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第一話 幾億人分の1人の君

15XX年。世界の各地を、神の媒体となった人間、

〔神媒者〕がそれぞれ国を作り、支配をしていた。


その中でも特に力を持っていた国が、バスク王国と

ローザルト帝国であった。


その2カ国は、互いの魔法技術や科学技術の研究を共同で行うほど、友好な関係を築いていた。が、ある不可解な事件を境に、友好関係は一気に閉幕を迎え、二カ国の新たな戦争が始まった。


これは、世界の構図が新たな姿へと変わる時代を生きた少年の物語である。

意識が戻ったとき、わたしは、数多くある病床の一つに横たわっていた。

なぜ今私はここにいるのだろうか。

私はそのことについて、特に問題意識を持つことがなぜかできない。


そのことはすぐに忘れてしまった。


目覚めと同時に私の鼻に刺激臭が入り込んでくる。

顔をしかめ、すぐさま状況を確認するべく起き上がろうとした。が、私の身体が持ち上がることはない。


そこで初めて自分の体のほとんどが動かせないことに気付いた。

激痛と絶望をその瞬間に背負うことになった現実に泣きたくなった。


「もうどうなってんだよ」


身体中がとてつもない痛みに侵されている。呼吸をするだけで、内部の損傷に動きが生まれとても苦しい。


飢え死にが先か、衰弱死が先か。


半日が過ぎてそろそろ心身ともに限界が来たらしく死をさとらざるをえなくなってしまった。目は見えなくなり、意識も朦朧としてきた。


15年しか生きられずに死んだら、きっと私には未練しか残らないだろう。

死への覚悟など、到底決まるわけもなかった。


そんなとき、また誰かが私のもとに現れ、しゃべりだした。


「素晴らしい!これほどまでの火傷と、筋肉繊維の裂傷を抱えながら生きている人間は初めて見ました。やはり私は見る目があるようですね。おっと先礼、取り乱しました。私は痛みを司る神ペイルと申します。この度は貴方と契約を結ぶべくここへ参りました。」


なんだ、冷やかしか。


自分のことを神を語っている時点でまともな人間ではないなということだけは分かった。


「えーっと名前はリアン・・・・ローズさんね。はいはい覚えましたよ、リアンさん。っとその前に、かなり衰弱していらっしゃるようなので魔法を使って回復させますね。一時的に。」


そう言われたあと、見えなかった眼が、半日ぶりに施設の木製の天井を私に見せた。


「おぉ!」


というか待てよ。少し私の名前を間違えてやがる。


「おい俺の名前はリアン・ライズだ。ローズじゃない」


「えーそんなこと言われたってあなたの名前は、、まぁいいか。こっちの方が面白くなりそうだし。」


「なに言ってんだ?お前。もう意味がわからん。まぁ、次から気をつけろよ。」


「はーい」


目が見えるようになったので、気づいたが、今まで私と話していたものは人間ではなかった


人の形ではあるものの、全身のほとんどが白く、所々薄紫色の筋肉繊維がむき出しになっていた。また頭は、口の十センチほど上から三又にわかれていて目がない。


ペイルと名乗るものの容姿をじっと見ている際、上半身が自由に動かせていることにも気付いた。


よくよく考えたら、ぺイルが私の名前を知っているのもおかしな話である。


だって私はヤツに一度も名乗っていない。そんなことを考えていると、今私が求めている内容の話をしてきた。


「えーと、まあ困惑はするとは思いますが頑張って話についてきてください。神は人間の名前を知るには顔を見るだけで十分なんです。すごいでしょ。まあそれはおいといて本題にはいりましょうか。契約の内容はこんな感じです。」


と、言われると、何も聞いたり見たりしてないのに内容が頭の中に入ってくる。


      神ペイルとの契約の内容


・契約結んだ時点で、リアン・ローズの感じる痛みは すべて神ぺイルへ送られる。


・神ペイルは痛みをリアン・ローズから受け取り次第報酬として交換比率に見合った量の魔力を授ける。


・神ペイルは自身の媒体【リアン】の生命の危機的状況以外には神力を行使をすることができない。


・リアン・ローズは神ぺイル以外の神と契約を結ぶことはできない。


・この契約はリアン・ローズがで死ぬまで有効である。


・神ペイルはリアン・ローズに自身の神力の一部を授ける。


なにか必ず裏の意図があるとは思うが、今の私が少しでも長く生きるためには、この神ペイルとの交渉が不可欠である。


私は即座にその契約をのんだ。


すると、同時にペイルの両手に手錠が掛かり、その手錠についた鎖は私の背中から伸びていて、繋がっていた。しかし、とうの本人は全く気にすることなく喋っている。


「決断が早い人、嫌いじゃありませんよ。んふふふ。さてと、リアンさんの痛み、実に質の良いものでした。ほら早く回復してみてください。もう魔力はあなたに送りこまれているんですから。回復の方法は魔力を身体に流すだけですよ。できますか?」



そんなことで回復できるとは知らなかったことは認めよう。

しかし、それくらい私にもできる。ずいぶんと舐められたもんだ。


私の魔力を体に巡らせる。するとみるみるうちに火傷と断裂した筋肉が治っていった、と同時にとてつもない疲労感が新たに体を支配した。


「んはははは。よくできました。えらい、えらい。かなり強めにガクッてなりましたね。魔力使い切ったんだから当然だけど。」


「なんだぁ?なんか俺、騙されたのか?ハァ、ハァ」


「そんなことないですよ。だってリアンさん魔法使えないんだからしょがないでしょ。ゴリ押しな方法しか結局はないんですよ。魔法使えないと。」


「俺だって魔法ぐらい使えるよ!だって的当てとかやってたもん。」


「うわー。そっから説明しなきゃダメか。いいですかリアンさん。(魔法)ってのは、魔力を加工して出しているんです。なんて言えばいいかな。んーと、あ!水の状態変化とかいい例えかも。ほら、あの〜、水を火でボーボーすると、水蒸気になるよー。みたいな。その水蒸気を糧に魔法を使うんです。」


「なんだ?水の状態変化って?」


「ぐっ、例えすら伝わらないとは。うん!まぁいいや大丈夫!リアンさん。あなたは加工なんてしなくてもいいぐらい魔力あるから。でも普通の人はそんなに魔力を持ち合わせていないから、加工して長い時間沢山使えるようにしてるってわけ。」


と、言うことは

「じゃあ、今まで俺が魔法だと思ってたのは、別のものってことなのか!?」


「そうです。ただ魔力を水鉄砲みたいにピュンピュンしてただけですね。」


「え、とんでもなく恥晒しじゃん!?俺好きな子に、魔法使えるようになったよって自慢しちゃったよ!」


ん?なんの記憶だ?誰の記憶なんだこれは。私のものなのか。なにか、大切なもののような気が・・・

 


それはともかく、私の背中から出ている鎖と手錠について尋ねなければならない。


こんなもの垂れ下げて街なんて歩いたら憲兵さんの仕事を増やしてしまう。


「おい、ペイル。このくさ・・・」


「あーはいはい、この鎖ですね。これはですねーあれです、あれ。え一何だっけ。」


「おめー人の話さえぎっといて分かんないってどういうこと・・」


「お~もいだしたぞ!あれだ。私がこの世界で無双できないようにするためですね。いやスッキリした。この手錠があるとですね、私は神力が使えないんですよ。まあ当然ですよね。もし、いつも使えちゃったら人類滅亡どころじゃすまないですからね♪」


コイツ、2回も遮りやがった。


「じゃあ契約にもあった通り俺が死にそうになった時だけ使えるってことか?」


「大正解です。なので、もし危ないって思った時は、自分を死の淵に追い込むといいですよ♪こう、、えいやっ、てね。」


そう言って自分の親指を腹に突き立てるジェスチャーをしてみせた。これを笑顔できる神と契約を結んでしまったことを、いまさらながら後悔している。






 何日ぶりに体が動かせるようになったのかは分からないが、久しぶりであるということは身にしみて実感していた。


とりあえず集落など、人のいるところを目指すため施設の出口へ向かって歩いているが、やはり死体しかない。


着ている服も当時着ていたのであふう血の付いたものだったので、きっとけが人の数が治療のスピードを上回ってしまったのだろう。


それから次第に療養所から死体置き場へとかわっていった、というところだろうか。


なかには兵士の死体もある。


出口にたどり着き、血がついて、金具が錆びついた扉を、力いっぱい押して開けた。


すがすがしく、澄んだ空気が、私を撫でるようにすり技け施設へ入って行く。


外へ出ると、そこには美しい青空があった。


さっきまで見ていた地獄のような光景が、まるで、ただの悪い夢だったのではないか、と思わせるような美しさが、確かにその青空にはあった。


施設の周りは背の低い雑草が広がっており、それを森が囲っていた。






「ペイル、ここの近くに人間が集まっている地域はあるか。」


「つまりは村ってことですね。リアンさん、そんな遠まわしに言わなくても分かりますって♪

村は近くにはありませんが、人間が隊列をなして近づいてきています。あと1分程度で森を抜けてきて我々と接触しますね。」


救援隊か。たしかここの施設の管理元はバスク王国である。


わざわさここまで来るということはバスク王国の何かしらの隊である可能性が高い。


そのバスク王国の隊に拾ってもらえば、王国まで楽にいける。そう思い、待っているとその隊が見えきた。


「おーい。たすけてくれ。」


そう叫ぶと、隊の人たちが気付いたのかこちらを向いた。


いやな予感がした。


掲げている国旗がバスク王国のものではなく、ローザルト帝国のものであった。


また隊をなしているのは兵士であった。

そしてきわめつけにバスク王国とローザルト帝国は戦争のさなかであった。


私に向けられたのは救援の意思ではなく、弓矢であった。

弓使いの狙いは、いやと言うほど正確で、私が必死に回避の行動をとったにもかかわらず、私の右肩、腹、左足に矢が突き刺ささる。

痛みは感じないので冷静に対処することができた。矢をすぐに抜き、ペイルに教わった方法で回復した。


「ぺイル!俺はどうすればいいんだ?」


「そんなこと言われたってねえ。じゃあ、あの兵隊さんたちのとこまで走っていって兵士にタックルしましょう。」


「おい、お前それ俺に死ねって言ってるのようなもんだぞ。」


「そう怒らないでくださいよ。リアンさんが死にそうになったちこの手錠と鎖も外れます。その後ちゃんと助けますから。あなたが死ぬと、この世界とバイバイしなきゃ行けなくなるので。」


「ああ、はいはいそうだったな。ん?え、そうなの!?まぁいいや。くっそ、短い人生だったなあ、おい!」


そして私は隊の方へ全力疾走した。

やはり直進してくる獲物は、弓使いにとって射やすい的でしかなかったらしく、私は矢の集中砲火を食わった。


じりひんではあるものの、ある程度、矢の刺さった痛みが大きいらしいので、回復は続けられる。


わたしがどんどん近付くにつれ、鉄兜と鉄の鎧をまとった前衛二人が弓使いの前に立ちふさがった。

喉には矢が内蔵に刺さった時に逆流した血が溜まっているため、呼吸が難しく、貧血と酸素不足で視界が悪い。


「ぶぶ、ごほっごほ、ごぉらあああー」


私の渾身のタックルを、あっさり避けられたと同時に、二人の前衛に左足と右腕を切り飛ばされた。


私は、切られた衝撃で倒れこんだ。ああ、せめて利き腕じゃないほうがよかったな。


そんなことを考えられる余裕も先血多量ですぐになくなった。起き上がることができず、前衛から逃げることもできない。


沢山出血した体を回復させるなんてことは、決して一瞬で終えることができないことなんて分かりきったことだ。


まずい、とどめをさされる。そうだ、あのクソ神はなにをしている。


「おおい!ぺイル、何してんだ!さっさと助けてくれ。見ての通り死にそうだぞ!」


「またまたご冗談を♪。回復もしっかりできてるじゃないですか。んーと、その調子ならあと10秒でめでたく腕も足も生えて完全復活ですね。」


「そんな暇ねえから今こうやって・・・・・・」


あれ、なにかがおかしい。そういえば前衛がなかなか切りかかってこない。どういうことだ。


「えー、だってリアンさん。助けるもなにも、あなたその程度で死ぬほど弱くないんですから。ほらね。手錠と鎖も健在ですよ。」


そう言うさなか、ペイルは両手の手錠をガシャン、ガシャン、とぶつける仕草をしてみせた。


状況を確認しないと。

そう思い、だんだんと血が巡ってきた体をぐっと持ち上げ立ち上がった。


するとそこには私と同じ右腕と左足を失った兵士たちがいた。みな痛みに悶絶しながら地面に横たわっている。


「誇ってくださいリアンさん。これが神ペイルの神力なのです。あなたに授けたその神力の名前。それは、強制状態共有です。あなたが受けた外傷、痛み、感情、もろもろを半径10メートル以内にいるものに強制的に共有するというものですね。ちなみに、リアンさんが自身の回復を行ったとしても、範囲内にいたものは回復しません。いや~あなたが表ましいですよ、リアンさん。こんな能力をわたしからじきじきに授かれるなんて。」


「ああそうかい。そりゃありがてーわ、ペイルさん。自己犠牲前提の素晴らしいものをどうもありがう。」



まあそれはよいとして兵士たちをどうするかだ。

どうやら腕と足だけでなく、治りかけの矢の刺し傷も沢山受け取ったらしく、みな瀕死だ。


とどめを刺そうか迷ったが、やっぱり面倒なのでやめた。

そして彼らに近づいて行くうちに、一人、無傷の兵士を見つけた。


きっと、たまたま私の能力の射程範囲外に出ていたのであろう。


しかしその兵士は、私を凝視し、ガタガタと震えていた。こいつが使い物になるかは分からないが私への服従を勧めた。


「お前の負けだ。俺に仕えろ。」


するとその兵士は発狂しながら自分が背負っていた矢を持って自分のに突き刺した。


その後、私の顔を見て眼球を充血させながらにんまり笑って死んだ。


私は尻もちをついていた。


殴られたわけでも、押されたわけでも、刺されたわけでのないのに。


押されたんだ。彼の気迫に。


死んででも抗うという気迫に。恐怖で足がすぐんで立てない。

ペイルに助けを求めようとしても声がでない。


こわい。こわい、こわい、気持ち悪い、助けてくれ、気持ち悪い。


「はいはい、わかりましたよ。言葉にできなくても伝わりますから。はい深呼吸。吸って、吐いて、もういっちょ吸って~、吐いて~。はいそのまま続けてリアンさん。大丈夫。私がついてますからね。」


ペイルが優しく声をかけ、背中をさすってくれたのと、何度か深呼吸を続けたため、無事落ち着いた。


「助かったよ。ありがとう。」


「いえいえ。どういたしまして。というかこの程度でもう平気になっちゃうんですね。リアンさんも帝国国民なみの精神力をお持ちなんですね。あーおそろい。ヤツら帝国国民はですね、神ではなく皇帝を信仰しているのです。それも異常なほどに。もう、ほぼ洗脳ですね。ましてや軍人だったので、あんなことしたのでしょう。」


「そうだったのか。じゃあ、あんなこと言っても無駄だったってことか。失敗したわ。」


ん?ちょっと待てよ、ペイルの優しい声かけ?

いつもはもっと男が女の声まねをしているような、ふさけた声だったよな。


さっきのとはまるで違う。あと、さすってくれた手が人間の手の感触だったのもそういえば変だ。


「ペイル、さっき俺を助けてくれた時の声と今の声、違う気がするんだけど。」


「私はなんせ神ですから。人間の姿にもなれるんですよ。ほらね、こんなふうに。」


すると、ペイルの姿がみるみるうちに変わっていき、私よりも少し年上の少女になっていた。


黄金色で、ツヤのある美しい長髪が風になびく。

眩しいほどに白いキトンを着こなす姿は、まさに美しさの化身であった。


「どうです?リアンさん。この神がかっている可愛さにみとれてしまいましたか。んふふ。リアンさんはお年頃だから、こういうほうがよろこぶかな〜と思って。」


「ペイル様、その姿、維持できますでしょうか?」

 

「はいはい。そーれーよーりー、そんなに私のこの姿がお気に召したんですね。リアンさんってこういうタイプが好みなんですね。んふふ。」


「えぇ!それはもう。感無量です。」


目から自然と涙が出ていたことを、頬で気付いた。


「え、何泣いてるんですか、リアンさん。ちょっと。おーい。え、なになに、怖いんだけど。」


「あまりにもペイルが美しくて。」


「さっきまで清らな涙を流してたのに今度は、口説いてきたんだけど。どうしたんほんとに?頭でも打った?」 


はっ、そうだ正気を保て!リアン!これからの予定を考えなくては。


「ごめんごめん。よし、もう大丈夫だ。これから生活するところの候補としてバスク帝国なんてどうでしょうか。」


「すごく急だね。でもいいと思いますよ。バスク王国なら。」


「じゃあバスク王国にしよう。えらい早く決まったな。じゃあそういうことで。で、あとペイルは人間のふりをしとかないとバケモノ騒ぎになりそうだからその姿のままでいて欲しいな。」


そう私が言うと、ペイルは少し考えてこう言った。


「神は普通の人には見えませんので特に問題はないかと。でも確かに王国の検問となると視神者もいるでしょう。そうなると、たぶん国レベルでお出迎えをされますね。リアンさんが何事もなく検問を通りたいのであれば、完璧に正体を隠しますが、どうします?」


「うーん。その、何?どうしてお出迎えされんの?」


「できるだけ我々を怒らせないためですね。だって我々は一瞬にして国を滅ぼせる、災害のようなものですから。まあ、そんな奴ら国に入れたくないのが本音でしょうが、もし滞在拒否して、我々に逆上されて国ぶっ壊されたらゲームオーバーですので。」


「いやそれ、お出迎えって捉えちゃだめでしょうよ。だってそんなの、ナイフ突き付けて他人の家入って行くようなもんじゃん。よし、よくわかった。ペイルさん。正体、完璧に隠しましょう。」


「えーでもみんなから大注目されるんですよ。まるでスターじゃないですか♪」


「皮肉がお上手で。よしじゃあ早く行こうぜ。」


「はーい」


ペイルは少し不満げではあるが、さすがに国は脅したぐない。

そんなこんなで、私たちはバスク王国へと向かった。




歩き続けて五日目。

「お~い、ペイル。あと何キロだ?まさかこんな遠いなんて思いもしなかった。さすがにもう限界が近いぞ、俺は。」


「人通りも多くなってきたので、あと60キロくらいですかね。あと少しですよ、頑張って。」


そうは言われても疲れてしまったものはしょうがない。

なので、バスク王国に向かっている荷馬車を探した。すると、一つだけタダで乗せてもらえる荷馬車を確保できた。


馬車の主はオーガイルさんという70代ぐらいのおじいさんであった。


オーガイルさんがとてもいい人だったのもあって、バスク王国への道のりは楽しい時間になった。





関所まで残り2キロのところでオーガイルさんに降ろしてもおった。


一緒に関所に入って何か面倒なことが万が一起きたらオーガイルさんに申し訳ないからだ。


「オーガイルさん、ありがとうございました。もう感謝しかありません。」


「なーに。これぐらいたいしたことじゃねーよ。若いんだから、そういうことは気にすんな。都会に飲まれず、たくましく生きろよ。あとくれぐれも、つれの嬢ちゃんを大切にな。それじゃあな。」


オーガイルさんを見送ったあと、俺は冷や汗を拭った。


「え、なんでオーガイルさんにペイルが見えてんの?」


「あー、言ってなかったでしたっけ。いやだって、あまりにもリアンさんが色々な荷馬車主に断られてたから、これはかわいい私の出番かな、と思って普通の人からも見えるようにしたんです。それでオーガイルさんは私のことを見ることができたんですよ。」


「そういうことね。あせったー。というかなんだその、私のおかげで荷馬車乗れたんですからね、みたいな言い草は。」


「いや、事実なんですもん。だって私、オーガイルさんが最初で最後でしたし。乗せてください、ってお願いしたの。」


横で勝ち誇ったような顔をして、ルンルンと道を歩くコイツが神だとはにわかに信じがたい。


くそっ。悔しい。外見を判断基準にしやがって。でも気持ちはよくわかる。


残りの2キロは、ペイルのウィニングロードとなった。


 検問所につくと検査が始まった。

名前、持ち物、出身、目的を話した。5分ほど待合室で待っていると検問所の役員が来て言った。


「検査が終わり、通行許可が出ました。バスク王国へようこそ。」


何事もなく検問所を抜けた。わたしは大きな安堵感を得るとともに、大きな課題があることに気付いた。

          

          お金がない


ペイルも思考を読んだらしく私のほうを見て


「ピンチじゃん。」


といった。

とりあえず、仕事をさがすべく、役所へ向かった。

どんな仕事がいいかな、とかそもそも選べるのかな、などと考えて歩いていると、私より少し年上の青年に驚くべき言葉をかけられた。


   「おい、お前も神を連れているのか。」


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