13 五条大橋②
「ふん……小賢しい真似を」
「どうしました? 息が切れてますよ。その程度で千本目だなんて大口を叩いていたのですか?」
私の煽りを弁慶は笑い飛ばす。少し不自然だったが強がっているだけだと結論づけ、少しずつ弁慶の体力を削る。もしかしたら、彼はこのまま続けたら体の小さい私の体力が先に尽きると思ったのかもしれない。そのあたりはゲームの仕様のおかげだな。
考え事をしつつ攻め続けていると、深く攻撃が入った。疲れて動きが鈍ったのだろう。
「体力が尽きました? このまま……!」
弁慶は腹を斬られかかっているにも関わらず笑っている。最後まで戦いを楽しむなんて戦闘狂だ。
「この、まま……?」
薙刀が進まない。まさか筋肉で止めたとでもいうのか。まずい、薙刀がピクリとも動かなくなった。替えの武器は置いてきたから持ち替えることも不可能だ。私は素手でも弁慶に勝てると思うほど自惚れていない。このままでは負けてしまう。
「軽い。その程度でこの肉体に傷をつけることは叶わん」
彼は嘲笑うかのように言う。じりじりと位置を変えつつ私は彼を睨みつける。
「このままで終われない! 伸びろ!」
橋から落ちてくれれば万々歳。隠していた能力を使って不意を突く。弁慶はすぐ力を抜いたため、橋の下に落下することはなかったが、すぐに縮ませることで薙刀を手元に戻す。
「ぐっ……。その薙刀、なかなか面白い力を持っているな。ますます欲しくなった」
「渡すものか!」
弁慶は耐久力が桁違いだ。そのため軽い攻撃は受け止められ、カウンターを食らってしまう。思い返せばベストオブヨシツネたちは部位破壊や投擲、不意打ち、川に落とすといった高威力の攻撃をしていた。
「少しはマシになったようだな! 名乗れ!」
一転して当たれば致命傷を与える攻撃に切り替えた私を見て彼は喜びを顕にした。命を取り合う戦いがよほど好きなのか。
攻撃を避け、そのまま宙返りをして距離を取る。
「冥土の土産に答えましょう。私は夜霧。薙刀使いです」
「困ったな。今から土産を貰っては腐ってしまう」
「傷む前に送りますからご安心を」
軽い言葉の応酬の後、再び武器を構える。……第二ラウンドの開始だ。




