第201話
金髪のエルフさんの後を追いかけて、私たちはエルフの里を抜けていきます。
ここはとても綺麗なところで、どこを見ても花が咲き乱れています。その間に先が見えないような背の高い、大きな木がたくさん生えていて、その木に窓や扉があったりして、エルフの人たちはそこに住んでいるみたいです。
……エドラさんはもともとここに住んでたんですね……、お父さんも……。
そんな不思議な気持ちできょろきょろしながら進んでいくと、扉のついた家の木がなくなって、今までよりもっと大きな山みたいな木が生えている場所に私たちは着きました。
「アイグノール様、外界より訪問者です。――マイグリンとの面会を求めております」
金髪のエルフさんがその木に向かって呼びかけた。
その途端、厳しい声色が木全体から響いた。
「――マイグリンを訪ねてだと――、これは、魔族の気配か」
しゅる、という音が耳元で聞こえたような気がした途端、足元に咲いていた花々から蔓が伸びて私の身体に絡まりついてきた。
「きゃあ」
思わず声を上げて炎の精霊を近くに集めて爆発させてしまいました。
ボン! と音を立てて絡みついてきた蔓もろとも、爆発した花が周囲を舞った。
「――エルフの族長殿、何のおつもりですか!」
叫んだステファンとアイザックさんたちが剣を抜いた。
「――人間が立ち入る問題ではない。人間がなぜその魔族と一緒にいる」
周囲を震わせるような声とともに、大きな木の表面が歪んで、幹の表面から綺麗な長い白髪のおじいさんのエルフが浮き出てきた。
「木の中から出てきました……か?」
私は驚いてステファンを見た。うなずいたステファンも目を大きく広げている。
「アイグノール様は、普段、悠久の大樹と一体化されている」
案内してくれた金髪のエルフさんが答えてくれる。
普段は、木と一体化ですか……。
私は改めて族長さんを見つめた。長い白髪がさらりと綺麗なおじいさんだ。
オリヴァーさんみたいに髭はない。
――私たちを案内してくれたエルフの人も、里の中で見かけたエルフの人も、みんなとても若く見える人ばっかりだったから、年をとったエルフはこの人が初めてだ。一体何歳なんだろう……。
「我々は彼女の立ち合いに来ました。いきなりのご挨拶ではないですか、族長殿!」
アイザックさんが剣に魔法の炎をまとわせて族長さんを睨んだ。
「強気で」っていうお父さんのアドバイス通りですね……。
私は感心しながら、族長さんを見つめた。
何だかすごく「魔族」を嫌っているようです。
いきなり攻撃みたいなことをされてショックですけど……、今までもさんざん「魔族」だからって色々言われてきたので……、ちょっと慣れましたね。
それよりも、私は、お父さんのことを聞きたいです。
私は一歩踏み出すと、族長さんに向かって頭を下げてから、大きめの声で言った。
「――私はレイラと言います。半分魔族で半分エルフみたいなんですが……、ここにたぶん私のお父さん……のエルフはいますか?」
マイグリンさんという人がその人なんでしょうか。
その名前を聞いても、エドラヒルさんといい、エルフの人の名前は覚えにくいですね、と思うくらいで、ピンと来ない。
「……マイグリン! あの裏切者め……! 魔族との間に子どもがいたとは……!」
憎々しげに族長さんは叫んだ。
……と同時に、大きな木がばさばさと揺れて木の葉がヒュンっと音を立てて舞って、私たちのほうへ向かって飛んできた。何か刃物みたい……!?
エドラヒルさんとフィオナさんが杖を振るう。
周囲に風が巻き起こって葉っぱが跳ね返される。
別の方向に飛んだその葉っぱは周囲の木の幹にぐさぐさ刺さった。
な、なんなんですか……この族長さん……、攻撃してくる気満々すぎません……!?
私は血の気が引いて、思わず後ずさりした。
ライガが後ろに立って肩を叩いてくれる。
「本当にどういうつもりだ」
エドラヒルさんが金髪のエルフさんにすごんだ。
「――エルフを裏切ったマイグリンの名が出ると、アイグノール様は錯乱される。悠久の大樹の怒りはアイグノール様……エルフの怒りの体現だ。それがその娘を拒むなら、それが――この森の、我々の総意だ」
……ちょっと、言っている意味がわからないです……。
私を会わせるのが嫌だってこと……ですかね。
そんなの、意味がわからないです。
せっかくここまで来たのに。
私は族長さんに向かって叫んだ。
「お父さんに会いに来たんです! 会わせてください!」




