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そう、聖女の息子は魔王様だったのです。  作者: 奥の脇道
そう、『神の園』は問題が一杯だったのです。
18/46

六話 それでも村娘は盗聴趣味が止められない

二章完結までは一日一回投稿する予定です。

二章は全部で二十五話程度を予定しています。

更新時間は十九時です。


面白いと思ったらブックマークお願いします。

天に高く拳を掲げたミアは恥ずかしくなってゆっくりと拳を下した。


 ――でも、相変わらず男性の声は聞こえないわね。師匠は綺麗だからきっと彼氏さんもイケメンに違いない。でも今回は聞けそうもないわね。二人のいやらし……。おっと、二人の食事の会話に異常なしと。他の人の動向も探らないといけないし…。


≪イケメン?イケメンは殲滅対象っスよ。イケメン死すべしっス!休んでる場合じゃないっス≫


 ミアは顔を動かし、耳が違う音を拾うポイントを探した。


 暫くすると、ミアの耳に別の女性の声が彼女の鼓膜を震えさせた。


「どうゆう事よ。私達は儀式に来たのよ。なんで殺人事件なんかに巻き込まれなきゃいけないのよ。全くどうなっているの、この村は。『神の園』って呼ばれるくらいの村なんだから、神の加護を受けているんじゃないの」


 ――お―お―。怒ってらっしゃるわね。ワタクシ、声の判別をしなくても赤毛の釣り目って分かってしまうわ。でもワタクシ人の好き嫌いで標的を選ぶ事はなくってよ。オホホホホホ。


 ミアはよく分からない探偵のコダワリを見せていたが、盗み聞ぎされる側からしたら迷惑千万な話である。


「それに何よ、あの人達は!カスト様が殺されたっていうのに、あの冷たさは何なの。私だってカストと仲が良かった訳じゃないけど仲間意識ぐらいはあるのよ。それなのにアイツ等は普段優しそうにしているくせに、いざとなったら冷たいなんて」


 ――あら、まだ荒れてるわね。でも実際、私は彼女の事嫌いになれないのよね。むしろ多少好感度が上がってるかも。冷静に対処しなきゃいけないユリウス様も分かるけど、仲間のために感情剥き出しで悲しむ彼女も結構好きなんだよね。


≪ツンツン娘にデレ期が来たんスか?本当っスか?≫


「あの善人顔した男なんてスラムで孤児を拾ってきて世話してたくせに。高い位置からなら施しをするけど、仲間が死んでも涙さえ流さないなんて私達を何とも思ってないのね。最低だわ。ただ優越感に浸っているだけじゃない。そんなの貴族として間違ってるわ。貴族とは誇り高いものなのよ」


 ――あら、優しそうなお兄さんはスラムで孤児を保護しているのね。やっぱり優しい人ね。もちろん全員救える訳じゃないだろうけど、自分の目に入る範囲で人を救えるのは良い事だと私は思うけど……。


≪光る源氏計画を遂行してたのはバルトって奴っスか。怖い世の中っスね。ニコニコ顔には犯罪者が多いっス。さあイケメンは殲滅するっスよ。未来の性犯罪者っス≫


「それにあの女もよ。優し気な振りをしていても、心の中は冷血漢じゃない。あの女の彼氏っていうのも、とんだ女を捕まえたもんね。結婚したら途端に大変な事になるわ。必ず」


 ――いえいえ、そんな事はないと思いますよ。師匠は妻になったら、もっと大胆にムフフな感じになるかもとは思いますが。それにしても赤毛釣り目……ああ、今度からはベルティナ様とお呼びしましょう。私に失礼な事をしない限りは。


≪ミアちゃんの言う通りっス。問題は彼氏にあるっス。騙されてるっス。女泣かせっス≫


「ユリウス様は他の二人とはちょっと違ったわね。他の人達同様に泣くことはなかったけど顔は不愉快そうだったから、心の底では仲間の死を悲しんでいるのね。ユリウス様はこれから村を暫く出て、犯人を探しに行くって言っているし。私も一緒に付いて行きたかったけど、儀式を優先させて欲しいと言われたから私はここに残るしかないわね。不安だわ。ユリウス様の身の安全もそうなんだけど。彼がいなくなると儀式をあの二人と協力してやらないといけないし。私自身は聖櫃セイヒツの儀で何を行うのかよく分かってないから、彼らに教えてもらうしかないし」


 ――ああ、嫌いだけど教えを請わないといけないって場面なのね。わかるわ。その心の中の葛藤。私も昔よく経験したものよ。フスン。あれはそう……ああ、今はそんな回想はいらないわね。それはそうとベルティナ様はユリウス様には好感を持っているのね。教会の偉い人みたいだし、捕まえれば玉の輿なんじゃないの。私も妾か何かで拾ってもらえないかしら。今度真剣に考えてみようかしら。


≪俺っちも分かるっスよ。イケメンを殲滅しないといけないのに、女の子を紹介してくれるという甘い誘惑に載ってペコペコと頭を下げてしまう俺っちの悲しいさがが恨めしい≫


「本当にどうしたらいいのかしら。村人は何か知っているかも。『神の園』に住んでるわけだし。助祭に聞くのもあれだから、取り合えずあに汚らしい貧相な娘にでも聞いてみようかしら」


 ――え!汚らしい娘ってもしかして私の事?ムカつく!折角、普通に呼んであげていたのに。もうアンタの呼び名は一生『赤毛釣り目』に確定よ。一切変更は受け付けません。それに村娘の私は聖櫃セイヒツの儀のやり方なんて全然しりまえんよ~だ。私が知っているのは偉い人が来て村で何かの儀式をするぐらいだし。でも知ったかぶりして赤毛釣り目を困らせてやる。私はまだ成長途中であって決して貧相なのではありません。


「そうね。そうしましょう。明日、貧相娘に聞いてみましょう。あの娘も私達に恩を感じているでしょうし」


 ――いえ、決して私は赤毛釣り目に恩など感じておりません。私の恩はユリウス様とベルティナ様とバルト様に向いております。ああ、ここは聞くことはないわ。これ以上聞くと私の精神衛生上悪い影響を受けてしまう。


 ミアは深い後悔の溜息を吐き、耳の集中を一端解いた。


「ふう、ちょっと疲れてしまったわ。相性の悪い人の生活を調べるのも楽ではないわね。次はお口直しに優しいお兄さんにしようかしら。それがいい!そうしよう」


≪盗み聞ぎよりも滅殺を優先するっス。後悔する事になるっスよ≫


 ミアは深く息を吐き出し、瞼を閉じた後に澄んだ空気を吸い込み意識を耳へと集中した。


 ミアの魔力が耳に集中し、周囲の音を拾いだした。


 それは森の生命が出す音を拾い、空を舞う生命の命の音を拾い、村の人々の生活の音を拾った。


 その幾千の生命が奏でる音の中から彼女はお目当ての音色を引き当てていた。


「そうか……カスト、君は行ってしまったんだね。僕はもう少し君と一緒に居たかったんだけどね」


 ――あっ!この声はバルト様だ。バルト様もカスト様の事を悲しんでいたのね。やっぱりこの人は優しい人だったんだね。私の嗅覚に間違いはなかったわ。まあ誰が見てもバルト様はいい人なんだけどね。バルト様を悪人呼びするのは、赤毛釣り目だけだしね。


≪俺っちのピンクの脳細胞がコイツを抹殺しろと言ってるっス。抹殺リストにも記載ありっス≫


「残念だよ、本当に。でもユリウス様が捜索に向かうらしいから後の事は大丈夫でしょう。彼が全て上手くやってくれる」


 ――ああ、バルト様はユリウス様のことを本当に信用しているのね。犯人を絶対に見つけてくれると。犯人はやっぱりあの乱暴者のニーマンなのかな。でも偏見はダメよ。私は探偵なんだから。


≪あれ?現場から逃げる奴が犯人?ユリウスが犯人っスか?いや、このイケメンも………イケメンは敵っス。イケメン二人を抹殺っス。これで事件は解決っスよ≫


「私は自分の役割をする事しかできない。せめてユリウス様に託されたベルティナ様の面倒をしっかりと見て、儀式を滞りなく行わなくては」


 ――バルト様は儀式について詳しく知っているみたいね。何か儀式の内容を話してくれないかな。


≪まさか教える弱みに付け込んでいけない事するっスか?犯罪は駄目っスよ!俺っちは断固女性の味方っス≫


「ふう。これからが大変だ。ベルティナ様は僕の言う事をしっかりと聞いてくれるかな。う~ん。無理だろうなぁ。ストレスが溜まりそうだよ。ああ、こういう時に思い出しちゃうな」


 ――そうよね。あの赤毛釣り目の高飛車娘じゃ無理じゃない?ねえ、そうよね。そんなにストレスを溜めると剥げちゃうわよ。剥げちゃう。剥げちゃう。こんな優しい人がストレス溜めた時に何を思い出しちゃうんだろう?純粋に好奇心が湧くわ。


≪俺っちも職場で虐められてよく脱糞してるっス。ストレスで糞の色がピンクに変色してるっスよ。社会って厳しいっスね≫


「あの孤児の兄妹は二週間程度で本当に元気になっていたなぁ。助けた時も兄が妹を守るように倒れていて、本当に兄妹仲も良かった。本当に幸せそうにしていて僕も心の底から幸せになったよ」


 ――赤毛釣り目が言っていたようにバルト様は本当に孤児を助けていたんですね。さすがです。拾った孤児が幸せそうにしているのを見て、自分も幸せだなんて。どんなけいい人なのよ。


≪駄目っス。孤児を拾ったのが光源氏計画のためなんて俺っちのお尻がプリプリなくらい当然の帰結っス≫


「また彼らに会いたいな。でも会えないんだよなぁ。困ったなぁ。ストレスが溜まるね。ふう~」


 ――ストレスの解消が孤児に会う事だなんて。でも今は儀式の真っ最中。直ぐに王都に帰る事は出来ないもの。暫くは我慢するしかないもんね。こんな良い人には辛いわね。


≪俺っちのストレス解消って何スかね?主の頭の上で脱糞することっスかね。そういえば俺っち脱糞ばかりで放屁はあまりしないっスね。俺っちが火属性なのと関係があるんスかね?≫


「仕方ないか。この村で同じような感じの子達でも探してみるかな。ハハハ。楽しみだな。そう考えると少しやる気が出てきたかも」


 ――バルト様は兄妹の幸せな笑顔をご所望なの?私には兄弟はいないけど近所に住むメアリとは姉妹の様に育っているわ。きっと優しいお兄さんの求める幸せな笑顔ってやつは私達二人で出来ると思うの。私の妹分は本当にかわいいんだから。一応確認だけどバルト様はロリコンじゃないわよね?え?疑っているわけじゃないのよ。良い人だから疑っていないんだけど、メアリはかわいいから。ついね。私ならいつでも大丈夫よ。妾バッチコイよ。玉の輿のビックウェーブに載るわよ。待っててください。未来の旦那様。


≪ミアちゃんや。残念なお知らせっス。光源氏計画の発動対象は年齢一桁だけっスよ。メアリちゃんは対象になってもミアちゃんは対象には多分ならないっス≫


「取り合えず今日はもう休むんで、明日からベルティナ様の世話を焼くとしよう」


 ――じゃあ、私も明日はメアリと一緒に貴方の前に颯爽と現れるわ。早速準備しなくちゃ。


≪俺っちもプリプリのお尻を維持するために早く寝るっス。夜更かししたらお尻が垂れてくるっス≫


 ミアは耳への集中を解き、教会の宿舎の壁から離れ勢いよく走りだした。


 しかし、彼女は教会の敷地ギリギリのとこで急に立ち止まった。


「いけない。当初の目的を忘れて欲望のままに行動しそうになっていた。私は探偵よ。決して迷探偵ではないわ。危ない危ない。最後はユリウス様ね。イケメンの声を聴くなんてドキドキするわ」


≪え?まだ帰らないんスか?俺っちはもう疲れたっスよ。ナレーションはしたくないっス。職場の待遇改善を要求するっス≫


 彼女は再び魔力を耳に集め周囲の音を拾い始めた。


「本当に面倒な事になったよ。なんて事してくれるんだ」


 ――あれ?これユリウス様の声?かなり荒れているわ。普段はこんな声なんて出さない人だと思ったのに。やっぱり彼もこの事件にかなりの憤りを感じているのかしら。絶対そうよね。


≪やっぱりっス。イケメンにはダークな心が潜んでいるっス。一皮むけばこんなもんス。とうとう正体を現したっスね≫


「取り合えずの儀式はバルトに頼んだから大丈夫だろうけど、本当の聖櫃セイヒツの儀は私でないと出来ないからな。早く戻って来ないといけないな」


 ――そうなのね。聖櫃セイヒツの儀ってユリウス様がいないと完成しないのね。さすがイケメン。イベントに主人公は不可欠ってやつね。でも最後のいい場面で登場するのよ。そういう運命なのね。


≪本当の聖櫃セイヒツの儀って何スかね?聖櫃セイヒツって箱の事っスよね?何かを片付けたり納めたりするんっスかね≫


「私がこの村を離れていられるのは、精々五日ぐらいだろうか?ふむ。であればほぼ全力で森を駆けないといけないな」


 ――ええ!この森を五日も全力で走りぱなしなの?そんなの私だったら死んじゃう。本当にユリウス様は大変だ。


≪俺っちのこの翼をもってすれば大陸の端まで一瞬っスよ≫


「ではさっさと準備をして直ぐに出発するか」


 ――今から出発するの?もうすぐお昼だからご飯位食べていけばいいのに。でも『ご飯食べて行ってください』なんてとても私の口から言えない。せめてここで陰ながら祈らせてください。


≪俺っちもイケメンのナレーターはしないっスよ。絶対に拒否するっス≫


「ああ神様、ユリウス様に神のご加護!彼の身体が無事でありますように」


 ミアは膝をつき、両手を組んで神に祈りを捧げた。


≪今日も疲れたっス。あ!家に帰って疲れたっていうのは子供の教育に悪いっスね。楽しかったって言うべきっスね。子育て中のシューリンちゃんに殺されるところだったっス。今日の晩御飯は焼き鳥にするっスね≫

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