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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.12.
99/2264

評価




 使うか、いや、まだ早いか。

 でもそろそろ、

 いや、だが、


 黒のダイヤル式電話機に、手を伸ばしては引っ込める。

 この動作を何回繰り返してきた事だろう。

 初っ端から数えていないので知らないが、きっと十億にはなっている。

 今日の分を加えたら、十億百回目となるわけだ。

 十億百回。


 はああああぁ。


 意気地なし。

 優柔不断。

 どっちでも、そろそろ決断の時だろう。

 やれ自分。

 自分できる子。

 うし。


 罵り、励まし、拳を作り。


 ダイヤル式電話機に背を向けて、寝転がる。


 いやいやいや。やるよ、やるやる。

 明日やるから。

 決めたから。

 絶対明日やるから。






 明日も無理でしょうね。

 彼の人を見ていた天使は首を柔く振った。



 

 たった一度だけ地上と連絡を取る事ができる。

 死者が望むのならば、




 彼の人は生きている間は評価されなかった己の作品が、死後どうなっているのかを知りたいらしいのだが、たった一度の機会なので、なかなか決断できずにいるらしい。


 まだだったかと悲哀の叫びを上げる事を恐れているのだ。

 されなかったかと納得の呟きを零す事を恐れているのだ。  



 恐れる必要はないだろうに、



 地上の情報が得られる談話室にも一切寄らず、こんなところで独り黒電話の前に根を張ってないで、そろそろいいのではないかと助言した辺りで、さっさと連絡を取ればよかったのだ。


「あなたを待っている人がいるのに、」






(2019.12.9)




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