第21話
「レイラちゃん、冒険者証できたわよ」
リルさんに呼ばれてカウンターに行くと、彼女は小さい男の子を持ち上げていた。
その男の子は小さい金属の板のついたペンダントみたいなものを手にもって、じっと私の顔を見た。
背丈は私の腰くらいの高さで、頭が少し大きく感じられた。
顔はかわいい子どもって感じだけどよく見ると……、
髭生えてる……。
「わぁ!」
私は思わず声を上げた。
「――あんた、本当に小人の血が入ってるのか」
見た目に似合わない低い声で彼は言った。
「小人族のサムよ。冒険者証を彫ってくれてるの」
リルさんはそう言って、彼が手に持っていたペンダントをはい、と私に渡した。
鉄の板には、名前とかさっき用紙に書いた情報と、『ランク:F』という文字が刻まれている。私はあれ、とライガを見た。
「ライガとステファンの、銀色じゃなかったっけ」
ふふん、と彼は得意そうに鼻を鳴らすと自分の冒険者証を私に見せた。
「俺たちはBランクだからなっ」
「Bランク?」
「冒険者は、実力に応じてFからA、一番上のSまでランクが決まってるんだよ。任される依頼や報酬額はランクで違うんだ」
ライガはリルさんに話を振った。
「でも、こいつF? 火竜を大人しくさせてたぜ」
「審査しないとね。最初はFよ。――まあ、それならすぐに上がるでしょうけど」
そんな仕組みなんだぁ。
Bってことは、ライガ達は強いのかな。
私はライガの銀色に輝く冒険者証を見た。
生年月日:八九四年一月一日
って書いてある。
「……ライガ、誕生日一緒なんだね、私と」
私がそう言うと、ライガは目を伏せた。
「俺も、適当だよ。――生まれとか日付は。親がいないからわかんないし」
ライガも『生まれた日わからないからとりあえず1年の始まりにしといた』なんだ。
私は奇妙な一体感を感じて黙った。
そのとき、奥の扉が開いてステファンだけが出てきた。
「待たせたね。レイラの登録、終わった?」
「おかげさまで、終わりました」
私はできたての冒険者証を得意げに見せた。
ステファンは「良かったね」と微笑むと、ライガに耳打ちした。
「一週間後、取引現場を押さえるって話になったよ」
「了解」
取引現場……?
ああ、卵の……。
「おじさんは?」
私が聞くと、
「しばらくギルドの牢屋だね」
ステファンは答えてから笑った。
「それじゃあ、夕食を食べに行こうか」
外はもう真っ暗だ。
***
「痛っ、いたたたたた、いったっ」
そのあとライガが行きたいと言った焼き肉屋でたらふくお肉を食べて、二人がいつもこの街にいるとき滞在しているという宿屋に部屋をとってもらった私は、ベッドで筋肉痛の激痛に苦しんでいた。
私を運んでくれた兵士さんたちが苦しんでたのと同じだ。
祈って疲れを消して歩いて無理した分が、宿屋でベッドに横になったとたん一気に襲ってきた。
(……体力つけないと……)
私はそう心の中で呟いた。




