21 元寇⑧
「レベル六……クリアしたかったですね……」
何度目かの失敗の後、地面に倒れ込みながら呟いた。何度か惜しいところまで行ったため余計に悔しかった。
「絶好調じゃないと厳しいよ、あれは。あーあ。レベル六を二人でクリアしたら能力二つの武器が貰えると思ったのに」
「レベル五は二人だとランダムですか?」
「多分ね。今日はありがと。これで欲しい装備が手に入りそう」
「装備? どんな効果なんですか?」
「効果はないよ。五千ポイントの『静御前セット』っていうコスプレアイテム」
コスプレアイテムは他にも色々な種類があるらしい。中にはアニメコラボの世界観に全くそぐわない装備もあるようだが、基本的には鎌倉時代の人間をモデルにしているらしい。元寇イベントでは毎回何かしらのコスプレを交換できるらしく、今回は静御前の番だ。
「効果もないのに動きにくい服は着ないのかと思っていました、意外です」
「効果についてはちょっとは期待しているけど。動きにくさは慣れれば気にならないよ。現実とは違うからね」
彼は「他の装備も見せようか?」と言ってくれたが昼食の時間が迫っていたため遠慮した。
二日目夜の元寇は二度目の元寇をイメージしているようで、壁が作られていた。法螺貝の音が響き、「神風襲来まで耐えろ!」とテロップが表示される。時間制限のある防衛戦だと思ってのんびり弓を構えて射る。
船が見えてくる。昨日と比べて明らかに数が多かった。これは倒し切れそうにないからここで待機するべきだと思い直したが、他のプレイヤーたちは違ったようで我先にと海へ向かう。何人かは船に飛び乗れずに海に沈んでいったが。タイミングを逃した私はプレイヤーたちが競うように敵を殺す様を見ることしかできなかった。
終わった後に聞いた話によると、二日目の元寇は失敗時は神風によって敵が帰るため、ペナルティーがほぼないに等しく、短い時間でポイントを稼ぐためにも船に乗り込むのが効率が良いそうだ。陣地を守る必要がないため、昨日は陸に残っていた慎重派なプレイヤーもみんな攻め込んでいたとか。
苦手な弓で頑張ろうとした結果、私は全ての順位でランク外となってしまった。しかし前日のイベントのポイントと、レベル四までのソロクリアとレベル五のデュオクリアのおかげで四千ポイントほど手に入った。クリアこそしていないが、レベル六の挑戦でポイントが貰えたのも大きいかもしれない。
三千ポイントで籠手を貰う。能力こそついていないが、殴った時のダメージが増える隠し効果もあるため選んだ。手持ちが少ないため店売りのものを買う余裕などなかったからありがたい。まずは強くならないと奪われてしまうから、可愛い着物は次のイベントまでの楽しみにしておく。
余ったポイントで記念アイテムを貰って、端数はお金に変えた。ポイントは持ち越せないそうだから変えておくに越したことはない。初めてのイベント、楽しかったな。




