22 船旅②
京都の北にある港に着いた時、そこには既に二人のプレイヤーがいた。一人は上裸に袴を着て自身の筋肉を自慢するようなポーズを取った男性で、もう一人は胸にさらしを巻き上を開けさせた太刀を持ったグラマラスな女性だ。
「お誘いありがとう!」
「六人か、良いんじゃないか?」
中身の性別は逆のようで、大男から高い声が、女性から低い声が聞こえて少し混乱する。
「私はトリット」
「俺はシマネ」
「「どっちか分からなくなるって覚えて!」」
「こちらは左からシュウ、夜霧、Yuraです。全員船旅は始めてだそうです」
軽く挨拶を済ませると、りゅーさんは船を海に出した。船は元寇の時の中くらいの船のサイズで、六人で乗るには広いような気がしたが、船を見ると人が既に乗っていた。
「船を動かすのは専用のNPCなので、プレイヤーは戦うだけです。今回は」
次回があればプレイヤーで動かすと言っているのを聞かなかったことにして、船に乗り込む。
「帆を上げろ! 出航だー!」
シマネさんが出航の合図をすると、船員達は忙しく動き出し、ゆっくりと船が進み始める。
「結構ゆっくりなんですね。船はあまり乗らないので楽しみです」
「安心してください。すぐに速度が上がりますよ」
目を見開き、隣のりゅーさんを見る。
「前を見ないと危険ですよ。ほら、ちゃんと掴まってください」
戸惑いながら手すりに掴まった時、ぐんとスピードが上がった。風が強い上足元が不安定でうまく立つことができない。りゅーさんはというと何かに掴まることもなく立っていた。それも弓を持って。
「こんな、スピードで、何かに、ぶつかったり、しないん、ですか!」
「それを回避するのがトリットの役目です。ちなみに、耐久は強化せずに加速に強化リソースを使い切ったのでぶつかったら大破します」
「え!? 危険ですって!」
「ゲームですから、楽しむべきです!」
彼はそう言って手すりの上に立ち、そのまま弓を射る。矢じりに爆発物をつけていたようで、遠くで爆発音がした。
「危ない、ですよ!」
「海賊を放置するよりは安全です」
見ていて怖いが、慣れているなら心配は要らないかと思っていると、「あ」という声が聞こえ目の前から消えていた。
「りゅーさん!?」
急いで下を見ると彼と目が合った。先ほどは慌てていて気が付かなかったが、手すりに足を引っかけていたらしい。
「ドッキリ大成功?」
「心臓に悪いのでやめてください」
りゅーさんの足を勢いよく引っぱり船の上に引き上げる。乱暴になってしまい、船の上に叩きつけてしまった。減ってしまったHPを見て申し訳なく思ったが、ドッキリなんてやった方が悪いと考え直した。




