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ウサギのもふもふ



「ああ、お耳が…。」


 番の視線が怖い。軽蔑されただろうか。



「遮蔽してるから、大丈夫だよ。普段は耳を隠しているの?」


 私の番が優しく聞いてくれた。


 落ち着いたトーンのボーイソプラノが絶望に覆われたリリアの心に染み渡る。


 にっこりと微笑む姿が天使のようだ。彼と話せる喜びに震える。



「お父様とお母様にバレたら大変だからって。」



 貴族令嬢として致命的だもの。



「お父上やお母上の言う通りだよ。今まで良く頑張ったね。私も隠すのを手伝ってあげよう。」



「ほんとう?」



 やっぱりそうなのね。


私のお耳は隠さないといけないのね。


 今までそんなに気にしていなかった事なのに改めて番に言われると少し哀しかった。


 番にだけは私のありのままを受け入れて欲しかったな。


 哀しみで耳がふるふる震えた。



「お耳触っていい?触らないとちゃんと隠せないんだ。」





 まあ、お父様とお母様が高名な魔術師に頼んだときにはは頑張って一週間しかもたないって言われたけど。


 多分知らないのね。



「いいわ。貴方は番だから、特別に触らせてあげるわ。」



 番がにっこりと微笑んだ。


笑顔も素敵だわ、リリアの胸が高鳴る。


 魔法の修行中なのかしら。


私を実験台にしたいのね。かまわないわ。



「触るよ。」



 番が私のお耳にそーっと手を伸ばした。


まるで宝物を触るような優しい触り方に、少しトゲトケしていた気持ちがとろんと蕩けた。


 堪らなく幸せな心地だった。



「うふふ。くすぐったいわ。」



 その柔らかな触られ心地に思わず声が出た。


番がはっとしたように手を止める。


 そうだ、これは耳を外から見えないように魔術を掛けているだけなのだ。


 番とのふれあいじゃないのに…。


期待してしまう自分が嫌だ。


 そんな私の気持ちを知らずに番が聞いてきた。



「しっぽは?」



 リリアは真っ赤になって下を向いた。



「しっぽは、大人になってからなのです。」



 耳だけでもかなりな衝撃なのに、しっぽまでとは獣人の事を知らなすぎる番に思わず言ってしまった。


 獣人のしっぽは、正式に番った者同士しか触れ合わない。



 私の番は、しばらく考え込んだ。



 嫌われた?



 ひやひやしながら彼を見つめる私に真顔で告げる。



「しっぽも隠さないと大変だよ。」



 リリアの事を親身に考えてくれてのことなのに、変な想像をしてしまった自分が恥ずかしい。



 リリアはおずおずとしっぽも差し出したのだった。




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