6 決闘①
警戒しつつ町を歩いていると突然「プレイヤー:Asahiに決闘を申し込まれました」というアナウンスが聞こえた。決闘というシステムは色々な条件があったはずだ。その条件のうちの一つが申し込みたい相手を視界内に入れることだった。どこにいる……?
「ここだよ」
肩を軽く叩かれた。振り返ると可愛らしい女の子がいた。声もかわいい。……命拾いした。彼女がそのまま私に襲いかかってきたら殺されていた。
彼女の頭上にはAsahiと書かれている。彼女が決闘を申し込んだAsahiさんで間違いないだろう。決闘システムは興味があったからやってみたいが、始めたばかりの私は差し出せるようなものはない。彼女は良い装備を持っているようだから、見合うものを出せる自信がない。
「あの……。私、渡せる物がないです……」
「気にしないで欲しいな。ただ僕が君と戦いたいだけだから」
彼女は悪戯をしている子供のように笑う。彼女は戦いたいだけと言ったが、決闘の対価として薙刀のレア装備を提示していた。戦いなら決闘でなくてもできるのに、賭ける物が大きすぎないか? 彼女は「本気を出してもらうため」と言っていたが……。大したものを賭けられない自分に申し訳なくなるが、彼女は刀使いだから気にしないでと言ってくれた。
「……君は戦う前から僕に勝つ気でいるの? 傲慢だね」
「……すみません、撤回します。もちろん負けるつもりはありませんが」
「ふふ、こちらこそ。楽しくやろう?」
彼女に返事をする代わりに決闘を受け入れる。差し出すものは剥ぎ取っていた傷薬だ。やはり明らかに釣り合っていないが。カウントダウンが始まった。
「そういえば、決闘って他にも条件があったはずですよね……?」
「見届け人のこと? ならあっちにいるよ」
彼女が指差した先には血塗れでぐったりとした何人かのプレイヤーがいた。見届け人にするために気絶させて引っ張ってきたらしい。その中には見覚えのある人も混じっていた。巻き込んでしまって申し訳ない。
カウントダウンが終わると専用フィールドに移動した。彼女に連れてこられたプレイヤーは傷が治った状態で客席と思われる場所に座っていた。
「やっちまえ! えーと……夜霧ちゃん!」
「俺たちの無念を晴らせ!」
先ほど無理矢理連れてきたせいなのか、Asahiさんは恨まれているらしく、観客の多くは私を応援している。
「オッズは夜霧が3倍! さあどうする!?」
賭け事を始めている様子を見て、先ほど申し訳ないと思ったことを撤回した。……このゲームをやっている人だから多少の理不尽には慣れていそうだ……。