虹色亭改革大作戦-2
衣装はこれで大丈夫だろう
次は宣伝だ
基本店が流行るかどうかは口コミになる
その為にも先ず客に来て貰わないと話にならない
「よし!みんなでビラを作るぞ」
「「「「ビラ?」」」」
「そう、宣伝用に配るチラシだ」
「チラシったてな〜何を書くんでい?」
「まず美味い料理と酒を出す店である事を強調します
そしてそのチラシを持って来た人は料金を割引します
見出しはリニューアル記念とでもしましょう」
「どこもリニューアルして無いじゃないのさ」
「良いんです
どうせ普段から客は来てないんですからどこも変わってなくたって解りはしません!
それに店員がリニューアルしてるので全くのウソって訳でも無いですから」
早速チラシ作りに取り掛かる
印刷機等無いので当然手作業だ
最初にオレが一枚お手本を作りそれを皆で模写して行く
そうやって全員総出で三日費やし300枚のチラシを作成した
チラシの内容は、フェルゼンさんのオススメ料理数点、他所では余り見かけないザフィーアさんの故郷のお酒が呑める事、店の簡単な地図とチラシ持参の方には飲食代10%引きになる事が書かれている
「明日これを店の前と大通りの交差点で配ります」
午前中は店の前で、午後からは交差点で配る算段とした
店のオープンは更に次の日とし当日は全員で店を切り盛りする
「と、言う訳でレイカ、マルモア
明日はビラ配りだ!」
「わかったのじゃー!」
「わ、私もやらなきゃダメ〜」
「レイカ大丈夫だ
オレも一緒にやるから、頑張ろうな」
「・・・うん」
「俺達はどうすんでい」
「料理の仕込みと店内の掃除をお願いします」
「こんなんで上手く行くのかね〜」
次の日、オレ、レイカ、マルモアは店員の衣装に着替え店の前でビラ配りを始める
「明日リニューアルオープンでーす
美味しい食事と珍しいお酒を用意してお待ちしておりまーす」
「よろしくなのじゃー!」
「よ、よろしくおねがいしまーす」
努力の結晶であるチラシを道行く人に配る
オレはなるべく店の事を知らなそうな冒険者や旅商人をターゲットにした
こらマルモア、チラシは撒かない!
そんな事したら直ぐ無くなっちゃうでしょ!
レイカはもう少し頑張って積極的に渡そうな
オレの後ろに隠れてちゃダメだぞ!
100枚程配り終わる頃ある傾向に気が付いた
オレの配るチラシは何故か女性の方が良く受け取ってくれる
反してレイカからは男性が良く受け取って行く
マルモアはどちらもそれなりだ
レイカは確かに可愛いからな、男性に人気が有るのは仕方が無い
もしオレがもらう方ならレイカ一択だ
しかしオレの所に女性が集まって来るのは何でだ?
後マルモアはなんか暖かい目で見られてる
小さい子が一生懸命お手伝いしてると思われているのだろう
何にしろそこそこの数を捌き午前中のビラ配りは終了
昼食後もうひと頑張りだ!
午後、交差点でのビラ配りは午前中の経験を生かしオレは女性に、レイカは男性に積極的に配る手筈とした
マルモアは何も考え無くて良いぞ!
レイカも少しずつだが慣れて来たらしく声も出始めて良い傾向だ
お陰でチラシも順調に捌けて行く
「君たち何をしているんだ?」
不意に声を掛けられそちらを見る
この声は・・・やっぱり
アイゼンフリューゲルの美人指揮官オイレさん其の人だった
「オイレさん!宜しければこれをお持ち下さい」
「なんだ・・・チラシ?
リニューアルオープン?
虹色亭が?」
「虹色亭を知っているんですか?」
「勿論知っている・・・が
何故君達がコレを?」
「まあ色々有りまして」
「オイレ!細かい事は良いから食べに来るのじゃ!」
マルモア、オイレさん呼び捨てかよ
しかしオイレさんはフッと微笑みながら
「解りましたマルモアさん、手が空いたら伺わせて頂きます」
「待ってるのじゃ!」
んん?なんだオイレさんのあの態度は
二人は知り合いなのか?
そう言えば駐屯地でもマルモアが話を通してくれたらやけにあっさりオイレさんと面会出来たっけ
その後も順調にチラシは数を減らし夕方には全て配り尽くす事が出来た
このチラシにどれ程の効果が有るかは解らない
その答えは明日出るだろう
兎に角今出来る事は全てやり終えたのだ
明日の為に今日は帰って英気を養うとしよう
虹色亭に戻ると店内の掃除と料理の仕込みも終わり
こちらも明日のリニューアルオープンを待つばかりとなっていた
「やれる事はやりました
明日は頑張りましょう!」
「「「「おー!」」」」
景気付けに一杯だけ呑み明日に備えて早々に部屋へ戻る
二日酔いで客の前に立つ訳には行かないからね
「リオン君、明日お客さん来るかな?」
「みんな頑張ったんだ、きっと来るさ」
「そうだよね」
「レイカも明日は頼んだぞ」
「まだちょっと恥ずかしいけど頑張るね」
「レイカは可愛いからな、あの格好で店に居るだけで客が入って来るさ」
「もう・・・リオン君ったら」
オレにしがみついて来るレイカ
その表情は期待と不安が入り混じっている
「レイカ・・・ん」
「んん・・・ふぅ」
「今日はキスだけな」
「うん・・・おやすみ」
翌朝、全員仕事着に身を包み食堂に集まる
皆緊張の面持ちだ
「フェルゼンさん一言お願いします」
「ふむ、みんな今日まで良くやってくれた
どんな結果になるかはまだわからんがとにかくやるしかねー
気合入れていくぞー!」
「「「「おーー!」」」」
等と言っていたのが遠い昔に感じる
現在既に夕刻を回った時間だが全く客は来ない
いつも通りの店内
火にかけられたスープのコトコトと言う音が響くほど店内は静まり返っている
駄目・・・なのか?
あの程度じゃこの店に付いた悪いイメージは消え去らないと?
「フェルゼンさん、すいません
オレの力不足でこんな」
「なに、気にすんじゃねーよ
やるこたやった結果がこれなら仕方ねー
俺も覚悟決めるだけだ」
「あんた・・・」
「父さま・・・」
「随分辛気臭い事になってるようだが店はやっているのか?」
「「「「「!!!」」」」」
「どうした?チラシを見て食事をしに来たのだが、帰った方が良いかな?」
「オイレ!来てくれたのか!」
「マルモアさん、当たり前です
来ると約束しました」
確かに昨日そんな話もしたけどあんなの社交辞令みたいなもんだ
オイレさんみたいな忙しい人なら尚更だ
っと、そんな事は良い
仕事仕事!
「ようこそおいで下さいました
お席へご案内します」
「ああ、少し待って欲しい実は連れが居てね」
「お一人じゃ無い?」
「ああ、皆入って来い!」
オイレさんの声と共に店内へゾロゾロとその数30人程の男女が入って来る
はは・・これって・・・
「暇そうな部下を適当に連れて来た
私を入れて33名だ、大丈夫かな?」
「勿論です!
皆様いらっしゃいませー!」
「い、いらっしゃいませー」
「いらっしゃいなのじゃー!」
一気に活気付く店内
この団体さんのおかげで既に席の半分が埋まっている
「暇そうとか酷いですよ
ここに来る為に急いで仕事片付けたんすよ?」
「指揮官に誘われて行かないはず無いじゃないですか」
「その通りです!私も一度指揮官とお食事を共にしたいと思っていたんです!」
「俺昼抜いて来ちゃいましたよ」
「お前どんだけ食う気だよ!」
わはははは・・・
「今日は私の奢りだ!
好きに頼んで良し!」
「「「「ご馳走様でーす」」」」
次々と注文される食事と酒
店内を走り回るオレ達3人
遺憾無く発揮されるフェルゼンさんの料理の腕
ザフィーアさんも厨房を手伝っている
「えーと、入れますか?
チラシを見て来たんですけど」
なんとここに来て新たなお客までご来店だ
そも後もオイレさん達が呼水になったのか客足は途絶えず
気が付けば店の外にまで行列が出来る勢い
「すげー美味いらしいぜ」
「珍しい酒ってどんなかな?」
「昨日チラシ配ってた子可愛かったな〜」
「あのカッコいい店員さんいるかな?」
「まるでどこかの国の王子様みたいだったよね!」
「何でもフォーゲル指揮官御一行が来てるらしいぜ?」
「マジでか!あの美人指揮官と同じ物が食えるたあ光栄だな!」
「それだけでも今日来た甲斐が有るってもんだ」
外からはそんな声が聞こえて来る
チラシ効果も有ったみたいだけどオイレさんもこの町で随分慕われている様だ
オイレ様様だね
「お会計お願いしまーす」
「ダメー手が離せない!」
「こっちもじゃー!」
しまった!お客さんが沢山来たのは有り難いが人手が足りない
「アタイが・・・アタイがやる!」
「ザフィーアさん!」
あのコミュ障で更にオーガーで有る自身にコンプレックスを持つザフィーアさんが慣れない接客を自ら買って出てくれた
「ああああ有難う御座いました
お会計は・・・」
ザフィーアさんは客の前に立ちガチガチに緊張しながらも精一杯の笑顔で対応している
何とか大丈夫か?
少なくとも客が怯えたりはして無いようだが
「はえ〜女将さん?
大っきいね〜でも美人さんだ〜
また来るよ!」
お客さんはそんな捨て台詞を残して帰って行った
「ビビビ美人って言われた!
今まで鬼とか悪魔とかしか言われた事なかっちゃのに!」
真っ赤な顔で固まるザフィーアさん
ちょっと噛んでるのが可愛らしい
大丈夫、貴方充分美人ですよ!
そんなこんなで何とか閉店まで乗り切ったオレ達
皆疲れ切っているがその表情は満足気だ
客は皆帰ったがオイレさんだけがまだ一人でチビチビと酒を呑んでいた
「オイレさん、今日は有難う御座いました」
「何がかな?」
「お客さんを沢山連れて来て頂いて
お陰で大繁盛でした」
「私はただ部下を連れて食事を楽しんだだけだよ
それにマルモアさんとの約束も有ったからね」
「オイレ!わたしからも礼を言うのじゃ!
来てくれてありがとうなのじゃ!」
「マルモアさん、私は約束を必ず守る人間です、ご存知でしょう?」
「しってるのじゃ!」
やはりこの二人の事が気になる
思い切って聞いてみよう
「あの〜なぜマルモアをさん付け何ですか?」
「ん?年上の方に敬意を払っているのだが?」
「え?」
「え?」
「失礼ですがお幾つ何ですか?」
「今年17になったばかりの小娘だよ
ただ女性に歳を聞くのは感心しないな」
「ええーっ!
あ、いや失礼しました
その、余りにも貫禄が有ると言うか何と言うか」
「老けて見えるかな?」
「とんでも無い!」
「フッ良いさ、普段からそう振る舞っている
部下に舐められないようにもね」
冗談めかしてそんな事を言うが老けて見える何てとんでも無い
そんなんじゃ無く、滲み出る威厳とか何処となく漂う気品のお陰で実年齢より上に感じられたんだろう
それに部下に舐められるなんてそんな訳ない
あんなに慕われているじゃないですか
「それに以前から気になっていたのだよ
『剛腕フェルゼン』と『戦闘姫ザフィーア』の営む店と言うのがね」
わぁ〜お、またまた凄いパワーワードが飛び出したぞ!





