やきもちレイカ
駐屯地を出て帰路に着けば時間はまだ昼を過ぎた位所だった
何か色々合有ったような気がするけど思った程時間は経っていないな
「どうする?飯でも食べて帰るか?」
「賛成なのじゃ!」
レイカの返事が無い
「レイカどうする?」
「・・・・・」
あれ〜どうした?
何か怒ってらっしゃる?
そういや駐屯地を出てから一言も口を利いていない
今もそっぽを向いてオレを見ようともしないがそれでもオレの手をしっかり握っているのがレイカらしい
なんか怒らせるような事したっけ?
「なにむくれてるんd「鼻の下伸ばしてた」
「へ?」
「さっきの、オイレさんだっけ?
あの人見て鼻の下伸ばしてた!」
えぇ〜そんなつもり無いんだけど
確かに真面目で綺麗な人だな〜とか
笑顔を見てやっぱ綺麗だな〜とか・・・
すいません、伸ばしてたかも
「いやいやレイカさん
確かに綺麗な人では有ったけど別に変な目では見てないよ?
ホントだよ?」
「ホント〜?」
うわ久しぶりのジト目
「オレはレイカ一筋だって
浮気なんか絶対しないよ!」
「ホントに〜?
何か目がいやらしかった気がするけど〜」
「それは誤解d「わたしもいやらしい目で見られたのじゃー!」
おいコラ
なに笑顔でとんでもない事口走ってやがる
あれは君が勝手に言い張っただけでしょ!
「やっぱり!
この浮気者ー!変態!
リオン君なんかリオン君なんかー
だ、だ、だ大好きー!」
オレの手を振り解き訳わからん捨て台詞を残し脱兎の如く走り出すレイカ
おいおい帰り道解るのか〜?
なんて呑気な事考えてる場合じゃ無い
早く追い掛けないと
「マルモア先に戻っててくれ
オレはレイカを連れ戻して来る!」
「わかったのじゃー」
オレも急いで後を追うが・・・
全くレイカのやつこんな時だけ無駄に良い運動神経発揮しやがって
そこそこ人通りが有るにも関わらず誰にもぶつからず、速度も落とさず走って行きやがる
オレは見失わない様に追い掛けるのがやっとでなかなか追い付けない
あいつ人混み怖かったんじゃ無いのかよー
今は頭バグってそれどころじゃ無いのか?
暫く大通りで付かず離れずの追いかけっこをしていたがレイカが不意に横道に入る
オレも少し遅れて飛び込むとそこは・・・
昼間だと言うのに際どい格好で客を引く女性達
ピンク色に塗られた数々の看板
どこからとも無く聞こえる嬌声
間違い無い、娼館街だここ
なんてとこに逃げ込むんだよ!
すげー居づらいわ!
オレはなるべく際どい女性方は見ない様にレイカを探すがなかなか見付からない
まさか店の中に入っちまった訳じゃ無いよな?
そうなると探すのは余計困難になるぞ
それに時間が遅くなればなる程客足も増え更に発見が難しくなる
通りの端から端まで一通り探して回ったが
一向に見当たらない
刻一刻と時間は過ぎて行く
もしや違う通りに移動したか?
それとも既に宿へ戻ったかも?
どうする?一度虹色亭に戻って見るか?
いや、レイカが一人で帰れるとは到底思えない、いやしかし・・・
ダメだ上手く考えも纏まらない
兎に角もう一度探そう
それで見つからなければ・・・
見つかるまで何度でも探してやるさ!
「・・・て下さい
離して!」
「ねーちゃん一晩いくらだ〜」
裏路地の方から微かに聞こえたレイカの声
通りの端まで辿り着き半ば諦めながら戻る途中喧騒の中でその声を聞き取れたのは奇跡としか言いようが無い
急いで声のした裏路地へ滑り込む
清潔とは言い難い路地を進むと暗がりで揉み合う2つの人影が有った
「離して下さい!私は売り物じゃ有りません!」
「いーじゃねーか、気持ち良くしてやるぜ〜」
今にも襲い掛からんばかりの男がレイカの腕を掴みふざけた事をほざいている
「レイカ!」
「リオン君!」
「あ〜〜なんだ〜〜てめーわ」
男は明かに酔っ払っている
足元も覚束なく、酒の匂いがオレの所にまで漂って来る
一瞬の隙を突いて男の手から逃れたレイカを背後に庇う
「横からしゃしゃり出てくんじゃねー!」
男が襲い掛かって来る
その手にはいつの間にかナイフが握られていた
こちらも剣を抜けば怪我人が出る
ここは路地裏で人目は無い、ならば!
《エアーバインド!》
先程記憶して置いた魔法を男に放つ
魔法は瞬時に発動した
男を囲む様に全方位から中央に向け吹き抜ける突風
その真ん中で男は風圧に抗えず身動きが取れなくなっている
ノーモーション、無詠唱で放たれた魔法
男は何が起きたかも理解出来ないだろう
効果時間は30秒程にして置いた
逃げるには充分だしあの突風の中では呼吸すらままならないだろう
余り効果時間を伸ばしてしまうと命に関わる
オレはレイカの腕を掴み走って路地から表へ
そのまま大通りに抜けるまで走り続けた
大通りに出て一息付く
後ろから追って来る気配は無い
何とか逃げ延びる事が出来た様だ
「レイカ大丈夫か?」
「え・・・あ・・・うん」
オレの腕にすがり付きガタガタと体を震わせていたが、その内緊張の糸が切れたのかその場にへたり込んでしまった
「ふ・・・」
「ふ?」
「ふえぇぇ〜〜〜〜んごわがっだよ〜〜〜」
余程怖かったのか大粒の涙を流しながら子供の様に泣きじゃくり始めてしまった
オレもしゃがみ込みレイカを抱き寄せ背中をポンポンしながら頭を撫でてやる
「怖かったね〜もう大丈夫だからな〜
よ〜しよ〜し」
「えぐっ・・・ひくっ・・・
ごべん、ごべんね〜
き、気が付いたら、知らない所にいて
人もいっぱい居て、え、エッチなお店ばっかりで
ひくっ、帰り道もわかんなくて
えぐっ、怖くなって、細い道に逃げたの
そしたらさっきの人が、うぐっ
うえぇぇ〜〜〜」
「良いんだ、元はと言えばオレのせいなんだからレイカは何も気にしなくて良いんだ」
なるべく優しい声で慰めるがなかなか泣き止んでくれない
道行く人達も何事かとチラチラこちらを伺っている
オレはレイカを抱き上げ歩き出す
本日二度目のお姫様抱っこである
流石に今回はレイカも文句は言って来ない
オレの首にしがみ付き鼻をスンスン鳴らしている
でも耳がほんのり赤くなっているのでやはりチョットは恥ずかしいみたいだ
そのまま虹色亭に向かう
到着する頃にはレイカも泣き止み泣き疲れたのか眠っていた
大きな子供みたいだな・・・
相変わらず他に客の居ない店内に入るとフェルゼンさんとザフィーアさんがオレとレイカの無事な姿を確認して安堵の表情を浮かべながら出迎えてくれた
「食事の用意はしておく
好きな時に食ってくれ」
「ご心配お掛けしました」
「なーに気にすんな
それよりマルモアが迎えに行くっつって飛び出して行きやがった」
「あの子凄い心配してたんだ
戻ったら礼を言ってやっとくれ」
「解りました後で顔を出します
今は取り敢えずレイカを寝かせてきます」
「おう、そうしな」
部屋へ戻りベッドにレイカを寝かせる
首に巻き付いた腕を外そうとすると思い掛けない力で引き寄せられキスされた
「起きてたのか?」
「うん・・・」
「まだ気にしてる?」
「それも有るけど、あの男に腕を掴まれた感触がまだ残ってて・・・
あの時リオン君が来てくれなかったらって考えると・・・」
そう言いブルっと体を震わせる
「ねえリオン君・・・
忘れさせて欲しいな」
「お安い御用だ」
そのまま二人一緒にベッドへ倒れ込む
フェルゼンさんが用意してくれた晩飯は結局次の日の朝食となったのであった





