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ウサギの思案


「では、リリアこれからよろしくね。遮蔽を解くよ。」



 パチン 


 乾いた音がして、周囲の音が戻ってきた。



 バルの横にいる執事らしい人物が私に気付いてにっこり笑った。



「おや、主、ずいぶん可愛らしい方ですね。」



 可愛らしいなんて照れるわ。でも、主って?


 リリアにはそれから先の会話が入ってこなかっ


た。


 なぜなら、ヴィオレッタ様の予言書にあったリリアの仮の婚約者は、この屋敷の主だと言っていなかったか。 

 確か、今日一度会えば手厚く保護してくれるけれど、そこに愛など存在しないと。

 そして、リリアの死後、リリア以外の誰かに心奪われると。


さっきまでの高揚した気持ちがすーっと冷え込んでいくのを感じた。

 

 予言の書にあったリリアの婚約者とシュバルツが同一人物だとすると、将来私の番は私以外の誰かに心奪われてしまうの?


 しかも、今日一回しか会えないまま、自分は亡くなるの?


 嫌だわ、耐えられない。


 寿命の短いウサギ獣人は何事にも執着心が薄い。

しかしながら、その唯一の例外が番である。

 か弱い種族であるゆえにその見た目とは裏腹に時に狡猾に立ち回り番を虜にしてしまう種族なのである。


 シュバルツを誰かに取られるのは絶対に嫌なのだ。


 ただ目下の目標は、今日しか逢えないなんて事を絶対に覆さねばならない。


 物思いに耽っていると、執事がリリアに声をかけた。



「リリア様、別室に美味しいケーキがございます。ゆっくりお過ごしください。」



 執事が私ににこやかに微笑みかけた。

まあケーキだなんて、なんて素敵な響きなの。

 質素倹約を旨とするラシーヌ家では、リリアのお誕生日にしかケーキはでない。

 先日のお茶会では、緊張しすぎて一口も食べることができなかったのだ。

 大好きな人参ケーキだといいなあ。


 しっかり、頭に栄養を補給してこれからの作戦を練らないと。



「主、私はお茶会の会場に行きますので、リリア様を手厚くもてなして差し上げて下さいね。」



 え?シュバルツと一緒にケーキを食べるの?嬉しいような、緊張するような。

 ケーキはいつか食べれるわ!でも、シュバルツは今日限定!


 今日はシュバルツと絶対に仲良くなって、また会う約束をとりつけるのよ。

 今日一回だなんて、他の人に心奪われるなんて赦さない。

 絶対振り向かせてみせるわ。


 リリアは心の中でガッツポーズした。



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