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掌編小説シリーズ  作者: 藤泉都理
2019.5.
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五月五日




 い草の紐に竹の葉に包まれた甘い粽。

 漉し餡の柏餅。

 粒餡の蓬柏餅。

 練がしっかりしていて、甘さが控えめのそれらを濃い緑茶と共に味わって。

 鎧兜の五月人形を背後を守らせて。

 籠玉と矢車の竿に支えられて、悠々と青空を泳ぐ五色の吹き流し、真鯉、緋鯉、子鯉を目で楽しむ。


 快晴のこの日にすべてが映えている。


 畳の上に寝転んで、背伸びをして。

 ああ、いい天気だなあと、呟いて。

 夏を思わせる日光に、冬を思い出させるそよ風。

 調和して創り出された心地好さに身を委ねる。

 

 ああ、いい天気だな。


 また呟けば、唐突に笑いが込み上げて来た。

 

 長閑な光景だな。

 話しかけられたのか、ただの独り言か。

 聞き慣れた声に、口の端を上げるだけで応える。


 瞼の裏では、龍になった鯉が天上から降らせた鱗が鎧兜の五月人形になって、菖蒲の葉を振り回したり、こいのぼりにまたがったり、柏餅や粽を取り合ったり、てんやわんやな光景が広がっている。

 忙しないのに、なんて平和で微笑ましい光景。


 突然顔に布が被せられる。

 いや、顔と言わず全身に。

 文句は言わない。

 感謝も伝えない。


 私は今、眠っているのだ。

 だから、起きたその刻にでも言おう。


 悲しかったからじゃない。

 嬉しくて、泣いたのだと。

 平和な世だと思って。

 改めて平和なのだと感じたら。

 心身共に歓喜で奮えて、涙が生まれただけだと。




(2019.5.7)


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