アイゼンフリューゲル
オレは声の主の女性に頭を下げ礼を言った
女性は先程男を縛り上げた人達と同じく金属製の鎧に身を包み腰にロングソードを帯び背中にシールドを背負っている
ヘルメットこそ被っていないがほぼ完全武装だ
鎧の胸部分には金の装飾が施され剣の鞘や鍔にも豪華な飾りがあしらわれている
彼らもしくは彼女らが地方駐屯部隊であり彼女が指揮官と言ったところだろうか
「災難だったな、怪我は?」
「オレ達は大丈夫ですが・・・」
吹っ飛ばされたマルモアは大丈夫だろうか?
そちらを見れば他の隊員達が助け起こしているところだった
「ちょっと失礼します」
一言断ってマルモアに駆け寄る
見た限り大きな怪我をしているようには見えないが意識はまだ無い
結構な勢いだったから目を回すのも当然だろう
「彼女は駐屯地の医者の見せよう」
すぐ横から声を掛けられ身を固くする
また気配を感じ無かった
あれだけの装備を身に付けて気配を消す何て出来るもんなのか?
それとも彼女が余程の手練れなのか
「君たちにも来てもらう
事情を確認しなけれならないのでね」
「構いません
元々そちらに向かっている途中でしたから」
「そうか、ではついて来てくれ」
そう言うと彼女は長く伸ばした赤毛を翻し他の隊員と一緒に歩き始める
キツそうな性格だが男口調の似合う美人だな
笑みの一つもこぼさなかったのが勿体無いが笑顔は素敵な女性なんじゃ無いかな?
そんな事を考える程度には余裕が戻ったらしい
オレは腰が抜けてへたり込むレイカを抱き上げ後を追う
レイカは「恥ずかしいから下ろして」とか言っているが歩けないんだろ?
大人しく抱っこされてなさい
間も無く駐屯地に到着した
駐屯地は練兵場を囲む形で3方に大小の建物が建っている
その内の一つに入って行くとマルモアは同じ建物内の別の部屋に運ばれオレ達は机が並ぶ事務所の一角に通された
周りを衝立で囲まれて一応外からは見えなくなっている
取調室と言うほど物々しくも無いがまあそう言った類なのだろう
例の男は本当の取調室行きなのか
ここへ来てからは見掛けていない
オレ達の事情聴取は直ぐに終わった
起きた事を包み隠さずそのまま伝えただけだが特に厳しく尋問される訳でも無くあっさりとした物だった
あくまで事実確認と言った感じか
担当官曰く「剣を抜いたのは相手だけ、こちらは一方的な被害者」だそうだ
危なくこっちも抜く所だったのだが寸前で止めが入って助かった
あの女性指揮官に改めて礼を言わなくては
まあもう一度会えるかは怪しいが
マルモアの事を尋ねると医務室に寝かせて有るそうな
幸い怪我も無く目が覚めれば連れ帰って大丈夫との事
流石丈夫に出来てるな、と再認識した
「良かったね、マルモアさんも無事で」
「全くだ、怪我でもさせようもんならオレがあの夫婦に殺されるよ」
「医務室に行ってみる?」
「そうだな、そろそろ目を覚ますかも知れないし」
本当に殺されるのはあの男だろうけどね
怒り狂ったドワーフとオーガーの夫婦か・・・
絶対お目にかかりたく無い
「リオーン!レイカー!
どこなのじゃー!」
っと、どうやらマルモアが目を覚ましたらしい
待ち切れなくなったか心細くなったかでオレ達を探してるみたいだ
廊下に出て声の方を見れば向こうもこちらを見つけたらしく弾丸の如く突っ込んで来る
「リーーーオーーーンーーーーー」
ドムッ!!!
見事マルモアの頭突きがオレの鳩尾にダイレクトヒットした
何とか堪えたが危なく意識が飛ぶとこだったぜ
「怖かったのじゃー寂しかったのじゃー
ここはどこなのじゃー」
まあ道端で気を失って気が付いたら知らない場所だったんだ
そりゃ怖かったろうし寂しかっただろう
でもあなたオレより年上じゃ無かったっけ?
「ここは地方守備隊の駐屯地
オレ達の目的地だよ」
「そうか!あの後一体どうなったのじゃ?」
オレは事のあらましを掻い摘んで説明する
「そうか!助けてくれたのじゃな!
さすがアイゼンフリューゲルじゃ!」
「アイゼン・・・なんだって?」
「アイゼンフリューゲル
この街を守ってくれてる部隊の名前じゃ
カッコよかろう?」
なぜか自分の事の様に得意げなマルモア
「アイゼンフリューゲルは数有る地方守備隊の中でも規律に厳しく勇猛果敢、その部隊を率いるオイレ・フォーゲルは強く美しい女性なのじゃ!」
そうか彼女オイレって言うのか
「早速オイレの所に行くのじゃ!」
「ちょちょちょ待って
そんな簡単に会えるの!?
ここの責任者なんだよね?」
「リオンはそれを渡しに来たのじゃろ?
なら大丈夫じゃ!
そういう急を要する案件はオイレ本人が対応する事になっているのじゃ!」
ええ!こういうのって普通窓口みたいなのが合ってそこで手続きして〜とかじゃ無いの?
それに急を要するってほどじゃ・・・
いやそうとも言えないな
早ければ早い程有り難い、村の人達に何か有ってからじゃ遅いからな
「でも突然行って会ってくれるのか?
事前にアポ取ったりとか・・・」
「わたしに任せておくのじゃ!」
本当に会えちゃったよ
執務室って言うの?
大きな机に大量の書類が乗っかってる所を見る限りオイレさん忙しかったんじゃあ・・・
今はオレの持って来た報告書に目を通しているところだ
「ふむ」
読み終わったのか報告書をパサリと机に置きなのやら考え込んでいる
「リオン、だったか?
君があの英雄グラムス殿の御子息だったとは正直驚いた
承知した、この件は早急に王都へ報告し可及的速かに問題解決に当たると約束しよう」
ええっ!
いや待って今父さん英雄とか呼ばれてたけど!?
「父をしっているのですか?
それに英雄って一体・・・」
「聞かされていないのか?
グラムス殿は数々の功績を挙げ国王陛下自らその功績を称え爵位を与えようとした程のお方だ
爵位は返上したと聞いたがあの方の事だ
土地には縛られず自由奔放で居たかったのだろうな」
「オレが知っているのは凄い冒険者だったっって事
それだけです」
父さんは爵位より母さんとの時間を選んだのだろう
「そうなると君の母上はやはりあのお方なのか?」
「母が何です?」
「深緑の大魔法使いフィオーネ殿で間違い無いか?」
また凄い通り名が出て来ちゃったよ・・・





