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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.11.
92/2264

下駄の日




 カランコロン。

 カラ、ンコロン。


 そびえたつ山の頂から、下駄が転げ落ちるたびに音が聞こえる。


 カランコロン、と。


 薄桃、

 白、

 深緑、

 淡香

 褐。


 下駄の山に咲くのは、山茶花。

 たった一本の指、それも軽く押してしまえば、一瞬で瓦解しそうな不安定な山を支えているのか。


 カランコロン。


 頂からまた、下駄が転げ落ちる。


 下駄が転げ落ちるたびに、花びらが散る。

 一輪をかたどる、幾十ものはなびらが舞う。


 桜の散り様は美しいと感じるのに、

 山茶花はどうして物悲しく感じるのか。


 季節の所為か、

 場所の所為か、




 カランコロン。


 名は同じでも、量と響きが違う下駄の音。


 カランコロン。  


 ここにいると、知らしめる力強い音。


 口の端が上がる。

 知らずか、

 意図してか。

 判別はつかない。




「死人にしては景気のいい音ね?」




 カランコロン。

 三つの音が重なった。




「勝手に殺すな、勝手に墓標を作るな」




(2019.11.11)





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