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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.10.
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みかまほしかほり




 金木犀を探せたら解放してやる。


 供物に告げれば、速攻で探しに行きやがった。

 その嬉々とした姿は、情を抱いたのは己だけかと面白くない感情を噴出させる。


(まあ、探せるかはわからんが)



 懐古へと誘うような。

 片田舎で作られる素朴な菓子のような。

 酸いも甘いも知らない姫のような。 


 金木犀の香りを人の感性を借りれば、そう、評せられるだろう。

 

 とても小さい橙の花々からは想像できない芳香は、遥か遠くまで届けられる。

 とても小さな橙の花々だけに、探したくても、そう容易くは探し出せない、まぼろしの植物。



 れもんと蜂蜜で煮たりんごを一つ手に取って食べる。

 供物が持ってきた、供物が言う、世界の一つだ。




『私一人で満足するなんて、神様って、とても小さい存在なのね』


 恐怖は一切なく、

 あるのは、憤懣やるかたない意志のみ。


『私が、私たちが、あなたに世界を捧げる』



 供物はそう言うや、さらなる供物を連れて来た。


 手料理、知識と道具、衣服。

 それぞれがそれぞれの分野で、己に供物を捧げてきた。

 世界を捧げてきた。




「見つけられたか?」


 花の色どころか、形さえも判別できないような世界の訪れ。

 しおしおとしょぼくれた供物に、答えは知っていても話しかければ、やはり、見つけられないとの返事が出てくる。


 それはそうだろう。

 神さえも見つけられないのだ。

 たかだか、供物の分際で見つけられるわけがない。


「ならば供物のままだなおまえは」

「……また明日来ます」


 さようなら。

 頭を下げて、背中を向けて歩き出す供物に、今日は言ってやらなかったなと思い出す。


(まあいい。明日言えば)


 そう思い続けて、もう何年が経つだろうか。

 供物の名を聞き出せないまま、もう何年が。











「まだ見つけられないけど」


 そうだとは知らない神様に、けれど、まだ教えるつもりはなかった。


「絶対に探し出すから」


 だから、

 世界を見てもいいと思うまで。

 私たちはあなたに世界を捧げ続ける。




(2019.10.2)



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