第18話
私たちは連れだって塀の中の街の中心部にある冒険者ギルドに入った。
結構立派な建物だなぁ……。
カウンターの中にいる長い黒髪の綺麗な女の人が笑顔でこちらに手を振る。
「あらっ、ステファンじゃない。2週間ぶり? 確か西のルシドドの方へ護衛で行ってたのよね、寂しかったわ」
「リル、俺もいるぞ」
ライガが不機嫌そうにステファンの後ろから顔を出す。
女の人――リルさんはふふふと口に手を当てて笑った。
「分かってるわよ。あなたたちは二人でセットだものね。今日は――」
彼女は私と、手を縛られて連行されてるおじさんに視線を向けた。
「あらあらなぁに、物騒ねえ。それに、まあまた、ずいぶんと可愛い子連れて……」
「そのことで話があるんだ。ちょっと奥の部屋使えるかな。所長と話したい」
リルさんは「わかったわ」と頷くと、立ち上がって奥の扉を開けた。
「ライガ、ちょっと僕は所長と話してくるから、お前はレイラのこと頼んだよ」
そう言い残すと、ステファンはおじさんを連れて奥の部屋に消えて行った。
ライガはカウンターに寄り掛かると、リルさんに話しかけた。
「リル、俺たちが留守の間に何かあったか?」
「まぁ平和よ。それより、昨日、キアーラ王国との間の街道のとこに、火竜が飛んでたって報告があったけど、あなたち大丈夫だったの?」
「ああ、それな。襲われたの俺たちだ」
ライガが頷くと、リルさんは面白い顔をした。
「火竜に襲われたの!? でも、竜は飛んで山に戻って行ったっていうけど……あなたたちも怪我もなさそうだし。どういうこと?」
「卵を盗られて怒ってただけみたいなんだ。馬車は燃やされたけど、卵返したら、戻って行った」
「ああ、それで『所長に話』ね。……でも、そんなことってある? 怒った竜が人を襲って、大人しく帰って行ったなんて話聞いたことないわよ……」
「こいつがやった。怒ってる竜を『祈り』で鎮めたんだよ」
ライガが急に私を前に押し出した。
「……この女の子が? それにこの子の服装……、光神教の神官?」
リルさんは私の砂埃で汚れた(元は)白い修道服を眺めた。
「ああ、こいつが『祈り』で竜を大人しくさせたんだ」
「……まさか」
リルさんは目を白黒させて私を見つめた。
――そんな驚かれるようなことなのかな。
「そう、それで、こいつの冒険者証を発行して欲しいんだ」
思い出したようにライガが言う。
そう、それ。
今後のために冒険者の登録をしたいんです、私は。
「えぇ……? でも、この子、いくつ……」
リルさんが私を上から下まで眺める。
私はもう言い慣れた台詞を言った。
「小人と人間のハーフです。16歳なので登録お願いします」