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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.11.
93/2213

秋の陽気




 冷たく乾いた季節に入る半歩手前。

 珍しく湿度が六十パーセントある本日。

 緑、黄、紅、橙に染まります楓の木の下。

 包まれますのは、ぽかぽか陽気だけに非ず。

 微動だにすれば、カサカサ枯葉の動く音。

 飛び跳ねたい衝動をこらえてましては。

 頬を掠める微風にまゆじりを下げて。


 あー、きもちいいいなあ。


 意図して出した感想は。

 意図した以上の音量を持って。


 なにがおかしいのか、腹の底から笑いが噴出。


 あーきもちいいなあ!


 


「楽しいの?」

「うん」


 呆れた顔はけれど、冷ややかではなく温かいもの。


「やろうやろうと思って、いつしかこんな年になってました」

「それはそれは。念願叶ってようございましたね」

「ええええ、それはもう」


 澄まし顔で見返して、次いで、匂いに釣られるように枯れ葉布団から上半身を起こした。

 カサカサと、軽快な音が心身を軽くする、愉快にさせる。

 

「自宅?スーパー?」

「焼き芋屋さん」

「お、珍しい」

「早く立ち上がりなさい」

「んー。離れがたい」


 紙袋から取り出し、焦げ目のある焼き芋にかぶりつく姿を視界に入れながら、まだ渋るも。

 さすがに四個目を取り出し、食べる姿を見せられれば、立ち上がざるを得まい。


 カサカサと軽快な音を背中で受けながら、来年は枯れ葉をもっといっぱい集めて、少し高いところから飛び込んでみようと決意した。






(2019.11.13)




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