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そう、聖女の息子は魔王様だったのです。  作者: 奥の脇道
そう、『神の園』は問題が一杯だったのです。
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九話 主人公なんとか村に泊めてもらう

二章完結までは一日一回投稿する予定です。

二章は全部で二十五話程度を予定しています。

更新時間は十九時です。


面白いと思ったらブックマークお願いします。

 ミア達はゆっくりと四人の女性達に近づいて行った。


 もちろんミアは魔力を耳に集中して音を拾っており、メアリは周りへの注意力が下がっているミアと手を繋いで先導する形をとっている。


『リオン君、この村で一泊していくのだ?』


『あんまり気が進まないんだが体力の限界なんだよ』


『大丈夫ですよ、リオンちゃん。次は私が優しくオンブします』


『そういう問題じゃないんだけど。絵面的にみっともないし。男が女の子にオンブしてもらうなんて……』


『主、その心配は無用って感じっスよ。どう見ても……』


『何言ってんだ、焼き鳥。どう見てもカッコ悪いだろ!!』


『まあそういう事にしておくっスよ』


 ――えっ?あの黒髪の子って男の子なの?ショートカットの女の子にしか見えない。


≪やっと気づいたっスか。主は正真正銘モテない男っス。鑑定書付きっスよ≫


「ねえ、メアリちゃん。あの黒髪の子って男の子だって」


「ふ~ん。え?ええ?何なのです?女の子なのです?こんな時に何冗談言ってんのです?今大事な所なのですよ」


≪所謂新古品って奴っス。新品なのに中古品みたいな奴っス≫


「本当だって。嘘だと思うんなら直接聞いてみなよ」


「まあ今嘘を付く理由はないのですよ」


「そうよ」


 四人の会話の雰囲気を聞いて若干緊張が緩んできているミア達であった。


『それよりも男と三人の女連れの怪しい一団を村に泊めてくれるかが問題だな』


『主、傍から見たらハーレムっスよ。異世界ハーレムっス』


『何を訳のわからん事を口走ってるのはこのクチバシか?』


『あら、リオンちゃん。私はいつでもバッチOKですよ。恋人であるシューリとしていつでも貴方の弟を産みます』


『おい!シューリは俺の母親じゃないのか?』


『びどい!私は母親であり、恋人です。びええええええええん』


『え?母親で恋人?』


『そうです。まさかやり逃げですか?ぼけるのですか?……ぐひ、ぐひ』


『そういう訳では……』


『そうよね。リオンちゃんを産んだのは私だから間違いなく私は母親です。いいですか?』


『はい。確かに母さんに産んで頂きました』


『それで私の初めてを奪ったのも貴方です。おぼこな私を女にしたのですよ』


『いや……あの……。そのエッチィことはしてないような…それで子供はデキないと……』


『私は初デートの日にカイ様に強く手を握られ、そのまま御子を授かりました。それの何と嬉しかった事か!カイ様の愛を全身で感じたのです』


≪しかし、主も鬼畜っスね。デート初日で妊娠させるなんて。女の敵っス≫


『ああ、カイって俺の本体の名前ね。あの……確かに手を掴んだと思うし……スキルを使って子供を産んでもらったのも事実だけど……傍から聞いていると手を握っただけで子供が出来るような性犯罪者のように聞こえるような………』


『何を言ってるんですか、カイ様!手を繋いだだけで子供ができる訳ないじゃないですか!』


『そうだよね。シューリが勘違いしてると思ったよ。若干、世間知らずな所があるから』


『もちろん知っています。愛し合う者同士が手を握ると赤ちゃんができるのです。愛し合ってるのが大事なんです。いいですか?経験者は語るって奴ですよ』


『いや……あの……違うと……』


≪手を握って妊娠とかどこの箱入り娘っスか?それとも主の手が犯罪的なモノなんすかね≫


『まさか!カイ様は私の事を愛していないと……ぐひ、ぐひ、ぐす、ビぇ――ん』


『そんな事はないよ。シューリは間違っていない。間違ってない!!』


『ほんと?』


『本当だ。本当』


『やり逃げじゃない?』


『やってない……いや、やり逃げじゃない。ちゃんと責任は取る。本当に』


≪意気地のない主っスね。ここはガツンと言ってやるっスよ。ガツンと……。ヒィィィィ。ぴひ~♪ぷひ~♪何もないっスよ。俺っち口笛を練習してるだけっスよ。ぴひ~♪ぷひ~♪≫


『ぐへっへっへっへへ』


「一体あの子達は何の会話をしているんだろ?よく分からないな。シューリって人の恋人がカイって人なのかな?最後に聞こえてきた不気味な声は何だろう?カエルが踏みつぶされた際の鳴き声のような?……それはそうと手を繋いだら子供ができるって何処のお子ちゃまよ!私でも知ってるのに。メアリはお子ちゃまだから知らないだろうけどね」


≪シューリンちゃんは主が絡むと不気味なモンスターのような声を出すっス。残念美人さんっス≫


「何言ってるの!私は知ってるのですよ。そんなお子様じゃないのですよ」


「じゃあどうやったら赤ちゃんできるのよ?」


「×××を○○○して▽▽を▲▲▲に入れて」


「ええええええええええええええええええええええ!そんな事絶対できないよ。本当に!無理無理無理無理」


 ミアは森の奥まで響き渡るような大声で叫んでいた。


 もちろんリオン達にもその叫び声は届いていた。


「ミアお姉ちゃん、声が大きいのですよ。絶対相手にバレちゃったのですよ。それに赤ちゃん作る方法をお姉ちゃんはどう思っていたのです?」


「ええとね、あのね、好きな人同士がね、お口でチュウとするとね……キャ―!」


 ミアはモジモジしながら言葉を紡いだが、最後まで言い切ると恥ずかしさに耐えきれず可愛い悲鳴を上げた。


≪こういう時だけはミアちゃんも乙女っスね。というかメアリちゃんのその歳での知識量が怖いっス。絶対将来は悪女になってるっスよ≫


「お姉ちゃんって子供なのです」


 メアリはミアに聞こえないようにボソリと呟くのであった。


「お姉ちゃん、お姉ちゃん。それより相手がこっちに気づいてるのですよ。どうするのです?逃げるのです?」


「いいえ、そのまま自然に突撃よ」


「全然自然じゃないと思うのですよ……」


≪俺っちはその何も考えてないミアちゃんの行動も好きっス。トラブルに巻き込まれ放題っス≫


「いいの。いいの」


 ミアは特に気にせずに四人が話している場所に笑顔で手を振りながら近づいていった。


「こんにちは!皆さんはここで何されているんですか?」


「ああ、騒いでいてすいません。俺達は王都に向かっている所なんです。ただ体力がなくなってしまいまして。ちょうどここに村があったんで休ませてもらえないかなと思いまして」


 黒髪の男の子がミアの突然の出現に一瞬驚いた様子だったが、すぐに気を取り直して代表してミアの問いに答えた。


 他の三人は特に驚いた様子もなく、黒髪の子の様子をうかがっているだけだった。


「そうなの。それは大変ね。でも私じゃ家に泊まっていいか決められないし……。ちょっとだけ待っててくれる?お父さんに聞いてみるから」


「あま、そうですよね。いきなり怪しいのが来ても即泊めてくれると思ってませんよ。慌てなくていいです。ここで休憩しながら待っています」


「そう。ええと……」


「ああ、俺の名前はリオンといいます。金髪の子がシューリン、銀髪の子がネルで胡桃色の子がスイっていう。よろしくお願いします」


≪ちょっと待つっス。俺っちの紹介がスキップしてるっスよ。俺っち抜きでは物語が進まないっスよ≫


「私はミア。あっちの天使みたいな子がメアリっていうの」


「止めてよ、お姉ちゃん。変な紹介の仕方をするのは。綺麗な女の子がいっぱいな所に私を天使って紹介するのは何の虐めよ」


「何言ってるの!メアリは私にとって天使の妹よ!」


 ミアは鼻息荒くドヤ顔で言い放っていた。


≪俺っちに取ったら刻薄天使っス。間違っても告白天使じゃないっスよ。そこ重要っス≫


「もう知らないのですよ。リオンさん達もすいませんなのですよ。変なお姉ちゃんなのですよ」


「いやいいよ。俺も変なのには慣れているから。ハハハ」


 リオンは嫌な汗を垂らしながら同じ痛みを抱えたメアリを同志と心の中で叫んでいた。


「じゃあ、メアリ私のお父さんを呼んで来てくれる?私はこの人達とここで待っているから」


「お姉ちゃん、大丈夫なのです?」


「大丈夫よ。特に粗暴な感じもしないし。いざとなったら村で鍛えたこの腕力で切り抜けるわよ。それに色々情報収集したいしね」


「まあ私も大丈夫だと思うのですよ。ただ変な事はしないのですよ」


 ミアとメアリはコソコソと二人で相談していたが、リオン以外の三人と一匹には丸聞こえだった。


≪俺っちの描写が出たっス。すかさずここで紹介っスね。ヒーローは最後に紹介のパターンっスか。俺っちもその演出には少しやられたっスよ。憎い演出っス≫


「じゃあ、お姉ちゃん行ってくるね」


≪待つっス。メアリちゃん、俺っちの紹介忘れてるっス。コケコケコケっスよ~≫


 ミアはメアリがトコトコと駆けていくのを見送ると、リオン達に向き直った。


「ねえ、リオンさん達はどういう関係なの?冒険者?」


「いいや。冒険者じゃないよ。なんというか……家族かな」


 リオンはボソリと呟いたが、恥ずかしかったのか頬は若干赤く染まっていた。


≪何を照れてるっスか。そんな事より俺っちの紹介の方が大事っス。コケコケコケ≫


「そうなの な!の な!の な!の な!私はねぇねなの な!ねぇねなの な!リオンのねぇねなの な!」


 今までボ―としていたネルだったがリオンの家族という言葉を聞いた瞬間に重たそうにしていた瞼をカッと力一杯見開き、自分はリオンのお姉ちゃんである事とミアに力説していた。


 ネルの顔面がミアの唇に着くぐらいに近づいて来たので、ミアは思わず仰け反ってしまった。


「そうなのね……ネルちゃんはリオンさんのお姉ちゃんなのね。すごいのね」


 ネルの鬼気迫る剣幕に押されてミアは思わず適当に答えるしかんかった。


≪仕方ないっス。適当に答えてもネルちゃんは気付かないっスよ。禁止ワードだけは言っちゃダメっすスよ≫


「そうなの な!の な。立派なねぇねなの な」


 ミアの返事を聞いたネルはドヤ顔で鼻の穴を膨らまし、勢いよく鼻息をプス―と吐いた。


 その姿は歴戦の戦士が見せるようなオーラを纏っていた。


≪戦闘以外でこんなオーラを纏うネルちゃんは初めてっスよ。恐るべしねぇねの力っス≫


 ネルの攻撃が収まったと思ったのも束の間、次に動いたのは金髪の少女シューリンであった。


「私はリオンちゃんのママです。誰が何と言おうとママです。お腹を痛めて産んだ子なんです。愛しいカイ様との間に生まれた愛の結晶です。もちろん従者の皆もカイ様は愛されているのです。それは私と同じです。平等です。でも私はリオンちゃんの母親というアドバンテージがあるのです。もうとっても幸せです。分かります?この幸せ?」


「ええ。リオンちゃんのお母さんとは立派ですねえ」


 ミアはネルの時同様にシューリンの力説に適当に答えていた。


「そうなの。私はリオンちゃんなんて立派な息子を持って幸せなの。愛する人の子供なの。ぐへっへっへっへへ」


 スイよりも鼻息の荒いシューリンはそれだけに留まらず、不気味な声を発していた。


 ――ああ、さっき聞こえていたガマガエルの呻き声は、この人だったのか。綺麗なのに不気味だ……。


≪本当に残念美人ス。主の女従者は基本綺麗っスけど、特殊な性癖のせいで中身が残念な人が多いっスよ≫


「ううううううう。家族の絆によって強くなった我が心で、この禍々しき漆黒の剣の封印を……」


 スイの中二病を発動させての連続攻撃が始まっていたが、さすがにこの人の相手は無理だと諦めたミアは助けを求めるようにリオンの方を見た。


 しかしリオンは巻き込まれるのが嫌だとばかりに、視線を素早く逸らした。


≪さすが主っス。女にも容赦がないっス。鬼畜の所業っス≫


 ――ああ、酷い。リオンさんが私を見捨てた。私はどうすれば……。


 その後ミアはネルの中二病の多重ゾンビアタックに会い、精神を削られていった。

もし感想があればお願いします。

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打たれ弱いので感想は優しくして頂ければと思います。

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