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【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!  作者: 夏灯みかん
【5章】元聖女は自分のことを知る決心をしました。

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第110話(ライガ視点)

 ――『やっぱり、ライガじゃねぇか』だって?


 俺は目の前の、大きい体の毛むくじゃらの熊男を見つめて、首を傾げた。

 俺の名前は最初にここで暴れた時に名乗ってるから、わかるだろうけど、何だその知り合いみたいな聞き方は――熊憑きで知ってる奴――?


 俺は記憶をたどって、あるひとりの名前に辿り着いた。はっとして、そいつの顔を見上げた。


「――お前――、ベルリク?」


 熊憑きのベルリク。俺がステファンの親父に買われる前――、人買いのレイヴィスっておっさんのとこにいた時に――いた、年上の獣憑きだ。


 レイヴィスのところにいたときの記憶はぼんやりしていて曖昧だ。何せ1日の大半は檻の中に入れられて、食事というより餌として臭い肉を与えられるだけで放置されてることが多かった。


 ――といっても、やっぱり売り物つっても子どもの世話する人間は必要なわけで。

 レイヴィスは、多少年長で知能があって意思疎通できるやつに、年下の売り物の世話をさせていた。ベルリクもその一人だった。


 俺はまじまじと目の前にいる二足立ちのでかい熊を見る。

 そいつは大きく裂けた口の端だけを持ち上げてにやりと笑った。


「そうだよ。よく覚えてたな」


 ――ベルリク、こいつ、どんな奴だったっけ――。記憶をたどって行く。そんなによく覚えてるわけじゃない。ただ腹減ったって騒ぐと――、こいつはたしか『騒ぐとご主人に殴られるぞ』って、俺に何か食い物をくれたっけか。


 そうだ、普段レイヴィスのクソ親父が檻に放り込んでた腐った肉じゃなくて、手伝いしてる大きいやつだけ食べれる、ちゃんとした食事を分けてくれてたんだった。


 ベルリクは呆れたように首を傾げた。


「ライガ、お前こんなとこで何やってる? どっかの金持ちの貴族に買われたんじゃなかったか。――それが『金色の牙』とかいう、弱ぇグループにいたんで驚いてたら――、そのガキの母親の仲間か?」


 俺はナターシャのことを見返した。ナターシャは咳き込みながら立ち上がると、切ったらしい口元の血を拭いながら、俺を見て頷いた。


 ――そうだ、俺はきちんと俺の役割をしなけりゃな。

 俺の役割、それはこの集まりの主催者をはっきりさせることだ。

 ここにいる奴らほとんど、無法者ではあるだろうけど、全員捕まえるわけにいかない。

 連れてく奴を絞らねえと。


 俺はベルリクに向き直った。雰囲気的に、ベルリクは主催者の一人だ。

 知ってる奴だった、てのは都合が良い。

 この場を取り仕切ってるのが誰か確認できるからな。


「そうだ。――子どもがいなくなったっていうから、探しに来た。ノアを攫ったのはお前か?」


「攫ったってのは人聞きが悪いな。スカウトだよ、スカウト。使えるやつが欲しいんだ。ノアっていうのは、その耳が変なガキの名前か? そいつはいいな、見込がある」


 ベルリクはくくっと笑うとナターシャに呼びかけた。


「――ってことで、お前の息子は俺らにくれ。俺たちが立派な獣に育ててやるよ」


 ベルリクの後ろから数人の獣人が一歩前に出た。

 ――こいつらも仲間か。


「――誰がやるか。子どもらは返してもらうよ」


 ナターシャは低い声で呟くと身構えた。


「おいおい、そっちの情けない『兎』はお前のガキじゃないんだろ。そっちは狩らせてもらう。『獣』の皮を被った『兎』はいらん。見ていて不快だ」


「兎も獣だけどな」


 兎の獣人とか、獣人も肉食獣系ばっかりじゃないんだけどな。

 俺の呟きにベルリクは肩を震わせて笑った。


「『獣』って名乗っていいのは強い者だけだ。『兎』は獣の玩具(おもちゃ)だぜ」

 

 ――何が面白んだ。

 俺は呆気にとられて笑い声を上げるベルリクを眺めた。

 こいつ――本当に、俺に食事くれたあいつと同じ奴か?


「――ライガ、お前の暴れっぷりも結構良かったぜ。さすが狼憑きだな」


 ベルリクは笑い終わると俺を見つめた。


「お前が俺と戦って、俺を倒したらガキ二人とも返してやるよ」


 周りの取り巻きから「ベルリク!」「やっちまえ!」と声が上がった。

 

 俺は振り返って、ナターシャやステファン、テオドールにレイラを見た。


 この遺跡跡の周り、森の中にはサミュエルたち魔術師ギルドの魔法使いが隠れている。

 そいつらは、俺たちの合図で麻痺(パラライズ)の魔法を周囲一帯にかけてくれる算段になっている。


 ただ――精神魔法の麻痺は、興奮状態の奴には効きにくい。

 逆に祈りの効果で興奮状態のやつの精神を鎮静化したときにかけるとめっちゃ効く。

 だから、盛り上がらせた状態で、一気にレイラの祈りで鎮めたところに魔法を放って、主催者たちだけ回収して立ち去るのが俺たちの計画だった。


 俺はぽきぽきと指を鳴らすと、軽くステップを踏んで身構えた。

 ――よし、主催っぽい奴らも大体わかったし、派手に暴れて盛り上げてやろうじゃん。


「いいぞ。かかってこいよ」


 俺は指をくいっと曲げた。



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