4 京都へ
このゲームはオープンワールドゲームで、プレイヤー自ら町を作ることも可能だが、すでにある町も当然存在する。それが京都だ。私がよく活動している鎌倉の町はゲーム初期にメインストーリーで作ったらしい。
京都にはあらゆる店があり、特殊イベントも多い。今回のようにイベントの開催地にもなることからプレイヤーならよく訪れる町だ。私は最初のイベントが元寇で、かつすでに鎌倉が発展していたから必要性を感じず、行っていなかったけれども。
基本的に馬移動になるが、幕府誕生後はもう一つの選択肢が生まれる。それが六波羅探題だ。要は仕事として京都に行くということ。時間拘束はあるが、安全かつ速く京都に行くことができる。
仕事内容は京都の治安維持と謀反を起こす武士の粛清だ。これらの対象にはプレイヤーも含まれる。
この方法を選んだのは多少面倒でも一度ぐらいは幕府の人間として仕事をしても良いかなと思ったからだ。元寇も幕府の武士としての仕事だけど、少し違うような気がする。
「京都での勤務を希望するか。では、幕府への忠誠と実力を測るために簡単な試験を行うがよろしいか?」
早速城へ向かうと将軍との会話が始まった。末端武士が話せる相手ではないが、それはそれ。
将軍は歴史上の人物とは別人で、名前が文字化けしているらしい。……プレイヤーの悪ふざけの被害者なのだろう。
「はい。お願いします」
試験はオフライン版とほぼ同じだったため楽々クリア。ステータス欄を確認すると称号が増えている。
「準備は終わったか?」
「はい」
「よろしい。では京都へ向かいなさい」
視界が暗転し、明るくなると目の前に一人の武士がいた。
「お前が新任の武士か。なかなか優秀らしいな?」
彼は私を上から下までじっくりと見た。そして嫌な笑みを浮かべながら「最初の仕事だ」と言った。
「最初の……?」
オフライン版ではまず治安維持のためのパトロールから始まったのだが、このような言い方はされなかった。そもそも上司もおじさんではなく好青年だった。
「とある武士が反逆を企てているとの情報がある。お前にはそれを鎮圧してもらう」
「はっ……はい?」
最初から重大任務を言い渡されて困惑する私に、彼は「優秀なのだろう?」と嗤った。




