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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.9.
85/2213

おいうやまい 1




 蒸し暑い日々に終わりが見えてきた、とある休日。

 部屋の窓を開けた、とある午前。

 土埃が突入してきそうな強風によって部屋に入り込んで来たのは。


[好きです。付き合ってください。九月十五日の十三時から二十四時まであの場所で待っています]


 とある恋文である。




 今時手書きとは珍しいと感心しながらも、私はこの恋文の処遇をどうすべきか考えあぐねていた。

 本日、九月十六日である事、この恋文がどういった経緯でここまで運ばれてきたかがわからない事、加えて、筆者も宛名も知っている人物だったからだ。

 どうするか、

 数分間考えて、答えが出せなかったので、母に相談する事にしたのだが、その結果、私は母からとある事を頼まれてしまった。


 三年前の出来事である。


 

 



「じっちゃん。返事。あと二十年は待てって」

「…あっそうかい。まあ、二十年経ったら否が応でも会う事になるだろうけどよ」


 別に私は気にしていませんよ全然。

 なんて事はない口調で告げては、じっちゃんは縁側から庭へと足を運んだ。

 背中に物悲しさを感じるのは、季節のせいだけではないだろう。

 乾燥何それ美味しいの。

 と首を傾げんばかりに育ちまくる草をむしり始めたじっちゃんに背を向けて、手伝う事にした。

 



 土埃が身体に当たって痛く感じるほどの強風が今日も噴く。

 この風が遠く、ばっちゃんの居る場所まで恋文を届けてくれたら。

 実際にばっちゃんが恋文を見たら、返事は違うのだろうか。

















 離婚して五年経った頃から、じっちゃんはばっちゃんに復縁を求めたらしいんだけどね。

 ばっちゃんが突っぱねて、また二十年くらい顔を合わせる事はなかったんだけど。

 真向いに引っ越してきたかと思えば、その恋文が、突然送られて来たのよね。

 内容はずっと変わってないわ。

 莫迦ね。

 もう母さん、おばあちゃんは遠い場所に居るのに。

 最初は私も今更何よって腹が立って無視してたんだけど、時が流れて、もういっかって思うようになって、おばあちゃんに話したのよ。

 そしたら、三十年後なら考えてもいいって。

 それから、この恋文が来たら、おばあちゃんに言って、返事をおじいちゃんに伝えた。

 もう、十年。

 私としては、そろそろ会ってあげてもいいと思うのよ。

 復縁するにせよしないにせよ、面と向かって話し合った方がいい。

 けど、どっちも頑固でね。

 私じゃあ、だめみたい。

 って事で、あとは任せた。

 世界どころか、宇宙をまたにかけるばあちゃんと、ここから意地として離れないじいちゃんが会えるようにしてあげて?




(孫が可愛いと言っても、限度はあるよ、母さん)


 今年も今年とて、母の願いを叶えられなかった私は、せめても、草むしりを手伝うのであった。





 

(2019.9.18)




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