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そう、聖女の息子は魔王様だったのです。  作者: 奥の脇道
そう、覚醒したのは魔王様だったのです。
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一話 魔王様?登場

初投稿です。

読むのが好きで思わず自分でも書いて投稿してしまいました。

一章が終わるまでは一日二話投稿します。

午前7時と午後7時です。

全十二話です。

よろしくお願いします。


最近はやりのAIでのナレーションを搭載。

ちなみにAIは人工知能ではなく、アホでいい加減って意味なので悪しからず。

AIナレーションは≪≫でくくっています。

特に物語に関係ないので読まなくても大丈夫だと思いますが、ネタバレとか飛んでもないことをぶっこんできますので読まれる方は気を付けてくださいますようお願い申し上げます。

フワフワと漂っていた所に、重厚な扉が突然現れた。


 扉を開こうと手を掛けたが、扉は何の抵抗もなくゆっくりと音もなく内側に開いた。


 扉の向こうには薄暗い部屋が広がっており、窓は分厚いカーテンで遮られており現在が昼か夜かも分からなかった。


 部屋の奥には重厚な木の執務机が鎮座しており、そこから気配を感じたが椅子は背を向けており姿を確認する事は出来なかった。


「おや?お客ちゃんかな?」


 自分の存在が何者かも分からなかったが、声に無条件に反応して頷いていた。


「ここに辿り着いたという事は君は人生に退屈を覚えたいたのだろう。もしくは潤いを求めていたのかな?」


 声の主はそのままの姿勢で、暗がりでよく見えないが机の上にある大きめのシガーケースに手を伸ばそうとしていた。


「そう。ここは現状に満足できない者が探索することでしか辿り着く事のできない場所なのだよ。ククク」


 ガタリとケースの蓋を開け、椅子の向こう側の影は中から一本を取り出した。


 影は先に付いた部分を噛み切り、空中に火を出すと先端部分を炭化させるようにし遠火で全体を回しながら温め始めた。


「私はナビゲーター。君のような好奇心旺盛な魂に物語を紹介する者。今回紹介するのは母と愛する息子の物語」


 影は火を太くし、まだ全体をあぶり続けていた。


「では旅立ちの時が来たようだ。目を瞑ればそのまま物語を見る事ができるよ。さあ瞑ってみなさい」


 影に言われるまま目を閉じると、周囲の気配がドンドンと消失していった。


「ではお客様。良い旅を」


 だが全ての意識は旅立たずにその場に少しの残滓が残り続けた。


「コケー。俺っちのナビゲートどうだったすか?こういった渋い役も俺っちにかかればコケコケのコケっスよ」


 椅子に座っていた影は椅子を回転させ、姿を露にした。


 その頭は大きく頭頂部に炎のような毛が生えており、口は黄色く大きかった。


「コケ?【母】の部分を【母であり恋人であり】に変更っスか?流石に難しいっスよ」


 椅子から降りてお尻をプリプリと振りながらナビゲーターと名乗った者は物言いがついた事に反論していた。


「コケ?【ねぇね】が入ってない?題名が【そう、聖女の息子は魔王様だったのです。】っスよ。お姉ちゃんを主張しちゃうと物語的におかしくなるっスよ」


 短い足をバタバタさせながら抵抗していた。


「コケ?【闇黒の波動が……】て中二病的な事って今は不要っスよ」


 ペンギンのような小さい羽をブンブン振っていたが、そこには先程から炎に炙られている焼き鳥が握られていた。


 見た目は完全に不細工な鳥なのだが、それが焼き鳥の串を握っているのはシュールな光景だった。


「モグモグ。今回は俺っちナレーションも担当するっス。脅しても駄目っすよ。脱糞なんてしないっスよ」


 焼き鳥をもしゃもしゃ味わっていたが、其々から殺気を飛ばされたのかピンクの鳥は思わずブルブルと脱糞してしまった。


「苦情は我が主からしか受け付けないっスよ。今回、俺っちも男になるっス」


 キリと顔を決めたピンクの鳥だったが、床は糞でピンクに汚れていた。


 糞の臭いに当てられたのか、残っていた意識の残滓も物語へと旅立った。


 ◇◆コケ◇◆コケ◇◆◇コケ◆◇コケ◆◇


 森とは本来、人に優しいものではなく恐怖心を芽生えさせるものである。


 そんな暗闇が広がる森が不自然に途切れている場所があった。


 さらに抜けて行くと闇は霧散し、人々は安心を覚えることだろう。


 光が天から零れ落ち、後ろの森の闇とは隔絶されている様にさえ思えるそこは少し開けた広場になっていた。


 そこで最初に目に入るのは広場の壁となっている崖であろうか。


 高さとしてはに二十メートルはくだらないだろう。


 崖のふもとには人が一人通れる位の穴があいている。


 穴は見た目とは違い奥に深く広くなっており、そこからは争う人々の声が聞こえてくる。


「母様を放せ」


 歳の頃は十四の少年が百八十㎝弱ある汚い恰好をした男に向かって叫んでいた。


 男は左手でナイフを弄びながら、右手で少年の母親の喉を鷲掴みにしていた。


「あはははっ! 聖女様の息子がこの僕に命令ですか?」


 男は子供のようにコロコロと笑いながら母親の腹に蹴りを入れて右手を放した。


 母親は男の後方へと崩れ落ち、ゲホゲホと咳き込む。


「母様!」


 少年はたまらず母親の元に駆け付けるため男の横を駆け抜けようとした。


 しかし、そんなことを男が許すはずもなく、すれ違いざまに少年の腹に持っていたナイフを深く突き立てた。


 少年は駆け出した勢いそのまま、母親の元に倒れ伏す。


「リオン! リオン!」


 母親は息子の名を呼ぶが少年の反応は乏しい。


 それに反し母親がまとっている衣服は白から赤へと瞬く間に染め上げられていく。


「あはっ! 僕を救ってくれなかった聖女の息子を僕が殺せる時が来るなんてね。これも全ては神のお導きだね」


 少年を刺した男の顔は醜く歪みながらも歓喜に打ちひしがれていた。


 どうしてこうなったのだと少年は今日の記憶を思い出すのだった。


 ◇◆コケ◇◆コケ◇◆◇コケ◆◇コケ◆◇


「母様行ってきます」


 少年リオンは片手剣が腰ベルトに吊り下げているのを確認しながら母親に声をかける。


≪この男、女の子のような顔をしているが剣士を目指しているっスよ≫


「リオンちゃん。気を付けて行くのですよ。行き慣れているとはいえ、森は危険な場所ですから」


 白一色の神官衣をまとった母親からくぐもった声を掛けられる。


 リオンは声に反応し母親の顔に視線を向けるが母親の表情は読めない。


 母親に感情がないのではなく、顔全体を白い布で覆い隠しているからである。


 もっとも息子を慈しむ気持ちは表情を見ずとも態度などに現れているので、彼女の愛情を感じるのに表情を読み取ることはリオンにとって特に重要ではなかった。


 ただ、顔を隠しているのは愛情の問題ではなく、彼女が病にかかっており身体が爛れていたり、皮膚の一部が硬質化して魔物の様になっているからだ。


 そのため顔だけでなく手も白い手袋で覆われおり、彼女の肌がさらされている部分は一つもない。


≪この女、慈愛の心を持ち昔は聖女と呼ばれていたっスよ。今は魔王の瘴気を浴びて身体に悪影響受けているっスよ。リオンは知らないみたいっスが。え?これまだ言っちゃいけなかったスか……コケコッコー≫


「母様、体に触るのでしっかりと寝ててください」


「大丈夫よ。今日は調子がいいのよ」


「分かりました。僕が出かけたら、ちゃんと寝てくださいね。ところで姉ちゃん達は何をされているのですか?」


≪そうっス。リオンには二人の似てない姉がいるっス。まあ血なんか繋がってないっスから当たり前っスね。え?これもまだ言っちゃ駄目?コケコケコー≫


「スイちゃんは剣の稽古かしら。ネルちゃんはいつも通りのお昼寝ね」


「まだ朝なのにお昼寝って」


「お昼に帰ってくる時に見かけたら、ひと声掛けてね」


「わかりました。では改めて行っきます」


 リオンは住居にしている洞窟を出ながら、二人の姉について考えていた。


 長女はネルといい、身長は百三十センチ位だろうか。瞳は雪が輝く様な白銀色。髪は銀糸の様だが地面に付くまで伸ばされており、髪型は常に寝癖がついている。常に眠そうにしており、起きていても目が半眼になっている。


≪幼く見えても舐めて掛かったら駄目っすよ。俺っちは殺気だけで脱糞してしまうっス。あっ!脱糞てのは嘘っス≫


 次女はスイといい、身長は百五十センチ中頃。瞳は森の生命力を思わせる緑色。髪は胡桃色でウェーブが掛かっており、肩で切りそろえられている。剣が好きで常に訓練しているがリオン以上に才能がなく、剣を構えるだけでふらつき、対戦相手に切りかかると必ず転ぶか相手に激突するほどの才能のなさだ。


≪中二病以外は常識人っスかね。こっちも睨まれただけで脱糞ものっス。まあ二人とも今は記憶がないのでどうってことないっスけどね。ええ?これも言っちゃ駄目だったっスか?まあ大丈夫っスよ。今は主も記憶ないから俺っちのナレーションには一切気付いてないっスから≫


 現在のリオンは十四歳なのだが、彼自身が物心ついた時から、不思議なことに彼女達の姿形が全くと言ってよいほど変わっていない。


 自身の髪色が黒髪、母親が金髪、上の姉が白銀髪で下の姉が胡桃色なので、そもそも血が繋がっているかどうかも微妙なのだが。


≪今の主は記憶がないから自分の女顔が嫌いっスよね。なんか男らしいのに憧れてるみたいっスね。ゴリラマッチョに強い憧れがあるっスよ≫


 まあ考えたところで答えはでないのだが、どのような事が起ころうとも彼女達は彼にとって守るべき大切な家族と思っているのは間違いないのだ。


 リオンは考えることを止め、天まで抜けるような青空を見上げた。


「今日は雲一つない良い天気だ。今日も頑張るぞ。うん? あれはなんだ?」


 青空に浮かんだ黒い染みのようなものが徐々にこちらに近づいてきていた。


≪あれは俺っちっスよ。カッコイイ登場っス≫


 黒い染みがピンクの物体へと認識を変えたところでリオンは空への興味をなくし森への入り口へと歩みを進めた。


 森の入口直前でリオンは歩みを止め、再度空を見上げた。


 ピンクの物体は滑るように少年の前に降り立ち、その姿を露にした。


 それはまさに空飛ぶピンク色の豚鳥。背丈は少年の太腿位まであるが横幅も大きいので小さいドラム缶のようだ。


 目つきは悪く炎のような赤毛がトサカのように登頂部に生え、お尻はプリプリしてデカい。


 最初は晩飯で焼き鳥にするために捕まえようとしたのだが、捕まえることが出来なかった。


 そしていつの間に懐かれてしまい、デブ鳥のことを焼き鳥と呼ぶようになっていた。


≪ちょっと待つっス。ナレーションは俺っちの仕事っス。俺っちの紹介文がおかしいっスよ。もう任せてられないっス。ああ、マイク、テステス。天空から滑空してきたのはピンクの可愛らしも凛々しい姿をした……ギャ―、ブルブルブル、止めるっス。脱糞してしまうっス。殺気を止めて欲しいっス。もうしません。真面目にするっス。コケコケコケ≫


「コケコケー! コケ」(無視するんじゃね-っスよ! くそ坊や)と少し甲高い声で騒いでいる。


 焼き鳥がコケコケ騒いでいるだけなのだが、悲しいかなリオンはなぜか言っている事がなんとなく分かってしまう。


「ついついね」


「コ! コケ」(なんでスと! これだから坊やは……っス)


「ところで今日は何のようでしょうか?」と三下っぽいピンクの塊にリオンは丁寧に質問する。


「コケ。ココケ」(思い出したっス。今日は訓練してやるから俺っちについて来いっス)


 焼き鳥が森に向かって歩き始め、羽で親指を形作るようにしてクイクイやっている。


 言う事を聞かないとコケコケ騒ぎだしクチバシで突いてくるので諦めて付いて行くことにする。


 焼き鳥のクチバシ攻撃は地味に痛い。


 姉様達と同じで、この不思議なデブ鳥にも謎が多いが気にしても今更なので、もう気にしないことにしたリオンであった。



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