14 元寇①
「そういえば元寇イベントって夜からなら、朝からここに来る必要はなかったですね……」
ケインがだるそうに言うと、Asahiは「そんなことないよ」と返した。全プレイヤーが参加できる大きなイベントは夜から始まるが、個人やフレンドで参加できるものもあるらしい。
「レベルは十まであって、少人数クリアで報酬が増えるよ」
レベル三のソロクリア報酬は大陸特攻の武器らしい。私はもう貰っているが、ケインは夜までには欲しいだろう。
「夜霧、ここでお別れですね! 武器を手に入れたら会いましょう! レベル三をさくっとソロ討伐してきますよ!」
「最初からソロはキツいよー」
Asahiの声に耳を傾けず、ケインは消えてしまった。
「初めはやはりレベル一からやるべきでしょうか」
「夜霧ならレベル二でもいける気がするけど。一回にかかる時間は短いから好きな順で良いと思うよ」
「ケインがいないからレベル一からステップアップしようと思います!」
「一分もしないうちに帰ってくると思うけど。……頑張って。レベル四ソロクリアしたら、レベル五を一緒にやろう」
Asahiがいなくなったのとほぼ同時にケインが帰ってきた。
「む、無理だろ……!」
彼は戻ってくるなり項垂れた。
「もし良ければ一緒にやりませんか……。せめて……そう、立ち回りに慣れるまでは……!」
「良いですよ」
「救世主……!」
「大袈裟な……」
ケインとフレンドになる。メニューを開き、イベントをタップ。フレンドと一緒を選択し、レベルをまずは一に設定。ケインを誘う。
「まあ一からやるのが順当ですよね……」
彼は苦笑いしつつ「いきなり三は無謀でしたね」と言った。
法螺貝の音がどこからか聞こえた。
「開戦ですね、弓を持ってください。撃ちますよ」
海から一艘の小舟がやってきた。当たればラッキーくらいの気持ちで舟の方を射る。すると視界の端に数字が映った。
「右上の方に数字が……」
「え!? あの距離で当てたんですか!? 凄いなあ」
「これ、撃破数なんですね。あ、設定から非表示にできる……」
邪魔だったから消しておく。私がシステムを弄っているうちにケインが敵を全員倒してくれたようで、また法螺貝の音が聞こえた。
「撃破数六です、そっちは?」
「二です。偶然二人同時に撃破していたみたいです」
「呆気ない……。でも次はレベル二ですね、少しは手強くなっているはずです!」
元寇は陸に上がられる前にどれだけ仕留められるかが大事になってきそうだ。弓はあまり得意でないのが申し訳ないが、全力を尽くそう。




