エピローグという名のプロローグ
潮風が頬を撫でる。今日は波も穏やかで揺れも少ない。
オレ達は今、隣の大陸『プラテリア』へ向かう船に乗っていた。
どうせなら思い切り遠くまで行ってみようと言う事でほぼノープランで船に飛び乗ったのだ。
甲板で潮風に当たっているオレの隣でレイカは手すりにもたれ掛かり、先程からずっと海面を眺めている。
いや、正確には眺めているのでは無い。
顔を上げれないのだ……
「大丈夫か?」
「ダべ、ぎぼじばるい……」
船に乗った初日からずっとこの調子で、食事もままならない状態。
本日で3日目なのだが、航海が12日 (しかも順調に行って) 続くと聞かされた時のレイカは絶望の余り白目をむいていたっけ。
客室でずっと横になっているより、外に出て風に当たれば少しでも良くなるかもと連れてきてはみたものの、残念ながら効果は無さそうである。
もう慣れて貰うしか無いなぁ……
「具合は……まだ駄目そうですね」
「はは、見ての通りです」
オレに声を掛けてきたのは、旅商人のマルシャンさんだ。
たまたま同じ船に乗り合わせたのだが、余りにも具合が悪そうなレイカを心配し船酔いに効く薬を分けて貰い、それ以来懇意にしている。
マルシャンさんはまだ二十歳そこそこだが、既に親の跡を継ぎ、キャラバンを指揮してあちこちを旅しながら商売をしているそうな。
今回は一年ぶりの里帰り。そう、マルシャンさんはプラテリアの生まれなのだ。
そんなマルシャンさんにプラテリアの話を色々聞いた。
魔力を動力に変換し様々な機械を動かす技術を持った都市国家、プレスティー。
獣人、亜人だけが暮らす街、ベスティア。
闇魔法を復活させようとしている集団、アンシヤン。
そして、大陸のほぼ中央に位置し、樹齢数千年とも言われる巨大な木『世界樹』が存在する街アーブル。
このアーブルには世界最古のエルフが住んでいるとの噂も有るそうな。
その人ならもしかしたら『エルフの呪い』について何か知っているかもしれない。
レイカの背中をさすりながら、オレはまだ見ぬ大陸プラテリアへ思いを馳せる。
いったいどんな冒険が待ち構えているのか? 考えただけでもワクワクする。
危険な目にも合うだろうか?
新しい出会いも有るだろうか?
それは誰にも解らない。
オレ達の冒険は幕を切ったばかりなのだから……





