8 決闘③
私が勝利したことを知らせるアナウンスが流れ、決闘場から元の町へと戻される。装備欄に賭けられていた薙刀が入っていた。見た目が良いのはもちろん、大陸特攻という特殊能力が付いている特殊能力付きの武器だった。想像以上のものを貰ったのかもしれない。というよりそもそも大陸特攻ってなんだろう……。
本当に貰っていいのか不安になってAsahiさんを探していると道のど真ん中で寝ていた。決闘で負けても賭けたものを失うだけだから、単純にああしているのは気分の問題だろう。ロールプレイの一種なのかもしれない。
「Asahiざまあ!」
「負けてやんのー。くすくす」
「暴君を討ち倒したぞ! ……夜霧さんが」
客席にいた人たちがやけに遠くから彼女を煽っていたが、彼女が睨むと蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「あの、これ貰っても……?」
「いーよ。薙刀使わないから。インベントリの肥やしにするのは勿体無いからね」
「ですが、大陸特攻って書いてありますよ。貴重でしょう?」
「言ったけど、使わないから本当に気にしないで。……大陸特攻は人気ないから余計にね。それはイベントの上位報酬なんだけど、それらには特殊効果がついているんだ。人気なのは『倭人特攻』と『追従の呪い』、半分ネタ枠で『金の亡者』かな」
大陸特攻は外国人への、倭人特攻はプレイヤーNPC問わずこの国の人物へのダメージ増加、追従の呪いは手放せなくなる効果、金の亡者は人を殺した際に追加で金が貰える効果らしい。
外国人というのは元寇イベントなどで出てくる敵のことらしい。元寇は協力型のイベントだからそのイベントで活躍することでAsahiさんに返したい。それでも申し訳なさが勝つが。上位報酬ということはこれを使って活躍したら彼女の報酬を奪うことにも……? うーん。
「それでも気になるならフレンドになろう? フレンドになったら位置がわかるから奇襲しに行くよ。そうしたら僕に恩を感じるのは馬鹿馬鹿しくなるよ。それにまた戦いたいし」
「ええ……」
馬鹿馬鹿しくなるほどの奇襲は受けないと思うが、「戦いたい」が本音のような気がしたため頷いた。私も彼女との戦いは楽しかった。
その後、このゲームについて色々と教えて貰った。説明書には書いていないような仕様がいくつもあるらしく、時間がある時に攻略サイトを見ることを勧められた。貰った薙刀を持ち武器に設定し、殺された際に奪われることも防止しておく。
「イベントではさあ、たまーに効果が二個以上ついている武器が出て来るんだよね。沼だよ……?」
彼女が昏い目をして言った言葉だけが妙に印象に残った。沼……?