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その1

うち、彼女が好きだよ。


ただのファンじゃないんだ。世界で、いや宇宙でいちばんのファン!うちは本気でそう思ってる。いやでも、彼女が好きになった人、みんな、そう思ってるかもだけど。

でも、うちが一番なんだ。


初めて彼女の歌を聴いたのは、テレビだった。

歌番組で紹介されてて、画面に登場した時から、もう今まで観てきた、聴いてきた歌手の人とは違った。おなじみの司会者、女子アナ、共演してたアイドル、ぜーんぶ薄っぺらく安っぽく感じちゃった。それだけ、彼女のリアルが画面越しにビンビンときたってこと。

手慣れた司会者とのやり取りに、彼女がめっちゃ違和感を感じてるのも分かって、それもまた良かった。


セットに移った彼女。バックバンドを従えて、トークの時よりもずーっとリラックスしてて。

歌い始めた瞬間、思わず声が漏れちゃった。

「…やばっ。」

その言葉がとてもショボく聞こえて、我ながら自分がイヤになっちゃう。

そんな言葉でしか、彼女の歌を表現できないうち。

そんなんじゃない。なんか、もっと、こう…。

ヤバい。鬼ヤバい。

あー、もう!

とにかく、うちはその日からぶちのめされたってこと。


彼女の歌が終わって、うちは録画してなかったことを激しく後悔した。すぐに動画サイトで彼女の曲を探す。

レコード会社のオフィシャルが上がってて、今夜のと同じ曲だった!その夜はずーっと流しっぱなしにしてたけど、プロモ用のイントロがウザくて、すぐに公式からスマホにダウンロードしたんだ。

その日から、その曲がうちのテーマソングになった。


生まれて初めて行ったライヴで、まさかの主役が途中キャンセル。

普通だったら、怒って家に帰ってもおかしくない。

でも、その逆だった。

サイコーだった!

みんながどんどん外に出てって、うちもよく分からないままホールの外に出た。

キレイな夜空で、そこらじゅうでみんなが飛び跳ねたり踊ったりしてて、ずっと向こうの方で彼女の声が響いていた。

アカペラの声以外は演奏もない。

ずっと聴き込んだアルバムの曲とも違う、知らないナンバー。

整然と盛り上がってたホールの中と違って、全部が自由で。

うちもピョンピョン飛び跳ねながら、知らない曲に腕を突き上げていた!

ひと目でも彼女の姿を見たいと思ったけど、歌声はものすごい人の渦に囲まれて、とても近づけるもんじゃなかった。


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