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第3話「ギャギャギャギャッッッ!」

■登場人物

「タナーカ」

転生者、チートスキル~支配の邪眼~を持つ、所持品ブリーフ一枚。


「ナビ子」

タナーカのナビゲーター、インプ。紫色のロリ。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはっっっ!……はぁはぁはぁはぁあっっ!」

 こんな時は悲鳴でも上げながら逃げるものだとタナーカは思っていた。

 実際には無言で息を切らして必死に走るしかない。

「ギャギャギャギャッッッ!」

「ギャーギャーギャギャー!」

 待て待て人間! 食っちまうぞ!

 おそらく小鬼(ゴブリン)達はそんな事を叫んでいる。

 小鬼(ゴブリン)の身体は緑色で小さく歪んでいて、その割に無骨で大きな手をしている。

 自身を追いかける小鬼(ゴブリン)の数が二体か三体かそれを確かめる余裕すらタナーカにはない。

 先頭にいる小鬼(ゴブリン)は酷く錆びついた鉈を振り回して、その直ぐ後ろの小鬼(ゴブリン)が持つ棍棒は所々どす黒い。

 血か何かがこびり付いて変色したのだろう。

 小鬼(ゴブリン)達は子供が足を必死にバタつかせる様な不格好な走りでタナーカを追う。

 しかし大人の歩幅で必死に足を動かす彼にすぐさま追いつける程ではない様だ。


「…………! ……ぐ……ぐ……ぐぅぅぅうぅっっ……ぜぇぜぇ……」

 タナーカは心臓が破裂しそうな感覚に顔を歪める。

(もしかして、じゃれてるだけ? 止まっても襲われたりしないんじゃ……?)

 血中の酸素が無くなり思考も鈍ってくると、そんな都合の良い考えも浮かんでくる。

 脇腹が痛み、足が縺れる。

(もう限界だ!)

 タナーカが一瞬足を止めかけた瞬間。


 ヒュン……ザシュッッ


 真後ろから投げ放たれた鉈が頭を掠め、地面に突き刺さった。

(殺される! 食われるっっ!)

 彼は思い出す、ほんの数分前に小鬼(ゴブリン)達に出くわした時の恐怖を。

 刃物を投げて友好を示すなんてある訳がない。


「助けてくれええええええええっっっ!」

 ここぞとばかりにタナーカは悲鳴を上げる。

 助けなど来ない、彼はそんな事は理解している。

 周りには何もない、誰もいない。

 見渡す限りの草原。

 草原の先には森。

 どう見ても、どう考えてもファンタジーな自然だけが広がっているからだ。

 助けなど来ないだろう。

「ギャッギャッギャッギャッ!」

「ギャーギャギャーギャ!」

「うあああああああっっっ!」

 スタミナも限界、足も鉛の様に重い。

 徐々に狭まるタナーカと小鬼(ゴブリン)達の距離。

「なんなんだよ! なんなんだよぉおおおおおおお!」

 彼は涙を流していた、小便も漏らしているかもしれない。

 異世界って無双できるものじゃないのか?

 こんな雑魚っぽいのに殺されるのか?

 武器を向けられるのがこんなに恐ろしいなんて。

 そんな事を考えながら泣いて走っている。

「ギャギャギャギャギャギャ!」

「ひぃぃぃぃぃぃ! おたすけ~~!」

 目と鼻の先までタナーカに迫った小鬼(ゴブリン)達が一斉に飛び掛かると、

 彼はその襲い来る気配と腐った生ごみの様な小鬼(ゴブリン)の体臭を感じた。

(捕まる!)

 タナーカがそう覚悟した瞬間、突如目の前の地面が消失する。

「……うそだろっっっっ」

「ヒッギャア⁉」

「ギャオ!」

 追いすがって来た小鬼(ゴブリン)数体と共に、切り立った崖からの落下(ダイブ)

 蹴る筈の大地を無くし空を切る足、その拍子に彼の体勢は大きく崩れた。

「うああああああああああああっっっっっ!」

 睾丸が腹に埋もれる竦む様な感覚を存分に味わいながら、タナーカは頭から落ちて行った。

「ギャアアアアア!」

「ギャギャアアアアア!」

 小鬼(ゴブリン)達を道ずれに。

 

 ***


「……げぼぉ!…………ゴフぅゴフゥ……」

 タナーカは川辺を這いずりながら水を吐いた。

 川に浸ったままの下半身が陸に上がるまではと、腕で地面を掻く。

 水流に攫われない場所まで移動すると同時に彼は仰向けになった。

 這いずる際に小石と砂が腕に刺さり痛みを感じていただろうが、今の彼にとってそんな事は問題ではないだろう。

「し……死ぬかと思った……う……うぐぐぐぐぐぅぅぅぅ」

 彼は自分の顔を腕で覆いながら嗚咽を上げた。

 頭を割られる、喰われる、落下死、溺死……全て未遂だったとは言え、様々な臨死体験を経験したのだ……無理もないだろう。

 小鬼(ゴブリン)達に追いかけられ飛び出した崖の真下には大きな川が流れていた。

 そのせいで潰れたトマトの様になる事は無かったし、彼が裸だった事も幸いした、服が水を吸って泳げないという事態に陥る事なく川の流れに乗れたのだ。

 小鬼(ゴブリン)達がどうなったのかは解らない、おそらく沈んだのだろう。


「だいじょうぶなのだ?」

 タナーカの頭上から声が聞こえて来た。

 彼は顔を塞ぎ泣いていたので、その声の主が誰の者なのか解らない。

「ひぃぃぃぃぃぃぃい!」

 タナーカは悲鳴を上げながらゴロゴロと転がった。

 同時に身を守る様に頭を抱えるが……目の間には角と羽が生えた少女が一人いるのみであった。

「………………うえ……なんだ……ナビ子か……」

 タナーカはそう言いながら涙と鼻水で汚れた顔を拭った。

「今まで何処行って……いやそんな事よりお前は大丈夫なのか? 怪我してないか⁉」

「だいじょうぶなのだ! あたしは導きの精霊(ナビゲーター)だから何時でも姿を隠す事ができるし、何時でもタナーカ様の傍に現れるのだっ」

 ナビ子は胸を張りながらそう言った。

「……そ、そうか……それなら……良かった……」

「しかしタナーカ様が崖から落ちた時はどうなるかと思ったのだっ、生きてて良かった!のだ!」

 その前に緑色の臭い二足歩行の生物に追いかけられてたけどな……タナーカは心の中で思った。

 同時に安堵もしていた。

 武器を持った得体のしれない魔物(モンスター)に出くわした時、彼は思わず逃げ出していたのだが、その際にナビ子の姿を見失い探す事もしなかった。

「すまない……お前を放って逃げ出して……」

 タナーカの言葉にナビ子はキョトンとした表情で答えた。

「どうしたのだ? なぜ謝るのだ? あたしは《姿隠し(フェーズシフト)》も出来るし、小鬼(ゴブリン)程度なら戦っても問題ないのだ」

「ん……そうなのか?」

「そうなのだ、この辺りの小鬼(ゴブリン)なら良くてレベル3くらいだから……雑魚なのだ。 あたしのレベルは20はあるのだ!」

 ナビ子は両腕を腰にあて、その小さな胸を更に張る。

 その得意げな姿にタナーカは驚くと同時に沸々と怒りが沸きあがるのを感じた。

(雑魚だって……? ホントに殺されるかと思ったんだが?)

「そもそも小鬼(ゴブリン)は強そうな相手や武器を持った人間は襲わないのだ、タナーカ様が弱そうだし裸だから襲ってきたのだ! きっとそうなのだ!」

 ケラケラと笑うナビ子。

 タナーカの怒りは頂点に達する。

「おいこらぁあ!」

「うぎーーーーなんなのだぁああああ!」

 女の子を殴る訳にはいかないが、その程度には腹は立っている。

 タナーカはナビ子の両の頬をつねり始めた。

「まじで殺されるかと思ったんだぞ! 雑魚だってんなら助けろよっ!」

「はなしてなのだー! あたしは導きの精霊(ナビゲーター)だから! 直接の手助けはできないのだっ!」

「なんだそりゃ! なぁああんだそりゃ! 道案内はしてくれたじゃねーか!」

「それは導き(ナビゲーション)だから、してもいいのだ!」

「なんだお前! お前は地図代わりにしかならねーのかよっ!」

「それだけじゃないのだ! 離してなのだー!」

 タナーカはナビ子の頬を離さない。

「いーやっ離さないね。 大体お前が一番近くの村はこっちだって言うから付いて言ったんだろうが! あんなの(ゴブリン)が出るなんて聞いてねーぞっ!」

「ひぎぎぎぃぃ! 安全な道がいいか、近道がいいか、タナーカ様に選んで貰ったのだ! 近道を選んだのはタナーカ様なのだ!」

「そんなの聞いてねぇ!」

「言ったのだぁあああ!」

 確かに言われた気がするし、答えた気もするなと、タナーカは思った。

 ナビ子の頬をつねる力が多少緩むが、彼の怒りは収まらない。

「はなすのだぁあああ!」

 ナビ子はその小さな腕で押し返してくる。

 体躯の割には力強いが、抑え込めない程でも無かった。

 ぽこぽこと蹴りつけても来るが痛くも痒くもない。

「あーーん? ……レベル20が何だってぇ? 効かねぇなぁ!」

 導きの精霊(ナビゲーター)はあくまでも転生者を導く事が使命である。

 転生者への直接の手助けはせず、反面邪魔もしない。

 転生者に対しての危害を加える事も禁じられている為、ナビ子の反撃はか弱い。

 暫くの間、タナーカとナビ子の喧騒は続いた。


「へーくしぃぃぃ!」

「うううううううーーー」

 タナカは体の芯から来る寒さを感じてくしゃみをし、その拍子にナビ子の頬から指を離してしまう。

 ナビ子はすぐさま距離を取り、引っ張られ広がった頬を押し戻すように両手で抑えた。 


「……寒い……いよいよヤバいな……ナビ子……村はどっちだ?」

 汗を掻き、川に落ちたのだ……しかもパンツ一丁で。

 タナーカは肌が粒立ち、身が震えてくるのを感じていた。


「…………」

 ナビ子はべそをかきながら無言でタナーカの後方に指を刺した。

「えっ……?」

 タナーカは振り向きナビ子が指した先を見る。

 視線の向こうには確かに村落が在る。

 村全体がぐるりと森に囲われている様だ。

 不規則に並ぶ赤い屋根、木々の合間には白い壁も見え隠れする。

 丘に沿っているのだろうか?

 下から上に向かって段々になって建てられていて、一際大きな建物は最も高い位置に在る。

 ナビ子は少しイジけた様な口調で言った。

「すぐそこなのだ……あそこがファーストテイル村なのだ」 


目標は週一更新です、誤字脱字は気づき次第修正します。

暫くは加筆修正多めになりそうです、ご容赦ください。


暇のお供になれば幸いです。

よろしくお願いします!

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