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彼は堕ちる

 

 不思議そうな顔でしきりに頭を触っている番が可愛すぎる。

 数分前まで番に出逢う事を恐れ逃げようとしていた自分の変わり身の早さに苦笑しながら番の頭に触れる。



「君の耳やしっぽは視覚だけでなく物質としての質量すら私の魔術で無くしている。それに君自身すら触れることは叶わないんだよ。」



 ますます混乱した顔になる番が可愛すぎる。





「触る事が出来るのは、魔術を掛けた私だけだよ。」



 うっとりするくらい柔らかい番のうさ耳を撫でる。この感触を味わえるのが自分だけというその優越感が半端ない。




 努めて優しく穏やかに番に話しかける。不審者と思われたら色々ヤバい。



「ありがとう。」



 番からのその素直な敬意と感謝の言葉がシュバルツの胸に突き刺さる。疑うことを知らぬその無垢な愛らしさにシュバルツは意を決した。




 番の手をそうと取った。そうして番の前に片膝を付く。



 シュバルツは番を怖がらせないように優しく微笑み掛けた。




「私の名はシュバルツ・ウォルトル。シュバルツと呼んでね。貴女の名前を聞いても?」



 怖がられないよう精一杯にこやかに名前を聞く。正式な名前をお互いが知る事をが必要なのだ。





「私は、リリア・ラシーヌです。」



 可愛い。声も名前も可愛いぞ。



「リリアか。可愛い名前だね」



 頬を赤らめこくんと頷くリリアが可愛すぎる。



 にっこり笑ったつやつやの薔薇色の頬をつつきたい。


 身悶えしそうな気持ちを押さえつけてリリアに向き直る。



「じゃあ、リリア。」



 彼女の瞳を見上げる。うっとりとこちらを見てくれている彼女には悪いが、この角度が一番魔力効率がいい。



 彼女の瞳の奥を見ながら魔術を構築する。


 構築した魔術に言葉を載せる。



「私、シュバルツ・ウォルトルはリリア・ラシーヌを生涯ただ一人の番として我が命を分け与え共に命尽きるその日まで愛する事を誓う。」


 彼女に拒絶の感情はない。子供同士のたわいもない軽い誓いだと思っているんだろうが、違う。


 これは私の命の半分を削って彼女に与える魂の盟約だ。軽く聞き流してくれ。


 成人して分別がつけば、この永遠にも等しい寿命を受け入れる事に躊躇いを感じ受け入れる事に畏れを抱くだろう。


 私は母の轍は踏まない。


 番に真実を告げる気はない。愛おしい我が番リリア、ゆっくり私の元に堕ちておいで。


 大人になって分別がつくまでにyesの返事を貰ってみせよう。



 魔術が完成した。彼女の瞳の奥から魂の奥深くめがけて打ち込む。


 日々彼女の身体に根を降ろしていくその魔術の発動条件は、彼女の発情。


 ただ、魂の番契約には相手の心からの同意が絶対要件になる。


 大人になるまでに、きっちり同意を戴くからよろしくね。


 大丈夫だよリリア、囚われてるなんてわからないくらい幸せにしてあげるよ。




 その時リリアが意を決したように口を開いた。



「私、リリア・ラシーヌは生涯をかけて愛するシュバルツ様の為に生きる事を誓います。」



 リリア、私の番。君は今このタイミングで私になんてことを誓っちゃったんだ。


 私の術式の唯一の逃げ道を今、君は完全に封鎖してしまったよ。


 リリアごめんね。


 でも、後悔はさせない。共に永遠に近い年月を、幸せに過ごそう。


「では、リリア。よろしくね。遮蔽を解くよ。」


 パチン


 遮蔽を解くと共に止めていた時を動かす



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