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読切外伝 自殺しそうになったら美人死神と生活する事になった-上

挿絵(By みてみん)

「ではこれで可決と言う事で宜しいですね?」


 あ〜あ、決まっちゃうな〜

 嫌だな〜明らかに残業増えるんですけど?

 でも今更私みたいなペーペーが何言おうと変わんないだろうしな〜

 って言うか何で私ここに呼ばれたのさ……


 隣の席に着く上司をチラリと覗き見る。


 死神職のトップ、ゲファレナー管理官は昔ながらの死神スタイルで、ボロボロのローブに骸骨の顔。現役時代は大きな鎌を持って現場に出向いてたって話しだけど、最近はもっぱら事務職メインで現場は私ら下っ端の担当。


 そんなゲファレナー管理官はすまし顔 (?)でお茶をすすっている。


 せめて反対意見出してよ! 苦労すんのは私ら下っ端なんだからさ!


「特に異議は有りません、エーファ様」


 向かいの席に座る天使職のトップ、グナーデ管理官が議長でも有り天界の最高責任者、女神エーファ様にそう答える。


 くっそ! グナーデめ。そりゃあんたらの部署は直接現場に出ないから良いよね!

 中途落伍者(自殺者)が減れば事務手続きも減るし〜そうすりゃ残業も無くなるしで良い事尽くめなんだから反対する理由ないもんねクソが!


 私の恨みのこもった視線などお構い無しに、自分の仕事は終わったとばかりに腕を組むグナーデ管理官。

 

 クソー無駄に神々しいんだよ!

 これだから天使は……


 は〜〜〜良いな〜私も天使職に就きたかったな〜

 まさか死神職がこんな過酷と思って無かったし〜

 同じ職場でホワイトとブラックが有るっておかしくない?

 死神はユニフォームの色と同じでブラック職ってか? うるさいわ!


 その時隣のゲファレナー管理官がスッと手を上げる。


 はっ! もしかして反対意見言ってくれる? さすが管理官! その何考えてるかわかんない骸骨面が頼もしく見える!


「では打ち上げはいつもの店と言う事で宜しいですかな? 良ければ予約入れますですぞ」

 

 喋る度にカタカタと鳴る骸骨面に満面の笑みをたたえて居てもおかしく無い程上機嫌な声で、スマホに写る居酒屋『極楽浄土』の予約画面を見せながら皆に確認をとるゲファレナー管理官。


 うん、あんたに期待した私がバカだった。

 昔はやり手だったって聞いてたんだけど、現場外れてからスッカリ腑抜けちゃったとも聞いてる。


 今じゃすっかりグナーデ管理官の腰巾着に成り下がっている。


 おかしいな〜役職的には対等な筈なのに。


 上司がそんなんだから部下に影響が出ない筈もなく、死神は天使の小間使い、みたいな目で見られる事も多々有る。


 あ〜気が重い。

 結局会議は賛成多数で可決。

 『自殺事前抑制委員会』が発足されてしまった。

 で、私もその長ったらしい名前の委員会メンバーに入れられてた、それが呼ばれた理由か……


 このアホみたいな委員会が何をする所かと言うと、読んで字のごとく。

 『自殺する意思の有る者、またはその危険性の有る者の所に赴き思い止まらせる事。また一定期間監視し無事天寿を全うさせる事 (期間は無期限、天寿には自殺以外の死因、病死、事故死、他殺を含む)』

 ってなげーわ!

 しかしそんな事に死神1人使う?

 それじゃ無くても人手不足なんですけど!?


 あくまで今回は試験的な扱いで今後も続けるかは解らないって話しだけどね!


 会議室から肩を落として出て来た私にゲファレナー監督官が一言、

「じゃあカンナ君。後は任せたよ〜」


 って待てコラ! 丸投げか? 丸投げなのか!?


 言うだけ言っていそいそとグナーデ管理官を追い掛ける残念な上司。


「は、はい……」


 って引きつった笑い浮かべながら何で私も引き受けちゃうかなー!


 まあいくら情け無いとは言え上司の命令だから断れないんだけどね……


 はぁ〜〜〜こうなったのも、いつ帰って来れるかも分かん無い長期出張中の後輩のせいなんだよね……


 うん、愚痴っても仕方ない。可愛い後輩の為にも頑張りますか。


            ✳︎


「あ〜生きてるのがしんどい……」


 時間は深夜1時を回った所。仕事を終わらせてやっと安アパートに帰ってきた所だ。


 晩飯にと買って来たコンビニ弁当に手を付ける気にもなれず。かと言ってさっさと食って寝ないと、6時には家を出なければならない。行き先は勿論会社だ。


 こんなサイクルが途中休みも無く、もう何ヶ月も続いている。正直心も体もくたくただ。


 もう16年も前になるが、職場の先輩だった人がビルから飛び降りて自殺した。

 新入社員だった俺は大いにびびったね。

 確かにいつも死にそうな顔して働いてたし、仕事以外何も無いって感じの人だったけど。

 だけどそれ以来ブラックっぷりは多少なりを潜めてたんで正直その先輩には感謝してる。

 だけど最近社長が代替わりしてから、昔の社風に戻っちまったんだよな〜


 仕事辞めようかな……


 しかし36歳と言う微妙な年齢はやり直しを図るには少々遅すぎる。

 もっと早く決断しとくべきだった……


「そういや最近書いて無いな……」


 思わず独りごち、スーツのポケットからスマホを取り出す。


 スマホのメモ帳を開くと書きかけの小説が姿を表す。


 俺は趣味で小説を書いてた。ネットに何度か投稿したりもしてたが、ここの所忙しくてそれどころじゃ無い。


「やっぱりな……」


 投稿を辞めてしまった俺の作品にPVが付くわけもなく。

 

「まあ、はなからそんなに読まれてた訳でも無いけどな……」


 それでも連日並ぶPV0を眺めると物悲しくなってくる。

 

 ああ、いかん。疲れてる所に自ら追い討ちかけてどうする。


 タバコでも吸うか……


 窓を開け外の手すりに頬杖を付きタバコを吹かしながら何と無く階下を眺める。


 アパートは4階建、下には植え込みも無くアスファルトが敷かれた駐車場が見える。


 ここから落ちれば死ねるかな……


 って何考えてるんだ俺!

 あっぶねー、なんか知らんけど意識持っていかれそうになった。


 確かに生きてるのしんどいとか思ったけど死ぬつもりねーから!


 飯……食お。そんでさっさと寝ちまおう。


 ピンポーン♪


 あ? チャイム?

 

 突然部屋にチャイムの音が鳴り響く。


 誰だ? こんな深夜に。


 ピンポーン♪


 うわ、また鳴った! 間違えか何かか?


 ピンポピンポーン♪


 うわこえーこれ無視してたらずっと鳴らされるやつ?


 ピンポピンポピンポピンポ……


 ひ〜連打してきやがった。

 つーか怖いより腹立ってきたわ!


 どこの常識知らずか知らんが一発怒鳴り付けてやる。


 ドアを勢いよく開け怒りの矛先を向ける相手を確認すると、そこに立っていたのは黒ずくめのローブに身を包んだ女性だった。


 なんだ? 宗教の類か?


「あっ! 夜分失礼します。私こう言う者です」


 差し出された名刺を反射的に受け取ってしまった。そこには……


『魂管理部 魂返還課 

 死神 カンナ』


 は?

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