15 五条大橋④
プレイヤーネーム「夜霧」
タイム 0:56
ダメージ 102%
投票順位 !投票がありません!
再戦の際は速攻を意識して勝利をもぎ取り、無事に伸縮を取り戻すことができた。負けた場合に弁慶から得られる武器は前回獲られた武器からランダムで選ばれる仕様で助かった。
楽しかったが、とても疲れたから二度目は嫌だ。ベストオブヨシツネにエントリーするとアイテムが貰えるから、この戦いでエントリーしておこう。
さて、他にはどんな人が参加しているのかを見に行きますか!
弁慶に勝負を挑まれない場所に立ち、投稿された動画を見る。
色々な投稿があったが、個人的に一位候補は三人。正統派でタイムとダメージがともに高いあいうえおかきさん、武器を使わず殴り勝ったシュウ、鞭のようなものを巧みに操り弁慶に攻撃をさせなかったむっつーさんだ。前回までのイベントでもこんな風に工夫を凝らした戦いをしていたのだろうか。
それに引き換え私の使用武器は薙刀で、なんとなく地味。分かりやすい強さも見た目の良さもない。元から分かってはいるけれど、私が投票を集めるのは難しそうだ。
まだエントリーしていなかったり、満足のいく戦いを投稿できていない人がいたりするかもしれないが、今のうちに投票しておこう。
「あ! 一週間ぶりですわね!」
顔を上げると、こちらに向かって御破さんが駆け寄ってくる所だった。彼女も五条大橋のイベントをする所なのだろうか。
「夜霧さんはこれから弁慶退治ですの? それとももう帰りかしら?」
「はい。ついさっき倒したところで……。そちらは? ベストオブヨシツネに選ばれたらもう参加資格はないと聞きましたが」
「お疲れ様です、夜霧さん。私はこれから弁慶退治ですわ。エントリーは不可ですが、討伐報酬自体はありますの。貰わなきゃ損ですわ」
最後の一言でお嬢様キャラの仮面の中身を見せてくれたような気がして、少し嬉しくなってくすりと笑う。
「ではそろそろ行きますわ。夜霧さん、あなたの戦いを見るのを楽しみにして、弁慶をぶっ飛ばしてきますわ」
私は彼女に苦笑いを返し、手を振って見送る。
「今週はもうオンラインはやらなくてもいいや」
期待に応えられるような戦いでないことが申し訳なくて、彼女と別れたあとすぐにゲームをログアウトした。




