第2話
自分で言うのもなんだけど、今の【聖女】の生活は結構しんどい……。
朝は日が昇る前に起きて、日の出から日が沈むまではずっと祈りの間でお祈りをしないといけない。
小さいころは、神殿の近くで遊ぶ子どもたちの声を聞いて、「私も一緒に遊んでいいですか?」って大司教様に聞いたりもしたけど、「お前は祈らないといけないから駄目」って言われて遊ばせてもらえなかったし――。
あと、一番しんどいのは食事。
食事は朝と夜のパンとスープだけ……。
祈りによる魔法――聖魔法の力を保つために、お肉食べちゃいけないって言われてるから、スープだって野菜がちょこっと入っただけのやつ。
育ち盛りにはきついです。おかげでもう(大体)16になるはずなのに背も低いし子どもみたいな見た目のまま。
それでも「身寄りのないお前を育ててやったんだから、お前も国のためにお返しをしなさい」って大司教様に言われてたから頑張ってたけど――。
「私、出て行ってもいいんですねっ!?」
私はエイダン様に再確認した。
「あ、ああ、出て行け、今すぐだっ」
エイダン様は繰り返し「出て行け」と叫びます。
――次に国王になられる王太子様がそう言うんだから、もう私はお役御免ってことで本当にいいのよね。
私は解放感でふわふわした気持ちになった。
「今、荷物をまとめて参りますっ」
私はそう言うと、祈りの間に隣接する自分の寝床に行って、袋一つだけの自分の荷物を持って来た。
荷物って言っても――もう1枚だけ持ってる修道服と、神殿に引き取られたときに持っていたっていう、刃物で傷つけたみたいな傷がたくさん入った緑の石のペンダントだけ。
欲があると聖魔法の効力が鈍るから、私物は持っちゃいけないって言われてたから、自分のものっていうのはこれだけ。
祈りの間に戻ると、エイダン様が呼んでくれた兵士さんたちがたくさんいた。
「お前たち、こいつを隣の国まで運んで、置いてきてくれ!」
「送ってくれるんですね!」
そう言うとエイダン様は何か苦いものでも食べたみたいな顔で怒鳴りました。
「違うっ、お前を国外まで追放するんだっ」
兵士たちは私を停めてあった馬車の荷台に乗せた。
ガラガラガラと馬車が走り出す。
「王子、レイラをどこへ――」
大司教様が騒ぎに気がついたみたいで、大慌てで走ってくるのが見えました。
「うるさいっ! 僕に指図するな!!」
エイダン様が大司教様を突き飛ばします。
転んだ大司教様は地面に横になったまま私に向かって大きな声を出しました。
「レイラっ、育ててやった恩を忘れたのかっ」
「それはありがとうございますっ、でも、王子がもういいって言ってくれてますしっ」
だんだん小さくなっていく大司教様に私は呼びかけました。
「私、今まで頑張ったと思うのでっ、これからはもっとかわいい服着て、美味しいもの食べたりしたいんですっ」
エイダン様もハンナ様も大司教様もだんだん小さくなって見えなくなりました。




