2 経緯
私が初めて遊んだVRゲームは「かまくらいふ」という一人用のゲームだった。簡単に言うと鎌倉時代の武士になって源氏の天下統一を手伝ったり、幕府を乗っ取ったり、農業に革命を起こしたり、ジェノサイドしたりできるゲームだ。鎌倉時代だから倫理観はゆるゆるで、残酷な描写がかなりあり、四肢も普通に飛ぶためR指定されている。自分でも初めてには適さないゲームだと思ったが、システムが分かりやすくて薙刀を使えそうなゲームが他に見当たらなかったのだから仕方がない。
現実では切り結ぶことなどできないが、このゲームではできる。習っている薙刀の腕試しとして遊んでいたら意外にもハマってしまい、遊び尽くしてしまった……流石にジェノサイドはしなかったが。
そんな折、このゲームにオンライン版があることを知った私は嬉々としてオンライン版も購入した。オンライン版では一人で遊ぶストーリーは無いに等しいと聞くが、代わりに他のプレイヤーと協力して自分たちだけの鎌倉時代を作ることができる他、他プレイヤーとの対戦――PKというものもできるらしい。また、オフラインにはなかった新しい武器や全プレイヤーが協力して行うイベント、コンテストなど長く楽しめそうな要素がある。オンラインショップの評価が低かったのが気になるが……低い評価を付けた人間はおそらく殺伐とした雰囲気に馴染めなかったプレイヤーだろう。その点私はオフライン版をプレイ済だから問題はない。
キャラクターの見た目はオフライン版のものを使い回し、初期武器は薙刀に設定する。初期武器はオフライン版になかったシステムだ。最初から使い慣れた武器が使えるのはありがたい。オフライン版のストーリーモードでは最初は素手で平氏を倒していたからな……。あの時は初めてのゲームにうきうきしていた私でも虚無感に襲われた。「かまくらいふ」を始めたての頃を思い出しつつ完了を押し、設定を終える。開始地点は鎌倉と京都が選べるが、「かまくらいふ」だから鎌倉にしておく。
ロードが終わると視界が開けた。両脇には民家や店が見える。また、立っている道はある程度舗装されていて平らになっている。町から始まるのは良いな。
アイテムボックスから薙刀を取り出してみる。基本操作はオフライン版と同じようだ。
薙刀をいつでも振るえるように持つ。たとえ町でも油断してはならないからだ。
「死ね!」
なぜなら敵はどこからでも襲ってくるからだ。これがチュートリアルだろうか? 「かまくらいふ」らしい。かなり不親切だが世界観の説明にぴったりだ。
「1 プロローグ」に続く