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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.6.
77/2215

影喰と魔法使い




 千慮一失だった。

 まさか、俺の行いがこんな悲劇を生むなんて。

 予想だにできなかったんだ。






 あ。

 一粒の雫が横一文字に飛んでいる。

 よっぽどの強風が噴いているんだな。

 なんて。

 意外にも俺は冷静だったと思う。


「っち。影が出てこんとは。まだまだ下っ端か」


 あらあら、ご婦人がそんな乱暴な物言いをするんじゃありませんよ。

 もっとおとしやかな物言いがあなたにはお似合いですよ。

 そっと、たしなめてあげたい。

 願望さえ抱く俺はやはり冷静だった。

 

「朔望。おまえ、こいつが一人前になるまで一緒に行動しな」

「えー。だから私はこのまま御雲様になってもいいんだって」

「じゃあかあしい。巽に拾われたからには巽の言う事を聞きな」

「横暴だー」

「じゃあかあしい」

「あ、あの」

「てめえの影喰が未熟だったせいで、朔望が地に立てなくなるばかりか、地から離れて行っている。てめえのせいだ。なんとかしろ」

「あ」


 今までとは違う意味で顔面蒼白になった。


 確かに俺は影喰として、まだまだ未熟だ。

 だがまさかしかし。

 こんな大失態を犯すなんて。

 まさかしかしそんな。


「っち」


 大袈裟に身体が揺れる。

 情けなさ故に。


 なんとかできるのならば、瞬殺でやり遂げるのだが、未熟な俺はまだ自分が食べた影を出すなんて高等技術はできない。


「お兄さん。全然、これっぽっちも気にしなくていいよ。私は元々御雲様になりたいと常々思っていましたから、今回の件は神様が願いを叶えてくださっただけのこと。むしろ、感謝します。ありがとうございます」


 ほんのりと、ほんわかと、ゆったりと。

 まさか、魔法使いの箒に乗って浮いているからではあるまい。

 もともとの気質なのだろう。

 お嬢ちゃんかお坊ちゃんか判別はできないが、年の割には達観している物言いの幼子に、滂沱と涙を流した。

 

「朔望さん、と言ったね。俺、絶対君に影を戻すから。それまで手を離さないから」


 瞬間、渋面になる朔望に、けれど俺は構わず手を伸ばして、手を掴む。

 実際は逃げようとして一度目で掴まえきれなかったけど、やはり構わず何回も挑んで、強引に掴む。

 やんわりと、痛めないように。

 きゅっと、離さないように。

 じりりと、逃げても無駄だと諭すように。


「じゃあ、私も方法を探しに行くから」

「ご婦人。申し訳ないです。ありがとうございます」

「…おまえ、朔望を元に戻すまで影を喰うなよ」

「もちろんです」

「ならいい。なにかわかったら教えに来る」

「はい」

「…せめて箒を掴んでくれませんか?」


 ご婦人を見送りながら告げられる提案に、俺はんんと曖昧な答えを返した。  




(2019.6.18)


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