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その2

パンクなんて聴いたことなかったけど。

彼女がそういうところの人で、あのライヴの後に、そういうところに戻っちゃったから。

うちも、聴くしかないじゃん。

さかのぼって聴いた、彼女のバンド。

いいじゃん?激しめで。

ちょっと戸惑うこともあるけどね。

でも、決めたんだ。

彼女についていくって。


公式のSNSは、やっぱりあのライヴの後で閉鎖されちゃったんだ。

だから、あちこち探したんだけど。

ないんだよね。

バンドの方はあるけど、彼女の個人のやつはない。

だから、思った。

作っちゃおうって。

もちろん、非公式だけど。

許可も取ってないけど。

でも、作りたかったんだ。


非公式ページなら、他にもやってる人が何人かいた。

でも、みんなあの事件で大騒ぎした後は、止まっちゃってる。

キライになったからじゃない、と信じたいけど。

たぶん、もう追っかけてないんだよね。

うちは、追っかけ続けてるから。

だから、うちしかできない。

彼女の一番のファンが作る、とびっきりの非公式ページ。


ページには順調に人が増えていった。

みんな彼女について、語りたかったんだね。

デビューした時のこと、あのライヴのこと、今のこと。

たまに変な書き込みもあるけど、そういうのはうちが責任もって排除する。

そんな姿勢に、みんな賛同してくれるみたい。

それに…ちらほら、混じってきてるんだよね。

彼女の、関係者みたいな人。

明らかにバンドマンで、うちみたいな普通のファンとは書くことも違ってて。

友だちに接するみたいな感じで、彼女に接しているのが、文章から伝わってくるんだ。

でも優越感とか嫌味な感じじゃなくて「仲間のこと応援してくれてありがとう」ってノリで。

何だか嬉しくなっちゃうよね。


彼女のバースデーだから、思い切って自撮りしてページにアップしたよ。

あのライヴで買った彼女のTシャツ着て、あの時のアルバム持って、おっきな花束を用意して。

『お誕生日おめでとう』って!

表情がちょっぴり硬くなっちゃったけど、みんないっぱい『いいね』してくれた。

タイムラインにも、お祝いの言葉があふれていく。

いい雰囲気。このページ、大好き。

次々に並んでいくバースデーコメントを眺めているうちに、寝落ちしちゃった。


お日さまがのぼって、うちはスマホを握ったまま、こわばった身体を起こした。ヤバい、学校行かなきゃ。

無意識で、スマホのロック解除。

寝る直前まで見ていたSNSの画面。

また言葉が漏れちゃった。

「…やばっ。」

うちのページに、彼女が降臨した。

うちが用意したのと、ほぼ同じみたいな花束。

受け取るポーズを取って、こっちを向いて微笑んで。

『ありがとねー』

の、コメント付きで。

うち、スマホを握ったまま、部屋中を踊り回っちゃった!

その日は授業も上の空で、ずっーっとずーっとそのコメントを眺めていた。


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