虹色亭改革大作戦-1
昨日の晩飯になるはずだった料理をレイカと二人朝食として頂いていると厨房の方からフェルゼンさんとザフィーアさんの話し声が聴こえてくる
何やら言い争いをしているような感じだ
「今月も赤字だ・・・」
「当たり前じゃ無いのさ
客をみーんな追い返してるんだからさ!」
「だから追い返してるつもりは無いと言ってんだろうが!」
「結果的にそうなってるなら同じでしょうに
そろそろ潮時なんじゃ無いの?」
「蓄えはまだ有る」
「そんなものもって後一月だよ!」
まあ解ってはいたがやはりそうか
フェルゼンさんの性格はどう考えても客商売向きじゃ無い
せめてザフィーアさんが接客を出来れば良いんだろうけどそれも無理っぽい
残るはマルモアだが・・・彼女はどうなんだろ?
両親みたくコミュ障拗らせてる風には見えないが
フェルゼンさん達には良くして貰った恩が有る、出来れば何とかしてあげたいところだ
「レイカ、何か良い方法無いかな?」
「うーん、難しいと思うよ?
一度付いたイメージってなかなか拭い切れないし、それが悪いイメージなら尚更だよ
後あの二人にこの仕事は向いて無いんじゃ無いかなぁ〜
同じコミュ障の私が言うんだから間違い無いよ!」
フェルゼンさんの料理を頬張りながらオレの問いに答えるレイカ
とうとう自身のコミュ障認めたのか
まあ知ってたけど
そんな話しをしている内にも向こうの話し合いもヒートアップしてくる
「俺はこの仕事に命掛けてんだ!
誰がなんと言おうが店は辞めねー!」
「いくら命掛けようが御まんまの食い上げじゃどうしようもないだろ!
いい加減にしな!」
「父さま!母さま!
ケンカはやめるのじゃ!」
いつの間にかマルモアも参戦してたか
これはオレも黙っては居られないな
厨房に繋がるドアを開けると一発触発と言ったピリピリとした空気が流れており今にも壮絶な夫婦喧嘩が始まりそうだ
マルモアも間に入って必死に宥めようとしているがオロオロしているだけで微塵も効果は無い
「ザフィーア
おめーとは一度キッチリ話し付けなきゃならんようだな」
「こっちのセリフだよ!
上等だ!掛かってきな!」
二人は手近に有る得物《調理道具》をそれぞれ手に取り最早戦闘準備完了で有る
アカン早くなんとかしないと
「そこまで!!!」
オレは二人の気迫に負けないよう今までの人生で一番の大声で静止する
多少は効果が有ったのか二人の視線がオレに向いた
「オレに考えが有ります!」
「おう、なんだ
今立て込んでんだ後にしろ!」
「部外者が口出しする事じゃ無いよ!」
オレに向いたは良いがフェルゼンさんは例の人を射殺す目、ザフィーアさんは正に鬼の様な目でオレを見る
正直寿命が縮む思いだが後には引けない
「オレはもう部外者じゃ有りません!
マルモアの友達として彼女の悲しむ顔は見たくない!」
マルモアは二人の喧嘩を止める事が出来ない自分の非力さからか涙目になりつつも服の裾をギュッと掴み泣くのを堪えている
そんな愛娘のいじらしい姿を見て二人とも冷静さを取り戻してくれた
「済まんかったマルモア」
「マルモアごめんよ」
家族3人でしっかり抱き合い家族の絆を深めたところで何とかこの場は収まった
「で?おめーさんの言う考えてってのはなんだ?」
よし、ここからはオレのプレゼンタイムだ
これに虹色亭の将来が掛かっている
「オレの考えは
先ずフェルゼンさんは厨房で料理のみを担当
ザフィーアさんは部屋の掃除やその他の雑用をやって下さい」
「じゃあ接客は誰がするんだい?」
「マルモアです
見た目が見た目なので幼い印象ですが彼女は立派な大人です
それはお二人、特にフェルゼンさんが良く知っていると思います
それならもう手に職を付けても問題無いでしょ?」
そう、マルモアは見た目小学生だがもう二十歳を過ぎた立派な大人なのだ
店で働いていてもなんらおかしく無い
「しかし今までやらせた事も無いぞ
そんな急に出来る訳が・・・」
「父さま大丈夫なのじゃ!出来るのじゃ!」
「でもマルモア一人じゃ手が回らないんじゃ無いかい?」
当然の疑問で有る
いくらなんでもマルモア一人で全ての接客業をこなすのは無理が有る
「大丈夫です
そこはオレ達も協力します」
「え!?私も?」
当然ですレイカさん
兎に角今大切な事は付いた悪いイメージを払拭し遠のいた客足を戻す事
マルモアを店の看板娘に据え両親には裏方に回って貰う
オレ達も短期間だが店を手伝いある程度経営が軌道に乗ったらバイトを雇い入れオレ達はお役御免
これがオレのプランだった
最初渋っていたフェルゼンさんだったがどちらにせよもう後が無い状態
最終的にはオレの提案を受け入れた
そしてオレの方だが
当初1週間の滞在予定を一ヶ月程度を目処に延ばす事に
そうなると旅費が足りなくなるのでフェルゼンさんに提案し住み込みの従業員として扱って貰う事にした
後で父さんにも滞在期間が延びた事やお使いは無事終わった事、今の状況なんかを手紙で報告しなければ
そうと決まれば先ずやる事は!
「仕事着を揃えましょう」
「仕事着?なんでそんな物」
「仕事着を身に付ける事で仕事と私生活のオンオフが切り替え出来ます
それから格好の違いで各々の役割を明確にしてお客さんから見ても解りやすくなります」
「お、おう」
オレの論理的な説明にフェルゼンさんも納得してくれたようだ
「そんな物本当に必要かい?」
フッ、次はザフィーアさんか
「必要です!絶対です!
思い浮かべてみて下さい
マルモアが愛らしいウェイトレスの格好をしている所を!
その格好で甲斐甲斐しく接客をしている所を!!」
「よし解った、私に任せな
馴染の仕立て屋に早速作らせる
マルモア行くよ!」
「わ、わかったのじゃ」
やや引き気味のマルモアを早速仕立て屋へ連行するザフィーアさん
彼女にもオレの熱意は伝わったようで何より
「レイカも一緒に行って来い」
「えぇ〜わ、私はいいよ〜
私に接客が出来ると思う〜」
「出来る!オレはレイカを信じている!
レイカはやれば出来る子だ!
それにいつもと違う可愛らしい格好をしたレイカを見てみたい
多分、いや間違い無く惚れ直す!」
「えっ!そ、そう?じゃあやってみようかな〜」
安定のチョロさ
そんな所も含めて愛してるぞ!
さて自分の分も揃えないとな
オレも街の古着屋へと向かう事にした
後日各々の衣装が揃ったので一先ずお披露目という形で身に付けてみる事となった
フェルゼンさんはオーソドックスな白いコックコートに頭はコック帽の代わりにタオルを巻き付けている
飾り気が無く実用重視だが料理人はその方が良いだろう
オレはウェイターなので古着屋で購入した白いシャツに黒いパンツ、それに合わせた黒いベストとシンプルな佇まい
もう一押し欲しかったのでたまたま目に付いたソムリエエプロンを付けてみた
女性陣はエプロンドレスを基本形とし取り外し可能なエプロン部分の予備を数枚用意した
仕事中に汚れてもそこだけ交換する事が出来る
ザフィーアさんは黒いワンピースに白のエプロン
一見メイド服のようでも有る
裏方にに回る事の多いザフィーアさん用の組み合わせだ
マルモアとレイカも形は同じだが鮮やかな緑色のワンピースにフリルの飾りが付いたエプロンを付けている
ザフィーアさんよりもかなり華やかだが客前に出るのだからこの位目立った方が良い
二人ともとても良く似合っていて可愛らしい
それにしてもレイカはヤバイ
何がヤバイってオッパイがヤバイ
主張し過ぎ、もうパッツンパッツン
ザフィーアさんを見ると良い笑顔で親指を立てて来る
さてはわざとタイトに作らせたな?
まあそう言うザフィーアさんの服も胸元のカットが深めに入っていて谷間が丸見えなんですけどね
そんな二人を恨めしそうに睨むマルモア
うん、大丈夫
あの人の血を色濃く受け継いでるんだから将来は立派なお胸になりますよ
ところで女性陣の服の作りで微妙に違う所が他にも有る
それはスカートの丈だ
ザフィーアさんはくるぶしまで
マルモアとレイカは膝上で有る
ザフィーアさん曰く「おばさんの脚なんか誰も喜びゃしないさね、その分若い子に出してもらうよ」との事だが、ザフィーアさんも脚は出さない代わりに胸が出ているので大人な魅力が半端無いです
ところで・・・
「どうしたレイカ、モジモジして」
「いや、あの、チョット下短過ぎない・・・かな?」
レイカはそう言いながら頬を赤くしてスカートの裾押さえてらっしゃる
まあ普段の格好からしたらね〜
「いや、その位普通だろう
それにとっても似合ってる
可愛いよレイカ」
言って頭を撫でてやるとポンッと音が出そうな程更に顔を赤くする
「そそそそそうかな?
可愛いかな?」
へへへ〜と満更でも無い表情だ
これでレイカも大丈夫だろう
チョロカさんは本日も健在であった





