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彼は逃がさない

「では、リリア。よろしくね。遮蔽を解くよ。」


 パチン


 遮蔽を解くと共に止めていた時を動かす。


 巧妙に隠しても膨大な魔力使用の残滓にセバスチャンだけは気付いているだろう。


 この男はこの国の筆頭魔術師が10人束になっても敵わないだろう魔術の使い手だ。流石にその目は誤魔化せるとも思ってなかった。


「おや、主、ずいぶん可愛らしいご令嬢ですね。」


 セバスチャンが片眼鏡の瞳を僅かにすがめる。目の奥が面白いものを見たとばかりに光る。わかってるくせに聞く気か。


「我が番だ。よろしく頼む。」


「御意。」


 セバスチャンが至極真面目に返したかと思うと、笑いを噛み殺した声で続ける。


「主、若干背が伸びたような。」


 聞かないでくれ、必死で成体化を止めたが、多少成長してしまったんだ。


「まあな。」


「主、いっそ、成体になればよろしいのでは。」

くそ、セバスチャンが意地悪だ。まあ、今に始まったことではないが…。


 ふん、ほっといてくれ諸事情により私はリリアと共に成長すると決めたのだ。


「リリア様、別室に美味しいケーキがございます。しばらくお二人でゆっくりお過ごしください。」


 セバスチャンが、リリアに優しく微笑みかけた。

おい、私に対する態度とリリアに対する態度の温度差が酷いぞ。

エルフらしい美しい容姿で女性達を虜にする百戦錬磨の微笑みを我が番に向けるんじゃない。リリアがよろめいたら、お前の皮を剥いで着ぐるみを造るぞ。

私の怒りを感じたのか、セバスチャンはぶるっとその姿勢の良い背中を震わせた。


「主、私は色々と手配がありますので、リリア様を手厚くもてなして差し上げて下さいね。」


 そうにこやかに私に告げてそくささと去っていったセバスチャンの目は完全に座っていた。

 こいつ、どんな手配をする気なんだ?


 リリアを家に帰さないつもりか。


 まあ、私も出来ればそうしたいのはやまやまだが…。

リリアの望まないことをするつもりはない。


 手配が完了するまでリリアを逃がしたらコロスと顔にかいてあったぞ。

 踵を返して、その場を離れるセバスチャンの背中からは今までのどんな困難な任務の時にも感じたことのない闘志が漲っていた。

 そして、それはセバスチャンの後ろにきちんと整列して続く使用人達からも同様だった。

 リリアごめん、この屋敷の使用人達は皆エルフ族で、たぶん全員がこの国の筆頭魔術師より強いだろう。


 その皆が君をこの屋敷から出さないように立ち回るつもりのようだよ。


 どうしようか、リリア。

強引に君を監禁して君に嫌われたくない。

 母の二の舞にはなりたくない。

だけど、番と一時も離れたくない。


 なんとか穏便に引き留められないかな。

シュバルツは、先程まで考えもしなかったジレンマに頭を悩ませるのだった。

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