20 元寇⑦
楽しみにしていたのか、目覚ましよりも早く起きてしまったため、昨日見忘れた元寇敗北の動画を見てみる。鎌倉に戻されて将軍の説教を受けるだけの動画だった。叱られた後は国から元寇イベントの敵を追い出すまで緊急クエストが発生するらしい。そのクエスト中はイベント含めて他のことが一切できなくなってしまうから、楽しそうだけどデメリットが大きいように思う。
朝早い時間だからかログインしても人がほとんどいない。イベント中だからかもしれないが平和だ。朝のゲームも良いな。これは違うが、時間加速のあるゲームでは出勤前に遊ぶ人も多いと聞く。
「おはよ。レベル五で良い?」
「おはようございます。大丈夫……ですがその前に新しい武器を試したいです」
「何度失敗してもデメリットはないからレベル五でいいか。新しい武器ってどんなの?」
彼から送られてきた招待を承諾して、レベル五がスタートする。
「『伸縮自在』という能力です。知っていますか?」
「聞いたことないな。使ってみてくれる? アクティブスキルっぽいから、口に出すとやりやすいかも」
「伸縮。えっと……伸びろ」
伸びろと言った瞬間薙刀の柄が素早く伸びた。元の二倍程度はあるだろうか。伸びた分、重量も増えているようでかなり重い。両手でも振り回すのは難しそうだ。
「縮め」
薙刀が元のサイズまで戻る。もう一度行ってみても変化はない。元のサイズより縮めることはできないらしい。
「それって、先端を持って伸び縮みしたらどうなるの?」
「やってみます。伸びろ!」
持っている部分より後ろが伸びたらしく後ろが重くなった。縮めと言うと、体が後ろに引っ張られた。
「その状態で薙刀を少し傾けて……そう、それで伸ばして」
言われた通りにすると、伸びた柄が地面を叩き、その反動で体が宙に浮いた。バランスを取るために薙刀を縮める。
「そのまま船に乗り込め!」
「え、ええっ!?」
空中では矢を避けることは難しい。薙刀を振り回したら上手く船に着地できないような気もする。
「サポートもできるから安心して」
彼はそう言いながら矢を矢で撃ち落とした。……人間か?
彼のサポートのおかげで無傷で船まで辿り着くことができた。挨拶代わりに薙刀を振るう。
「船頭を狙え!」
海岸から彼が叫ぶ。「分かった!」と返事はしたがどこにいるのか分からない。周りを見回しながら敵を倒していると「甲板にいるやつ!」と教えてくれた。その彼はというと、小舟を赤く染め上げていた。戦いながら、こちらの状況をうかがっていたらしい。
甲板の敵を全滅させれば良いなら特に考えることはない。ただ戦えば良い。大陸特攻の能力の武器に持ち替えて近づく敵を薙ぎ払った。




