評価
使うか、いや、まだ早いか。
でもそろそろ、
いや、だが、
黒のダイヤル式電話機に、手を伸ばしては引っ込める。
この動作を何回繰り返してきた事だろう。
初っ端から数えていないので知らないが、きっと十億にはなっている。
今日の分を加えたら、十億百回目となるわけだ。
十億百回。
はああああぁ。
意気地なし。
優柔不断。
どっちでも、そろそろ決断の時だろう。
やれ自分。
自分できる子。
うし。
罵り、励まし、拳を作り。
ダイヤル式電話機に背を向けて、寝転がる。
いやいやいや。やるよ、やるやる。
明日やるから。
決めたから。
絶対明日やるから。
明日も無理でしょうね。
彼の人を見ていた天使は首を柔く振った。
たった一度だけ地上と連絡を取る事ができる。
死者が望むのならば、
彼の人は生きている間は評価されなかった己の作品が、死後どうなっているのかを知りたいらしいのだが、たった一度の機会なので、なかなか決断できずにいるらしい。
まだだったかと悲哀の叫びを上げる事を恐れているのだ。
されなかったかと納得の呟きを零す事を恐れているのだ。
恐れる必要はないだろうに、
地上の情報が得られる談話室にも一切寄らず、こんなところで独り黒電話の前に根を張ってないで、そろそろいいのではないかと助言した辺りで、さっさと連絡を取ればよかったのだ。
「あなたを待っている人がいるのに、」
(2019.12.9)




