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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.6.
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かみなり様




 稲が開花し結実する旧暦の夏から秋の初めにかけて雨に伴い雷がよく発生し、稲穂は雷に感光することで実る、という信仰が生まれ、雷を稲と関連付けて、稲のつま(=配偶者)と解し、稲妻、あるいは稲光などと呼ぶようになったいう。


 雷の空中放電により、空気中の窒素と酸素が反応して窒素酸化物を生成(窒素固定)され、さらに酸素により硝酸に酸化され、亜硝酸塩が生成され、植物が栄養分として利用できる物質となる。


 以上。ウィキペディアより参照。






 各々方は、かみなりに対してどのような想像を抱いていただろうか。

 私はたった一言。

 恐怖に尽きる。


 学校だったからか、友達だったからか、両親だったからかは忘れてしまったけれど、雷が植物に影響を与えるという情報を得ても、その概念は覆らなかった。


 きっと、一生。


 この子に出会わなければ、






「申し訳ございません。申し訳ございません。申し訳ございません。わたくしの姿は見えないはずなのですけれども、どういうわけかあなた様には見えていらっしゃるようでして。いえいえいえ!あなた様が悪いのではありません。わたくしの力不足でございますので、どうかお気になさいませぬように。どうぞ、どうか、わたくしはいないものとして扱ってくだされば幸いなのですけれど。あああああ。何故わたくしの姿を見えるあなた様を破局させなければならないのでしょうか。ぐえぇぇぇぇえ。胃。胃があぁぁぁあ、」


 うずくまって大泣きしている子どもを見かけたから、どうしたのか訊いたら以上のようにまくしたてられる始末。

 早口すぎて、ほとんどが通り過ぎてしまったが、破局の言葉だけはしっかり聞き留めてしまっていた。


 あー。恋人と別れることになるのか。


 すんなり受け止められても、残念ながら悲哀は襲ってこない。

 なんとなく、予想はできていた。

 別にどちらがどう悪いというわけでもなく、強いて言うのならば、一緒にいる理由を見つけられなかっただけだ。

 見つけようとする気力さえ湧かなかっただけだ。

 そのくせ、どっちも別れようとは言わないのだから質が悪い。


「あー。泣かないで。全然気にしないから。むしろ、感謝する。いいきっかけになった」


 これは神様のお告げだ。

 いいように受け取って、早速今日にでも別れを切り出そう。


 あー。

 なんか、晴れ晴れしてるかも。

 人がいなければ、鼻歌を奏でたいところだ。

 

「あああああの」

「なに?」

 

 視界に入っているようで見ていなかった子どもの呼びかけに応じてみれば、ぎょっと後ずさってしまった。

 放電しているのだ。


「え?」

 

 え。なにこれ、やだこれ。

 破局って、あれ。

 どっちかがあれですか。

 あれしないとだめなやつですか。




 あれ。

 泣いている。

 真っ白。

 最終的に混乱する頭の中に残っていたのはこの三つだけでした。



















 各々方は、かみなりに対してどのような想像を抱いていただろうか。

 私はたった一言。




「そろそろ私も文句を言っても構わないと思うんですよね」

「はい」


 しょぼくれる子どもを見てももう、胸に痛みは走らない。

 私は私なりに努力をしたからだ。

 子どもを見ても、動揺しないようにした。次には無視をした。次には平然とした。

 それなのに、

 それでも、だ。

 子どもは本来見られてはならないと言って、私に雷を落とすのだ。

 曰く。これで、子どもの記憶が消えるらしいが現実はどうだ。

 何度雷を落とされようが消えはしない。


 何度目か数えて、その数字を見て、私はもう、腹が立った。

 死への恐怖を何度味わせるのかと。


「どんだけ理不尽なんだー!!!」

「ごめんなさいぃぃぃぃい!!!」


 そうして今日も雷が落とされる。


 絶対この理不尽を克服してやると、私は固く誓うのであった。






(2019.6.28)



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