハンナと正式に結婚するから、式典に来てくれって」
「そうなんですか! おめでたいですね!」
色々ありましたけど、結婚できてよかったですね!
思わず立ち上がった私の横で、ライガはなんだか変な顔をしています。
「本当にハンナでいいのか、エイダンは」
「結婚式といえば、まだアイザックとヴィクトリアの式をしていなかったの。あなたたちがいる間に挙げたいと思っているのだけど」
イザベラさんが私たちを見回します。
「兄上、出席してくれますか?」
アイザックさんが少し緊張した面持ちでステファンに聞くと、
「もちろん」
ステファンは笑って答えました。
アイザックさんとヴィクトリアさんは嬉しそうに顔を見合わせて笑いました。
――兄弟のわだかまりがなくなったみたいで、良かったです!
「これから、お祝い事だらけですね!」
私は嬉しくなって、そう言ってステファンとライガの肩に手をおきました。
アイザックさんとヴィクトリアさんの結婚式をして、それからキアーラでエイダン様の結婚式に出て……、
「マルコフ王国に戻ったら、ナターシャの王都ギルド所長昇進祝いもあるしな」
ライガが付け足します。
「忙しくなるね。僕らも戻ったら王都ギルドの手伝いに行こうか。最初は忙しいだろうし」
「そうですね! これからも忙しくなりますね!」
お父さんと一緒に暮らしながら、ステファンやライガと仕事をして、魔法ももっと使えるようになりたいです。炎の魔法とかだけじゃなくて、いろいろな魔法を使えるようになりたいですね!……例えば、魔法使いの女の人とかがよく使っている若く見せる魔法みたいな、逆に年上に見える魔法なんかも使えるようになりたいな。それで大人っぽく変化したりなんかしたら、ステファンなんかびっくりしてくれますかね。
私は想像してふふふと笑いました。
――元聖女だった私ですが、これからも冒険者として、自由に生活していきます!
【了】
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