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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.7.
82/2264

なつにふれる



 

 ふと、意識が上昇すると、眠る時に覆っていた物がないことに気づく。


 寒くはなかったけれど、なんとはなしに、ベッドから落ちかけている掛布団に手を伸ばした。

 掴んでは、引っ張って、お腹と胸だけを覆い、腕を掛布団に沈ませる。

 寒くなかろうが暑かろうが、風邪をひかない為にお腹だけは掛布団で覆っていなくてはいけない。

 幼い頃から言われ続けたおかげか、その通りにしないと、どうやら落ち着かなくなってしまったようだ。


 結果、これで心身ともに満足したはずなのに、

 なにかちがう。

 なぜだかものたりない。


 また掴んで、引っ張り上げて、今度は腕と言わず、肩も首も掛布団の中に隠した。

 

 ああ、寒かったんだ。


 掛布団が温かいと気づいた途端、折り畳んでいる部分を足で押し上げては広げて、顔以外を全部掛布団で覆った。

 

 ああ、寒かったんだ。

 実感して、目を閉じた。





 

 多分、これはあの時と同じだ。

 

「寂しかった」

「うん」


 あなたの腕に私の手が偶然触れて、初めて、その感情に気づいたのは。

 

 触れなければきっと、私はその感情を知らないままでいた。



 

(2019.7.22)


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