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禁断の果実
生命の色を凝縮した色とは、眼前の果物を指すのではないだろうか。
二日前には見せていなかったその色を前にして、思わず唾を呑み込む。
『いいかい。これからはもう食べてはいけないよ。食べたら、』
食べたらどうなるの。
恐ろしいことになるよ。
常になり神妙な顔はけれど、不気味に思うよりもおかしくて吹き出してしまい、余計な怒りを買ってしまった。
一日前の出来事である。
あれを食べられるのならば、死んでも悔いはない。
そう思わせる魅力があるのだ、今の果物には。
どうしよう。
きっと食べたら死ぬんだわ。
死んで、私の王子様が来なければ死んだままだわ。
自分で想像しておいて、やはり吹き出してしまった。
今の私は箸も転がればおかしな年ごろなのである。
ううん。まあ、いいか。
手を伸ばして、果物をもぎ取り、一切の躊躇なく。
歯を立て、顎を動かし、かじりついた。
瞬間、断末魔の悲鳴が耳を直撃した。
自分の出した声だと、認識は、できなかった。
「食べるなと言ったのに」
「ひどいよ。なら渋柿みたいに渋いよって言ってくれたらよかったのに。うう。口の中が渋い。何を飲んでも渋い。あんなに美味しそうな色だったのに」
(2019.6.18)




